LIVE REPORT
MUCC
2020.12.27 @日本武道館
Writer 杉江 由紀 Photo by Susie / 田中聖太郎(田中聖太郎写真事務所)/ 渡邊玲奈(田中聖太郎写真事務所)
罅(ひび)、神、独、愛、依、海、生、偽、虫、光、空、壊、病、終、夢、死、そして惡。MUCCが2020年12月27日に開催した3年半ぶりの日本武道館公演"惡-The brightness world"の舞台上には、ここに列挙した漢字たちがセットの一部としてちりばめられていた。ともすれば無秩序に見えるそれらは、MUCCの4人が最新15thアルバム『惡』の冒頭も飾っていた「惡 -JUSTICE-」を演奏しだすところから幕を開けた今宵の公演が刻々と展開していくにつれ、やたらと意味深なものとして感じられるようになっていった気がしたのは筆者だけではあるまい。
"配信ライヴであえて『惡』から全曲やらなかったのは、次の武道館のためです。ライヴ会場で鳴らしたい! っていう思いで作ったアルバムだからね"(ミヤ/Gt)
昨年6月に行われた初の無観客有料配信ワンマン・ライヴ"~Fight against COVID-19 #2~『惡-THE BROKEN RESUSCITATION』"の場において、12月27日に日本武道館にてワンマンを行うと告知したときにリーダー ミヤが放ったこの言葉。そこには始動以来23年の月日をかけ培ってきたライヴ・バンドとしての矜持が滲んでいた。あれから実に半年の時間を経てようやく夢烏(ムッカー=古くからMUCCファンを総称する言葉)たちの前に戻ってきたMUCCの面々は、いつも以上に意気揚々として見えた。
今公演を目前にした12月2日には公式サイトから"2021年春をもってドラマー SATOちがMUCCを脱退しドラマーとしても引退する"という突然の"大切なお知らせ"がもたらされていたことを踏まえると、今回のステージは事実上SATOちにとって最後の武道館公演となったが、湿っぽい雰囲気が醸し出されるようなことは一切なく、彼らはこの夜もひたすらMUCC然とした生々しいパフォーマンスで我々を魅入らせてくれたと断言できる。
本編後半ではMUCCにとっての盟友であるlynch.の葉月(Vo)が9月の配信ライヴに引き続いてゲスト・ヴォーカリストとして登場し、アルバム『惡』に収録されている「目眩 feat.葉月(lynch.)」を音源と同様、いやそれ以上のハイテンションでコラボする一幕も。
本編ラストでヴァイオリニストの琴羽しらす氏と後藤泰観氏に加え、総勢14名の弦楽オーケストラを迎えた豪華な演奏で披露された「スピカ」。普段であれば途中で観客側がシンガロングする部分を、メンバー全員が持ち回りで個々に歌ってみせた「優しい歌」。そして、SATOちの脱退が決定してからミヤが作曲をし、メンバー全員で作詞をして作り上げたという新曲「明星」(この楽曲は発売日未定のベスト・アルバム『明星』に収録されるとのこと)などなど......。Wアンコールも含めての全27曲、3時間超にわたった今回の武道館公演は、MUCCの内包するロック・バンドとしての高い表現能力と奥深い精神性を改めて我々に強く感じさせてくれる空間だった。
2月からは彼らの地元であるザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)大ホールを終着点とするホール・ツアー"MUCC TOUR 202X 惡-The brightness world"も始まるだけに。ここは彼ら4人の雄姿を、この眼と耳にしかと灼きつけたい。
[Setlist]
1. 惡 -JUSTICE-
2. CRACK
3. 神風 Over Drive
4. ENDER ENDER
5. G.G.
6. 海月
7. アイリス
8. サイコ
9. Friday the 13th
10. SANDMAN
11. 積想
12. COBALT
13. アルファ
14. スーパーヒーロー
15. DEAD or ALIVE
16. 目眩 feat.葉月(lynch.)
17. ニルヴァーナ
18. カウントダウン
19. TONIGHT
20. スピカ
En1. My WORLD
En2. 名も無き夢
En3. 蘭鋳 feat. 葉月(lynch.)
W En1. 家路
W En2. 優しい歌
W En3. ハイデ
W En4. 明星
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