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LIVE REPORT

SPYAIR

2015.05.20 @Zepp Tokyo

Writer 沖 さやこ

バンドのライヴ力はもちろん、舞台、照明、音響、すべてにプロフェッショナルのエンターテイメントを感じた。そして少年のように音楽を楽しむ、晴れ晴れとしたメンバーたちが今も脳裏に焼きついている。SPYAIR、復活後初の全国ツアー、追加公演を入れた9公演すべてがソールド・アウト。彼らの再始動を日本中が歓迎していた。そしてこのツアー・ファイナルもまた、観客とバンドの熱い魂が呼応する非常に感動的な空間だった。

"SEとともに輝く青い光が赤に変わると、「ROCKIN' OUT」のイントロでもあるバイクの爆走音。そこにバンドの演奏が入った瞬間、舞台装置はもちろんレーザーとステージ後方に設置されたLEDモニターの映像で華やかな情景が広がる。そんな中、まずIKE(Vo)の存在感に釘づけになった。フロアは大声援にまみれ、ステージも視覚的にも聴覚的にも煌びやかなものばかりであるのに、彼はそのすべてを吸収して自らの一部にするように、堂々と輝いていた。ど真ん中でバンドを背負う、ヴォーカリストとしての気迫を感じる。"今日は下げる頭も謝る言葉も持ってきてないからな。俺はこの会場の誰よりも音を楽しみに来たんだよ!"と高らかに叫ぶと、観客の声援はさらに増大。「現状ディストラクション」は楽器隊の太い底力から生まれるグルーヴが心地よい。緩急の効いたKENTAのドラムスはサウンドを立体的に映し、MOMIKENのベースもUZのギターとKENTAのドラムをうまく繋いで統一感を出す。そしてこの日、サポート・メンバーとしてキーボーディストとギタリストが招かれていた。このふたりがいることによりSPYAIRの楽曲世界は拡張。その安定感のある懐の広いサウンドに、オーディエンス全員が抱えきれないほどの歓喜の気持ちを持って飛び込んでいるような、幸福感に溢れた景色が広がった。その強固で完成された空気感にバンドがリスナーから真っ直ぐ愛されていること、そしてバンドがリスナーを信頼していることを再確認する。

疾走感のあるパンキッシュな「WENDY ~It's You~」のあとは一転、ゆるめなポップ・ナンバー「Are You Champion? Yeah!! I'm Champion!!」で随所で硬派に決める。間奏ではUZとIKEがそれぞれ上手と下手のお立ち台に立ち、ギター・ソロとヴォーカルで掛け合うという、エンターテイメント性も忘れない。「Naked」では心臓の鼓動をそのまま音にしたような嘘偽りないエモーショナルで包みこむ。まだ6曲目だというのに、1曲1曲がクライマックスのようだ。そんな光景が広がるのは、バンドが1曲1曲を大切に鳴らし、観客もそれを大切に受け止めているからだろう。キーボードが幻想的な音像を作り、静かにUZがそこにギターで色を挿してゆくと、「サクラミツツキ」へ。Zepp Tokyoが柔らかく大きな音と桃色の光で染まる。UZの両手でネックを抱えてギターを弾くタッピングの所作も美しく、恍惚とした。

アコースティック編成でのセッティング中は、KENTAとIKEが持ち前のトーク力で観客を沸かせる。4人でのフリー・トークで"最近メンバー同士でよく飲みに行ったりする"などのエピソードを語り、バンドが良好な状態にあることをうかがわせる。ステージ前方で4人が横1列になって腰かけ、メンバーが交互にヴォーカルを務めて「Radio」を披露すると場内はアットホームな空気で包まれた。
MOMIKENとKENTAのリズム隊セッションから「OVERLOAD」、「0 GAME」とSPYAIR流のダンサブルなヘヴィでラウドなナンバーを畳みかけ、"スタジアム・ロック"を標榜する「JUST ONE LIFE」ではIKE、UZ、KENTAがおなじみのサングラスを掛けたり、IKEが大きくマイク・スタンドを抱えて歌うなど、楽曲のイメージをユーモラス且つ効果的に魅せる。「Rock'n Roll」では"東京のもっとすごいところ見せてくれますか!? 行こうぜ東京、叫べ!"とIKEが煽るとディストーションの効いたギターに会場の軽快なシンガロングが重なった。アコースティック編成の転換中にIKEがMCで冗談めかしく"ありのままでみんなと接していこうと思う"と語っていたが、それはあながち笑い話でもなく、彼らはこの日裸一貫、人間性そのままで音楽を奏でていた。今のSPYAIRには"ロック・バンド"という言葉が過去最高に見事にはまる。

