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FEATURE

TRIVIUM

2021.10.19UPDATE

2021年11月号掲載

現代ヘヴィ・メタル・シーンの旗手 TRIVIUM――攻撃的でありながらメロディックで壮大な楽曲を奏でる、渾身の10thアルバム!

Writer 菅谷 透

現代の"メタル"を牽引する存在にして、オーバーグラウンド/アンダーグラウンドの境界や世代間の垣根を越えていく"架け橋"


2021年夏にアメリカで開催された"Metal Tour Of The Year"。MEGADETHとLAMB OF GODという、"今年最大のメタル・ツアー"の名に違わぬダブル・ヘッドライナーを擁し行われたこのツアーに、スペシャル・ゲストとして参加したのがTRIVIUMだ。結成以来これまでに9作のアルバムを発表し、"Download Festival"や"Ozzfest"、日本でも"LOUD PARK"、"SUMMER SONIC"、"KNOTFEST JAPAN"などの大規模フェスに出演。名実ともに現代ヘヴィ・メタル・シーンの旗手として確固たる存在感を示している、そんな彼らが、記念すべき10作目のアルバム『In The Court Of The Dragon』を完成させた。本稿ではバンドのこれまでの歩みを振り返りつつ、ニュー・アルバムについて迫っていく。

1999年にフロリダ州オーランドで結成されたTRIVIUMは、日本にルーツを持つフロントマンのMatthew Kiichi Heafyと、初代ドラマーのTravis Smithを中心に本格的な活動を開始。2003年にドイツのLifeforce Recordsより1stアルバム『Ember To Inferno』をリリースすると、同作が名門メタル・レーベルのRoadrunner Recordsの目に留まり、2004年にレコード契約を獲得。現メンバーのCorey Beaulieu(Gt)、Paolo Gregoletto(Ba)を迎えたラインナップで、世界デビュー作となる2ndアルバム『Ascendancy』を2005年に発表し、そのメタルコアとオーセンティックなメタルを掛け合わせた独自のサウンドで大きな注目を浴びた。翌2006年にはメロディックな要素を増した3rdアルバム『The Crusade』をリリースし、2008年の4thアルバム『Shogun』ではテクニカルで複雑なアレンジメントを強化。バンドの懐の深さを見せつけると同時に、ファン・ベースも拡大していった。
その後、ドラマー・チェンジを経た2011年の5thアルバム『In Waves』ではストレートなメタルコア・サウンドへと回帰し、米ビルボード・チャートにて自身最高位である13位を記録。DISTURBEDのフロントマン David Draimanをプロデューサーに迎えた6thアルバム『Vengeance Falls』(2013年)では、ニューメタル/モダン・ヘヴィネスの要素も取り込んだ新境地を見せ、7thアルバム『Silence In The Snow』(2015年)ではクリーン・ヴォーカルを大々的にフィーチャーし、クラシカルなメタルを現代的にアップデートしたサウンドを披露。アルバムごとに自らのスタイルを模索し、常に進化し続ける姿勢を示していった。
そして2017年には、これまでBATTLECROSSやBRAIN DRILLなどで活動していた名手 Alex Bentをドラマーに迎え、プロデューサーにJosh Wilburを起用した8thアルバム『The Sin And The Sentence』を発表。これまでに参照してきた音楽性をダイナミックにまとめ上げた新たな作風を確立し、収録曲「Betrayer」がグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門にノミネートされるなど高い評価を受けた。続く2020年の9thアルバム『What The Dead Men Say』でもその方向性が継続され、さながら修行を積んだ武術家が辿り着いた"形"のように、様々なジャンルをベースにしながらTRIVIUMならではの唯一無二なサウンドを繰り出す、必殺のスタイルが形成されていったのだ。

残念なことに『What The Dead Men Say』をリリース後、コロナ禍の影響によりツアー・スケジュールが白紙となってしまったが、バンドはすぐさまロックダウン期間中に新作の制作に着手。そして10作目となるアルバム『In The Court Of The Dragon』を完成させた。フランス人アーティスト Mathieu Nozieresによる、息を飲むような美しさのアートワークも印象的な本作は、前2作から引き続きJosh Wilburがプロデュースを担当。これまでに築き上げた"形"を踏襲しつつ、攻撃的でありながらメロディックで壮大なサウンドをさらに研ぎ澄ませた、より奥深い方向性を提示する、聴き応え十分なアルバムとなっている。
壮大なオーケストラ・サウンドが期待と高揚感を煽るオープニング・トラック「X」は、EMPERORのフロントマン Ihsahnが作曲を手掛けている。Matt(Matthew)とも親しい彼がアルバムの随所でオーケストレーションを担当しており、楽曲をよりドラマチックな雰囲気に引き上げているのも本作の注目ポイントと言えるだろう。イントロから繋がるタイトル・トラック「In The Court Of The Dragon」は、アメリカの作家 ロバート・W・チェンバースのショート・ストーリー"竜の路地にて"から名付けられたもの。ベーシストのPaolo Gregolettoが"恐怖と不確実性に満ちていて、それはまさしく我々が昨年(2020年)から過ごしてきたあの時間とまったく同じことのように感じられるんだ"と語るとおり、緊張感とキャッチーでメロディックなフレーズが同居した楽曲は、バンドの新たなアンセムとなり得る資質を持っている。壮大なショート・フィルムのMVも必見だ。

