LIVE REPORT
MUCC
2012.12.08 @Zepp DiverCity
Writer MAY-E
結成15年を迎えた今なお進化を続けるバンド、MUCC。Taste Of CHAOSのワールド・ツアーに日本人で唯一ラインナップされたバンドであるなど、ヴィジュアル系×ラウドロックのパイオニア的存在と言えるこの4人組が、通算12作目となる最新アルバム『シャングリラ』をリリースし、それに伴うツアーをZepp DiverCityにて2日間に渡り開催した。両日ともソールド・アウトという盛況ぶりからも、新作へ指示の高さが伺えるが、『シャングリラ』がファンに大いに受け入れられていることを印象づける一夜だった。
定刻を過ぎ、会場が暗転。超満員の客席から巻き起こる手拍子と大きな歓声を浴びながら、メンバーがステージに登場した。1曲目は、アルバム『シャングリラ』のオープニング・トラックにもなっている「Mr.Liar」だ。最先端のメタルコア・サウンドに、逹瑯(Vo)とミヤ(Gt)のスクリーム・ヴォーカルが絡み合う、新作の中でも極めてヘヴィなこの曲で、会場のテンションを一気に沸点へと押し上げる。
「騒げ、お前らーー!!」
逹瑯の煽りを挟んで、「ステラ」、映画『ウーマン・イン・ブラック 亡霊の館』のテーマ・ソングとなっている「G.G.」へと流れる。ノリの良いロック・サウンドにダブステップのブレイクが介入というトリッキーなナンバーで、客席は更に大きくバウンスする。
前作『カルマ』からダンス・ミュージックの要素を大胆に取り入れているMUCC。今作『シャングリラ』にも、シングル「アルカディア featuring DAISHI DANCE」をはじめ、その要素が色濃く表れているが、ミラーボールがステージの後方でさりげなく廻っている程度で、この日の演出は極めてシンプルだった。ディスコ空間に持ち込もうとするような強引さは一切なく、ロックのビートで踊らせている感覚である。ミヤのラウドなギターと上音のエレクトロが、ダイナミックに会場に響き渡る。逹瑯の言葉を借りると「音と曲で勝負していくための、あえてのシンプル・セット」なだけあって、剥き出しのロック・バンド"MUCC"の姿がそこにあった。そんな中で巻き起こった「ニルヴァーナ」での大合唱は、実に感動的だった。
『シャングリラ』は、多様性のあるMUCCのサウンドを切り取って詰め込んだような、ひとつとして同じスタイルの楽曲がないアルバムだが、そのどんな楽曲にもフィットしてしまう逹瑯のヴォーカルの表現力の高さに改めて感心する。「ハニー」、「ピュアブラック」、「夜空のクレパス」と目まぐるしく場面を変える中で、特に際立っていたのが「狂乱狂唱~21st Century Baby~」だ。この時ばかりは高い足場が設けられ、雷のようなライトが差し込むなど演出も凝っていたが、スクリームを交えながら歌い上げるその姿は、まるで怒れる神のようだった。
初期のナンバー「絶望」で、再びヒートアップするライヴ後半。「風と太陽」「ファズ」「You&I」で会場に一体感をもたらし、続く「蘭鋳」ではモッシュやダイブが巻き凝るほどの白熱した盛り上がりをみせた。本編最後は、アルバムのタイトル曲「シャングリラ」で壮大に締めくくった。
アンコール含む全21曲というロング・セットを多彩な楽曲で駆け抜けた2時間。一瞬たりとも目が離せなかった。このツアーは、2013年まで続く。来年のMUCCは、きっとまた違う景色を見せてくれるだろう。
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