UZとIKEのラップ・バトルもクールな「Turning Point」からKENTAのアグレッシヴなドラム・ソロで「ジャパニケーション」に入った瞬間、場内から発せられるエネルギーに全身が奮えた。音楽で世界を変えてしまうような、ポジティヴなパワーしか存在していなかったのだ。そのあとの「イマジネーション」はまさしく無敵で、前進をやめない言葉が並ぶ歌詞が、今のSPYAIRとIKEの迷いのない歌声に最も相応しく、絶大な説得力を誇っていた。

「虹」のあとIKEがゆっくり口を開いた。ツアーを振り返り、SPYAIRの10年を、そして活動停止からのことを振り返る。"最初は友達めちゃくちゃいたのよ。SPYAIRが大きくなっていって、趣味じゃなくて仕事になっていって、インディーズからメジャーになって、自分の心では計れないほど大きなものになっていって。友達が一気にいなくなりました""俺が選んだ道だからしょうがないと思ってたんだけど、我慢できなくなった。このバンドを大きくしようとも思わなかったし、捨てた。俺の人生にそんなものは要らないと本気で思った""だけどみんなが少しずつ歩み寄ってきてくれて。音を鳴らそう、リハーサルに入ろう、もっと大きな仲間たちがツアーをやろう、レコードを出そう、この曲をみんなに届けよう――そう言って俺を押し戻してくれました""長い時間がかかったけど、お前らもみんな戻ってきてくれたよね。ツアーをやれて本当に、本当に幸せです。失って帰ってこないと思ってたものが、友達が、帰ってきた気がします""俺が友達だと思っているみんなは、一生ちゃんと守ってやる。ずっとこのまま、楽しい音楽を鳴らし続けようよ!"とひと言ひと言を真摯に正直に語る姿に、涙腺が緩んだ。そのあと披露された「GLORY」はその日1番のシンガロングが場内に巻き起こり、情景はバンドとオーディエンスが固く手を握り合っているようだった。

アンコールでは札幌公演でも披露したという新曲「ファイアスターター」を披露。ラップやコーラスも巧みに用いられた、「イマジネーション」の延長線上にあるSPYAIRらしさが溢れた硬派で実直な力強いロック・チューンに、観客も大声援で応える。IKEが"いろいろあってバンドが大好きになっちゃったんだよね。バンドもSPYAIRも盛り上げて、もっと音楽を盛り上げていこうと思うんだよね!"と清々しい表情で語り、ラストはバンドの核心的な曲でもある「SINGING」。バンドの音と観客のシンガロングの中で、喉を枯らし、全身で歌うIKEの姿がとても勇敢だった。

最後にマイクを通さず"ツアー楽しかったです"と叫んだIKEは"1万人ライヴ、俺らの夢だ。8月8日絶対遊びに来てくれ"と、結成10周年記念でもある富士急ハイランド・コニファーフォレストで開催される1万人野外ライヴへの熱い想いを語った。名古屋の栄公園でのストリート・ライヴからスタートしたSPYAIR。野外ワンマンは2011年の日比谷野外大音楽堂ぶり、バンド史上初の規模のライヴとなる。そんな記念すべき日への期待を存分に煽る、自信と感謝に満ちた2時間半の熱演。彼らは間違いなくもっともっと特別な景色を我々に見せてくれるだろう。昨年復活を遂げ、再始動したSPYAIR、ここから加速だ。

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