COLUMN
工藤晴香のKDHROCK(くどはろっく) vol.2
2021年!年が明けましたね。昨年は色々と大変な1年ではありましたが、いち表現者として作品をもっともっと人に届けたいという気持ちが強くなった年でもありました。
当たり前だったことが当たり前じゃなくなったこの時代をどう生き抜くか、今年も様々な壁を乗り越えていく予定......つもり......いや、乗り越えるんじゃい!!!!
次はこんな作品にしたいな~あんなことに挑戦したいな~と日々考えています。
今回私が紹介するアーティストは、アメリカのバンド『Hole』です。
ギターヴォーカルのコートニー・ラブは、椎名林檎さんの名曲「ギブス」の歌詞に出てくる"だってカートみたいだから あたしがコートニーじゃない"のコートニーです。
前回のコラムで紹介したバンド『NIRVANA』のフロントマン、カート・コバーンの奥さんなんですが、今回はコートニーではなく彼女のバンドについて語らせてください。
結成されたのは1989年(私が生まれた年だ!)2021年現時点で世に出ているアルバムは4枚。私のお気に入りは3枚目の1998年にリリースされた
「Celebrity Skin」です。
1曲目の冒頭のギターリフ、そして"よかったじゃない うまくいって"という歌詞。
聴いた瞬間、私はこのアルバムが大好きになった。最愛の夫の死という地獄を見てきたコートニーが辿り着いたのは、LAの渇いたポジティブなハードロックサウンドだったのだ。
このアルバムに出会った時、私はまだ17歳だった。何もかもが嫌で、自分自身も好きになれなくて、理由もなく反抗的だった。いつもこのアルバムを聴いていた。"好きに生きろ"と高らかに歌うコートニーの力強い歌声に、私は力を貰っていた。
今回、このコラムを書くにあたって改めてアルバムを聴いたのですが、ポジティブさも感じつつ根底には"怒り"を感じる内容だと気付きました。
歌詞に「火、死、夜、水、破壊」が各所に散りばめられていて、すべての絶望と悲しみを受け入れ"あたしあたしよ!"と前に進んでいく。ポジティブで居るために、過去の負の要素をガソリンにして生きるのがコートニーなのだろう。
10代の頃は何も考えずに聴いていたが(何も考えず本能のままに音楽を聴くことができるのは10代の特権である)「思春期に聴いていた音楽は大人になっても根底にあり続ける」というのはよく聞く話で、確かにそうだと思う。
自分の作品のプロモーションでインタビュアーの方から言われたことがあるのだ。
「工藤さんの音楽、ポジティブに聴こえますがメチャクチャ怒ってますよね?」と。
歌詞を書いていて、どうしても怒りや悲しみなどの負の要素が強く出てしまうとき、私は自分の中にあるポジティブを引き出して変換しているのだ。一種の開き直りとも言える。
コートニー・ラブ。彼女の表現者としての技法、1人の人間としての生き方がいつの間にか私の心にしっかり染みついていた。
私もまた、彼女のように進み続け「怒り」をポジティブに変え続けていくのだろう。
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