LIVE REPORT
MUCC
2021.10.03 @ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール
Writer 杉江 由紀 Photo by Susie
感謝の念。一抹の寂しさ。そして、あらたなる未来への激励。まさに万感の入り混じった感情が終始交錯していた今宵のライヴ空間の中で、ここまで24年もの長きにわたりMUCCの屋台骨として頼もしく力強いドラミングを続けてきたSATOちが、ついにそのバンド人生に大きな区切りをつけ、次の輝かしき人生へと向けて旅立っていった。
"ま、じ、でっっっっ! MUCCに入れて良かったです!!!"
度重なる緊急事態宣言の発令などにより、なんと計3回も延期を繰り返してきた"MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world"のツアー・ファイナルが、ようやく当初予定から実に約5ヶ月遅れて、彼らの地元である茨城県のザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホールにて開催されたこの夜。アンコールでの「優しい歌」において、夢烏(※ムッカー=MUCCファンの総称)たちが"飛沫が発生しないハミング"のスタイルでその旋律を歌いだした際に、SATOちが腹の底から渾身の叫びを発してみせたのが前述の言葉だ。
MUCC初期の名曲として未だに人気の高い「娼婦」。バンドマンの人生模様を旅路にたとえたロード・ソング「パノラマ」。4人で作る最後の楽曲となった「落陽」。もともとは逹瑯(Vo)の亡き父上に向け作られたものではありつつも、この日はSATOちのために演奏された「スーパーヒーロー」。これまでは間奏部分のみドラム・セットの後ろまで回り込んでSATOちに茶々を入れていた逹瑯が、この夜に限っては曲が終わる最後までSATOちに寄り添いながら歌ってみせた「My WORLD」......。どの曲にもそれぞれに詰まっているたくさんの思い出たちが、このライヴの場でまた音としてあふれ出してゆくその様は感慨深さに充ち満ちていたと言っていい。なお、このあとのWアンコールではサポート・キーボードの吉田トオルが席を外すことになり、ステージ上は正真正銘のMUCC 4人だけに。
"全部ブッ壊そうぜ! 終わりは終わりじゃねーんだよ。始まりでもあるんだ! 受け容れて次へ行かせてくれよ、俺たちを!!"
ステージ・セットの一部をミヤ(Gt)が投げ飛ばしたり、蹴飛ばしたりしたうえで、このように咆哮したあと始まったのはMUCCのライヴに必要不可欠な「蘭鋳」だった。そして、この場で最後の最後に演奏されたのは、SATOちのMUCC脱退が決定した直後に4人で歌詞を作り完成させたという「明星」となり、ここでの"幼き日々を映す明星が 僕等の未来を照らす/謡え 笑え"という1節には、彼らの尊き真実と切なる願いが凝縮されていたように思えてならない。ダダ泣きしながらもコーラスをとりつつ叩き切ったSATOち、リズム隊としてSATOちと四半世紀近くタッグを組んできただけに、プレイしながらとめどなく涙を流していたYUKKE(Ba)、先ほどまで荒ぶっていたにもかかわらず目元を著しく濡らしていたミヤ、表情こそ崩しそうになりながらも声を震わせることなく見事に歌いあげた逹瑯。その姿は、永遠になりえる一瞬として我々の脳裏に刻まれたはずである。
ただ、この感動的なフィナーレには実は続きがあり、彼らと親交の深いバンドマンが多数参加する"MUCC体操特別版"なる謎の余興が突然に始まるひと幕があったのだが、その詳細については後日発売となるBlu-ray/DVDにて個々にご確認いただくのがよろしいかと。
すでに11月5日にはシングル『GONER/WORLD』が発売となり、11月4日からツアー"MUCC TOUR 202X 惡-The brightness WORLD is GONER"も始まることが決まっているMUCC。とにかく、彼らの未来がここからもまだまだ続いていくことは間違いない。
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