INTERVIEW
FALL OUT BOY
2015.01.19UPDATE
2015年01月号掲載
Member:Patrick Stump (Vo/Gt/Pf)
Interviewer:山口 智男
-前作のプロデューサー、Butch Walkerは忙しかったため、一部に参加しただけで、ほとんどはJake Sinclairと完成させたそうですね? Jakeとの作業はどうでしたか?
前回一緒にやったとき、彼はエンジニアだったから、僕たちにアイディアを提供するポジションにはいなかった。でも彼はすごくいいアイディアを持ってるって、僕たち全員がわかってたんだ。それで、彼と一緒にやってみるのがいいと思ったんだよ。やってみたら、僕たちはすごくうまい具合にやれて、正直、すごくすごく楽だった。アルバムは実際、すべてを終わらせるまでに1ヶ月半しかなかったから急いで作らなきゃいけなかったんだけど、それだけ急いだ中でも、十分に話し合う時間があって、リラックスする時間もあった。コーヒーを飲みながら、何をやるかを話し合って、ちゃんと気持ちを整えられた(笑)。だから、急なスケジュールにもかかわらず、そんなに急かされてるって感じではなかったんだ。それはJakeがすごく自然で、ミュージシャンから最高のパフォーマンスを引出す方法を理解している人だったおかげだと思うよ。
-Peteは今回のアルバムには新しいサウンドがあると言っていますね。それはたぶん「Irresistible」や「Uma Thurman」のホーンやバンド・サウンドに取り入れた「Centuries」「Uma Thurman」のピアノ、あるいは「Immortals」のアフロ・アメリカンっぽいサウンド(笛の音色のようなフレーズやチャカチャカしたリズム・トラック)のことじゃないかと思うんですけど、実際には? また、Joeが奏でるギター・プレイも「Uma Thurman」をはじめ、新しいと思うのですが、そういう新しいと感じられるサウンドは意識的に求めたものなんですか?
面白いことに、それらの多くは昔からずっとあったサウンドなんだ。でも、昔の僕たちは曲に多くの要素を盛り込みすぎてて、サウンドが何重もの層になってたんだ。それで、そういう要素が聴こえなかったんだ。例えばホーンが入っている曲でも、同時に12トラックのギターと2トラックのベースと16トラックのヴォーカルを重ねて、その上にギター・ソロを加えたりしてたからね。そうなると、もう何もろくに聴こえなくなってしまう。でも、今回のアルバムは、これはJakeの貢献が大きいと思うんだけど、彼はあらゆるものを削ぎ落とすことを大事にしている。だから、すべての音、瞬間が聴こえる。それってエキサイティングなんだよ。論理上では増やすことでサウンドもより良くなるように思うけど、Jakeは削ぎ落とすことの良さを熟知していたんだよ。
-今回、最もチャレンジングだったと思う曲と個人的に気に入っている曲を教えてください。
挑戦になったと言えば、「Irresistible」だと思う。この曲はアルバムの中で1番アンビエントかつムーディな曲のひとつなんだけど、これを書いて、レコーディングして、完成させてから長い間、全員がこの曲のことを考え直していたんだ。多分、みんなすごくこの曲を気に入っていたから、もっとやったらもっといいものになるって考えてたんじゃないかと思うんだけど、いろいろな意見や考えが出てね。それで作業して、作業して、結局、オリジナルに戻ったんだ。僕たちがエキサイティングに思えたのはオリジナルだったんだよ。だから、振り出しに戻るっていうのが、最大のチャレンジだったよ(笑)。でも、オリジナルが1番良かったんだ。
-結局、まったく手を加えなかったんですか?
うん。リミックスはしたと思うけど、オリジナルのレコーディング・テイクを使ったよ。いろいろと他にたくさんやった後だったから、笑えるよね。
-アルバム・タイトルにもなっている『American Beauty / American Psycho』はともに同名の映画があるけど、アルバム・タイトルにした理由や、そこに込めた意味は? アメリカの光と闇を象徴しているように思えるけど。
明らかに"American Beauty"と"American Psycho"(とその原作になった小説)から借りてきたタイトルなんだけど、この2作品の相違点と類似点を使っているんだ。どちらも、"プライバシー""強迫観念(あるいは執着)""自分だけの心の内"といったことを扱っていると思うんだ。そういうところがこの新作に存在する"強迫観念"にマッチしている気がしたんだよね。ああいう強烈さみたいな部分がね。Peteはこんなふうに説明している。"サーカスを観に行くと、訓練された熊がいるよね。訓練されているからといって、その熊が野生の動物ではないってことにはならない。僕たちを叩いて傷つけることができないわけじゃない。だからそこにあるのは偽りの安心感なんだ"って。新作の曲の数々はテーマとして、そういうことを扱ってるんだよ。そして、このふたつの映画もまた、それぞれの方法で対照的に、そういうことを扱っているって思ったんだ。だから、このふたつを一緒にしたタイトルがふさわしいって感じたんだよ。
-映画つながりで言うと、Track.5の「Uma Thurman」は実在の女優の名前ですね? 彼女に捧げた曲なんでしょうか? 彼女に名前の使用許可は取ったんですか?
うん、彼女に許可を尋ねたよ。Uma Thurmanが僕たちが彼女の名前をつけた曲を聴いてくれたんだって想像しただけで、かなり面白かったけど、彼女は快諾してくれたよ。この曲は彼女自身よりも、彼女が1990年代、あるいは2000年代とかに体現していた概念についての曲なんだ。彼女はいつも奇妙で強かったと思う。明らかに強い女性を演じることは1度もなかったけど、でも、多くの面で、典型的なハリウッドの強い女性役よりも強かったんだ。彼女は大抵、混乱と堕落まみれの、だからこそリアルな役を演じてた。人間ってそういうものだからね。だから、そういうフィーリングを喚起する曲なんだ。"Pulp Fiction"のUma Thurmanや"Kill Bill"のUma Thurmanをね。