LIVE REPORT
MONOEYES
2015.12.17 @新木場STUDIO COAST
Writer 山口 智男
さあ、何から書こうか。今思い出しても、胸がわくわくする。1stアルバム『A Mirage In The Sun』を引っ提げ、7月から11月まで、日本全国を回ったMONOEYESがほとんど間を空けずに全国7ヶ所で、さらに計10公演を行ったアンコール・ツアー。そのセミ・ファイナルとなる東京公演の2日目。まずはライヴのオープニングから振り返っていこうか。スタンディングの1階はもちろん、2階のスタンド席までぱんぱんに入った、まさに超満員の観客が見守る中、それまで流れていたクリスマス・ソング(のインスト)が止むと、大音量で響きわたる映画"スター・ウォーズ"のテーマとともにバックドロップにバンドロゴと目玉をモチーフにしたイラストが描かれたフラッグがせり上がってきた。
会場中から沸き上がる歓声の中、ステージに出てきた4人は"よし行こうか!"というう細美武士(Vo/Gt)の言葉を合図に爆音をいきなり鳴らして、ライヴになだれ込んだ。1曲目はツアー・タイトルになっている「Cold Reaction」。ステージの真ん中でギターをかき鳴らしながら歌っている細美武士を挟んで上手に不動のポジショニングでうねるようなリフを奏でている戸高賢史(Gt)。下手に膝を高く上げる激しいアクションを交えながらベースをぶんぶん唸らせているScott Murphy(Ba/Cho)。そして3人を背後からタイトなドラミングで支える一瀬正和(Dr)。バンドの熱演に拳を振り上げたり声を上げたり、クラウドサーフィンしたりと全力で応える観客の姿に感化され、2曲目の「Like We've Never Lost」の最後、細美は笑顔でハイジャンプをキメた。
"おまえらの今日の主役っぷりはすげえな"
そんな言葉でファンのガッツを称えながら、"誇り高き負け犬である俺たちのテーマ"と紹介した「My Instant Song」を始め、どこか90年代オルタナの匂いもする『My Instant Song E.P.』とアルバムの曲をテンポよく次々に披露していった。 細美武士のソロとしてスタートしながら、メンバー全員でスタジオに入ったとき、バンドになったというMONOEYESがツアーを通して、バンドとして結びつきをより強いものにしたことが伝わってきた。この日、セットリストに組み込んでいたScott & Riversの「Homely Girl」やScottが所属しているパンク・バンドALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」の2曲では、Scottがリードで歌い、ちょい甘口の歌声の魅力を改めてアピールしたが、その際、細美が言った"来年はScottが作るMONOEYESの曲が何曲か出ると思う"という言葉からもMONOEYESが勢いを増しながら転がり始めていることが窺えた。
それにしても、だ。やりたい音楽、出したいサウンドがそもそも違うとはいえ、同じひとりの人間が曲を作って、歌っているにもかかわらず、メンバーの顔ぶれが違うと、バンドってこんなも変わるものなのかと改めてびっくりだった。音楽性はもちろんだが、表情、MC、佇まい、バンドが醸し出す雰囲気。筆者は細美武士が作る曲、メロディが好きだからMONOEYESだって絶対楽しめると思っていたが、予想もしていなかった変化というか、the HIATUSとの違いも楽しむことができて、なんだかとても得した気分になれた。そこにバンドの醍醐味があるのだと思うが、5人の歴戦のミュージシャンが鎬を削るようにベスト・プレイを追求しているthe HIATUSのときのストイックさや緊張感とは違って、この日のライヴはメンバーとバカ騒ぎを楽しんでいるような細美のリラックスした姿がとても印象的だった。
"BON JOVIを歌ってウォームアップしていた"とScottが本番前の楽屋の様子を明かしたあと、そのBON JOVIの「You Give Love A Bad Name」のさわりを即興で歌ったり、アンコールでは"サザエさん"を題材に下ネタを含みながらウィットに富んだアブない戯言を口にしては、他のメンバーからダメ出しを食らったり、なんだかいつも以上にハジけていたのはツアーがよっぽど楽しかったからなのか、そのツアーがもう終わるからなのか。そういう演奏以外の部分も含め、ステージの4人がとことんMONOEYESを楽しんでいるようなところが楽しかった......いや、この日、細美が盛んに言っていた言葉を借りて、面白かったと言うべきか。そして、本編で持ち歌をすべて出しきったMONOEYESはアンコールにもう一度、「My Instant Song」を演奏すると、Scottがベースを持ったまま客席にダイヴをキメ、1時間半の熱演を締めくくった。
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