LIVE REPORT
QUEENS OF THE STONE AGE
2024.02.07 @TOKYO DOME CITY HALL
Writer :菅谷 透 Photographer:古渓 一道 (Kazumichi Kokei )
QUEENS OF THE STONE AGE(以下、QOTSA)が、約6年ぶりとなる単独来日公演を東京と大阪で開催した。2023年に発表し、第66回グラミー賞®の最優秀ロック・アルバム賞と最優秀ロック・ソング賞の2部門にノミネートされた最新アルバム『In Times New Roman...』を引っ提げてのライヴということもあり、TOKYO DOME CITY HALLにて開催された東京公演はスタンディング・エリアからバルコニーに至るまで活況を見せていた。
ほぼ定刻通りに場内が暗転し、1stアルバムのオープナー「Regular John」でライヴがスタート。雄大ながら厳かさも感じさせるヘヴィネスで会場の熱量を徐々に高めていったところで、早くもキラーチューンの「No One Knows」が投下され、イントロでそれとわかった瞬間あちこちから歓喜と共にリフを合唱する声が沸き起こった。貫禄たっぷりにセンターへ陣取るJosh Homme(Vo/Gt)を筆頭に、軽快なステップを踏みながらレイヤーを重ねるTroy Van Leeuwen(Gt/Vo)、さらにDean Fertita(Gt/Key)も加わり最大3本で奏でられるギター・サウンドは圧倒されるほどダイナミックでラウドだ。アンサンブルを支えつつキックを繰り出すアクションもクールなMichael Shuman(Ba)、パワフルでタイトなビートを叩きつけるJon Theodore(Dr)のリズム隊もまさに鉄壁で、現体制の熟成具合が窺えた。
"コンバンハ、Motherfuckers"という手荒い挨拶を挟んだあとは、Joshのファルセットが映える「Smooth Sailing」やTroyのマラカス捌きもフックとなった「My God Is The Sun」など6thアルバム『...Like Clockwork』の楽曲を交えながら、最新作『In Times New Roman...』より「Obscenery」、「Time & Place」をプレイ。トリプル・ギターからキーボード2台、スティール・ギターまで曲中でも巧みにパートを変化させながら、ヘヴィ且つスイートなアンサンブルを届けていった。
中盤ではブルージーな「I Sat By The Ocean」に続けて、最新作からフィードバック・ギターが壮大な情景を描く「Carnavoyeur」を披露。Joshはこの日オーディエンスに何度も"楽しんでるか?"と声を掛けていたが、そのたびにフロアはもちろんバルコニーからも大きな歓声が上がっていたから、飄々とした態度を見せつつもどことなく上機嫌そうだった。そんなフロアをさらに踊らせるべく、極上のダンス・ナンバー「The Way You Used To Do」を届けようとしたところで、バス・ドラムのマイクにトラブルが発生し演奏を中断してしまう。Joshは最初こそ"俺たちは遠くからパーティーをしに来たんだ、早く直してくれ"と険しい反応を見せていたが、問題に対処するクルーを気遣ったり、Troyに"何かBGMを弾いてくれ"とリクエストしたり(すぐさま「James Bond Theme」が奏でられたのも面白い)、メンバー紹介に繋げたりと、トラブルを盛り上がりへと繋げる試合巧者っぷりを見せる。無事マイクが修理されたあと仕切り直してプレイされた「The Way You Used To Do」では、それまでのどこか達観したような演奏とはまた異なる熱量が込められていて、フロアもクラップやダイブで大いに熱狂していた。
「Into The Hollow」、「Emotion Sickness」を経て、「I Think I Lost My Headache」ではむせ返るようなファズ・ギターがトリッピーな世界を演出。ストーナー・メタルからプログレ・ロックを経由し、最後はペースアップしてパンキッシュな疾走へと移っていったのもクールだった。間髪入れずに「The Lost Art Of Keeping A Secret」へ繋げると、「Make It Wit Chu」ではピンクのライトに彩られた空間が広がっていく。中盤のコール&レスポンスでJoshは"女の子だけ歌ってくれ"と伊達男な素振りも見せつつ、誰の目も気にせずに今この瞬間を楽しむよう投げ掛ける。とびきり濃密でセクシーなひとときは、この日のハイライトだったと言えるだろう。ラストは"みんな素晴らしい夜を過ごせたことを願うよ"と「Little Sister」を演奏、フロアをさらに熱狂させ本編を終えた。
アンコールでJoshはフロアに深く頭を下げ、"Mikey(Michael Shuman)は日本から離れたくないってさ......彼と寝られるな(笑)"とジョークを交えつつ感謝を伝える。"時間が許す限りここにいたいよ"と名残惜しそうに「Sick, Sick, Sick」、「Go With The Flow」のアッパーチューンを畳み掛け、フィナーレはメロイック・サインからの「A Song For The Dead」。Jonの暴れ馬のようなドラム・ソロを挟みながら、楽器陣がステージ最前に並んで圧殺リフを叩きつける様は、圧巻のフィナーレだった。
ところで今回のワールド・ツアーは"The End Is Nero Tour"と名付けられていたが、最新作のタイトルも踏まえると、どうやらローマ皇帝 ネロに由来するようだ。大火のローマを見下ろしながらフィドルを奏でたという逸話が残る人物で、それが"大事をよそに安逸をむさぼる"ということわざにもなっているが、QOTSAはあえて能動的に世界から目を逸らし、自分らしくいることのできる場を設けたのだろう。会場を訪れるファンに最良の時間を届けるという矜持と、揺るぎない自信が伝わってくるような一夜だった。
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