続く「Like A Sword Over Damocles」では、重厚なメイン・パートからまるでリフ・フェスのように目まぐるしく展開するソロ・セクションが印象的で、バンドのアイディアの豊富さを堪能することができる。「Feast Of Fire」はPaoloいわく本作の"サプライズ・トラック"で、アンセミックな歌メロが今までにない魅力を放っている。『Ascendancy』時代から多くのインスピレーションを得ているという「Crisis Of Revelation」は鋭いリフやブラストビートから、Paoloが"邪悪なBOSTONの曲"と冗談めかして語るプログレッシヴでスリリングなセクションへとなだれ込む構成が面白い。

「The Shadow Of The Abattoir」はフォーキーで幻想的な音色からスタートし、徐々にダイナミックなサウンドへと移りゆく展開が心地よい楽曲で、アルバムの中でもアクセントになっている。前作『What The Dead Men Say』のために作ったデモ曲をもとにした「No Way Back Just Through」では、ショート・チューンながらオーケストレーションも取り入れたサビがインパクト大だ。「Fall Into Your Hands」はエモーショナルなリフから強力なスラッシュ・パート、幽玄なフレーズまでダイナミックな展開を見せていて、"アルバムのテンプレートになった曲"というPaoloの解説にも大いに頷ける。「From Dawn To Decadence」では編曲だけでなくヴォーカルの多彩な表現も聴きどころだ。
そしてアルバムを締めくくる荘厳なナンバー「The Phalanx」は、もともと『Shogun』のときのデモ曲だったそうで、『Silence In The Snow』のときもデモが制作されたものの最終的に破棄されてしまったが、今回の壮大でプログレッシヴなアルバムのために、新規パートを追加しついに日の目を見ることになったのだとか。『Shogun』と併せて聴くことで、新たな発見があることだろう。なお、MVでは人気RPG"エルダー・スクロールズ・オンライン"とコラボを果たしており、ゲーム配信者としての一面も持つ彼らならではの作品に仕上がっている。

正統派メタルに端を発し、スラッシュ/デス/ブラックなどのサブジャンルまでを貪欲に追求し自らのものとした本作は、TRIVIUMが"メタル"を牽引する存在であることの証明というだけではなく、オーバーグラウンド/アンダーグラウンドの境界や、世代間の垣根を越えていく架け橋になるような作品と言えるだろう。そう遠くない未来に、再びこの地で彼らのライヴに老若男女問わず熱狂する光景が繰り広げられることに期待しつつ、今はアルバムをじっくりと楽しみたい。 菅谷 透


常に進化し続ける姿勢を示してきたTRIVIUMの歴代アルバムもチェック!


『Ember To Inferno』
(2003年リリース)

『Ascendancy』
(2005年リリース)

『The Crusade』
(2006年リリース)

『Shogun』
(2008年リリース)

『In Waves』
(2011年リリース)

『Vengeance Falls』
(2013年リリース)

『Silence In The Snow』
(2015年リリース)

『The Sin And The Sentence』
(2017年リリース)

『What The Dead Men Say』
(2020年リリース)


▼リリース情報
TRIVIUM
NEW ALBUM
『In The Court Of The Dragon』
Trivium_ITCOTD.jpg
WPCR-18455/¥2,750(税込)
amazon TOWER RECORDS HMV
2021.10.20 ON SALE!!
[WARNER MUSIC JAPAN]

1. X
2. In The Court Of The Dragon
3. Like A Sword Over Damocles
4. Feast Of Fire
5. A Crisis Of Revelation
6. The Shadow Of The Abattoir
7. No Way Back Just Through
8. Fall Into Your Hands
9. From Dawn To Decadence
10. The Phalanx
11. Beyond Oblivion (Live) ※日本盤限定ボーナス・トラック
12. Amongst The Shadows & The Stones (Live) ※日本盤限定ボーナス・トラック

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