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LIVE REPORT

(sic)boy

2025.12.28 @Zepp Shinjuku (TOKYO)

Writer : 吉羽 さおり Photographer:O-KUBO SHOUI

集大成的なアルバム『DOUKE』を携えて、全国7ヶ所を回るツアー"(sic)boy DOUKE TOUR 2025"のファイナル公演が、12月28日にZepp Shinjuku (TOKYO)で行われた。本ツアーはDJセットとバンド・セットの2部構成となっており、ゲストや映像演出を交えたアルバム『DOUKE』と(sic)boyの世界観を表現するステージとなった。

アルバムとしては通算4作目となる『DOUKE』。プロデューサー KMと共に、ヒップホップ、エモ、ラウドロック等様々なルーツやフェイヴァリットを自由にミックスし"ザ・東京"サウンドを作り上げた1stアルバム『CHAOS TAPE』(2020年)、ロサンゼルスで制作した2ndアルバム『vanitas』(2021年)のように心の赴くままにフットワーク軽くクリエイティヴな活動を行う一方で、リリックでは不器用に葛藤する様が描かれた。曲から滲むペシミスティックな香りは、コロナ禍という時代の停滞感や閉塞感、不透明な(になってしまった)未来が醸成したものもあるかもしれないが、軽やかなサウンドの内側で渦巻いていた沸々としたエネルギーが、鋭利な言葉やナイーヴな表現を生んでいた作品だ。

また、コラボレーションによる新たな出会いやケミストリーが多かったメジャー1stアルバム『HOLLOW』(2023年)を経ての『DOUKE』は、KMはじめChaki Zuluやuin、フィンランド出身のTidoといったプロデューサーとの制作で新たなタッチのサウンドに飛び込み、各曲がより濃厚になった、鮮やかでスケールの大きいエンターテイメント・アルバムでもあった。ライヴではオープニング映像で"DOUKE"、つまり道化師が登場して、(sic)boyによるダーク・ファンタジーのようにスリリングな世界へと観客を連れていく。

前半のDJセットは、アルバム『DOUKE』の開幕を告げる「DOUKE」でスタートした。暗闇に降り立ったようなシャギーなジャケット姿の(sic)boyが照らされ、儚く、哀愁を帯びたメロディを歌い出すとフロアからは歓声が湧く。このメロディアスなパートからビートがスイッチして、ミニマルで攻撃的なビートとパワフルなラップで観客のボルテージを上げて「HIBANA」へと突入。さらに歓声が一際大きな「blacknails」では"後ろのほうまでちゃんと見えてるから。このままブチ上がっていこうか"と語り掛け、ロックンロールなリフとヘヴィなビートを打ち鳴らしていく「爆撃機」でシンガロングを起こした。炎がバンバン上がる映像等、演出との一体感も抜群だ。また、「lights on」ではイントロで一旦演奏を止めると、観客にスマホのライトを灯すよう伝え、フロア一面がキラキラとした光の波となって揺れる多幸感溢れるシーンが生まれた。

この前半のハイライトとなったのは、どちらもゲストを迎えた「SAY GOODBYE feat. OMSB」と「Chrome Hearts feat. vividboooy」だ。(sic)boyにとって新基軸となった2000年代J-POP/R&Bの「SAY GOODBYE」ではメロウな歌にOMSBのラップがクールなアクセントを加え、「Chrome Hearts」ではこれまでにもコラボを重ねてきたvividboooyと息の合ったフロウを交わす。vividboooyとは共にジャンルレスな音楽で自分の道を開拓し続ける盟友とも言える者同士、それぞれの道が自由に交錯するのを楽しみながら、同時代を闘い生きるエネルギーを交換し合っている感覚だ。

"生きててくれてありがとう、会いに来てくれてありがとう。ツアー・ファイナルなので、ここに全部置いていきます。みんなも全部置いて帰ってください"と告げ、DJセットのラストは歌とシンプルなピアノでスタートする「Tsubasa」。憂いや痛み、ネガティヴな思いを手放していくように歌を紡いでいく。ツアー・ファイナルに、また1年の終わりという時期に、ジェントルな歌声が優しいアンセムとなって響く、そんな曲だ。

続くバンド・セットによる後半は、アルバム『DOUKE』でもドラマチックな「色のない夜」でスタートした。ピンスポットの下での静かな始まりから、バンドインからの重厚感あるサウンドやマーチング・ビートがエモーショナルだ。頭からクライマックス感も漂うが、ここからさらに『HOLLOW』収録の「Falling Down」や「Dark Horse」といったアグレッシヴなロック・ショーへ。強靭なビートで会場を蹂躙する。「Dark Horse」は地元の大先輩でもあるJESSE(The BONEZ/RIZE/Vo)をフィーチャリングした曲だが、この日は2026年1月から療養のためにバンド活動を休止するJESSEに向けて、"JESSEさんを思ってみんなで歌おう"と観客とのシンガロングでパワフルなミクスチャー・ロックを築き上げていった。

"やっぱ東京熱いな、熱すぎるな"と笑顔を覗かせると、さらに"掛かってこい"と初期曲の「(sic)'s sense」や「Ghost of You」を連投する。DJセットではダイナミックな映像演出が多かったが、バンド・セットではリアルタイムのステージ映像にエフェクトを掛け、バンドのノイジーさやディストーション・サウンドに拍車を掛ける。アルバム『DOUKE』のリード・トラックとなった「DISTORTED世界」や、ブルージーな「Dream」でのバンド・サウンドや熱っぽいギター・ソロとの絡みが、その歌の繊細さを引き立てるものになっていた。後半には再びvividboooyを迎え、「Heaven's Drive」で会場の士気を上げる。"最高じゃないですか。ヤバい景色だね"と言うvividboooyに、"最高だよね"と返す(sic)boy。そこには共にこのステージ、ツアーを作り上げてきたDJやバンド・メンバー、またフロアを埋め音楽を楽しんでいる観客への自信も窺える。MCでは、ツアーが始まる前は前回よりも本数も規模も大きくなったライヴへの不安もあったと言いつつも、"毎回毎回ヴァイブスが上がっていって、今、最高の状態を迎えている"と、このツアーを締めくくる思いを語った。

この日はアンコールはなし。"このまま突っ走っていこうと思います、いけんのか! 掛かってこい!"。その一言から、「Life is nightmare」でバンドもアクセルを踏み込んで、(sic)boyはハスキーなシャウトを決めると、ラストはこの曲がないと終われないとばかりに「Akuma Emoji」で"飛び跳ねろ"と声を上げる。2000年代的なアイコンたっぷりのMVをバックに、キャッチー且つパンキッシュに叫びを上げると、"来年もよろしく。またライヴで会いましょう、良いお年を"と、最後はデカデカと打ち出された"(sic)boy"の文字を背に、バンドと手を取り挨拶をした。ダークでナイーヴな世界で心揺さぶり、うねるようなサウンドでドライヴしつつ、ラストはやるせない毎日にジタバタしながらもシニカルに舌を出してみせる。反抗心と遊び心とを持って今をサヴァイヴする、(sic)boyの心意気が窺えたステージとなった。このツアーを経て、次の一手に何を指してくるのか。今は、それが楽しみだ。

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