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LIVE REPORT

BIGMAMA "Roclassick"release tour 2010-2011

2011.03.30 @SHIBUYA-AX

Writer 道明 利友

2月に待望の来日を果たしたYELLOWCARDのツアーへの帯同で、このBIGMAMAの存在をあらためて知った洋楽ファン、パンク・ファンも多いかもしれない。ツイン・ヴォーカルによる華麗な歌声を轟音が包み、そこへヴァイオリンが叙情を加える彼らのスタイルは、まさにYELLOWCARDのようなエモーショナル・ミュージックに惹かれるリスナーなら心を奮わされるに違いない。

「運命」、「剣の舞」、「結婚行進曲」、etc......。ロック・バンドのライヴではあまり耳にすることがないクラシックの名曲が、開演前の会場に次々と流れてくる。クラシックのエッセンスを随所に盛り込みながら独特な世界観を展開した最新アルバム『Roclassick』を引っさげた全国ツアーのファイナル公演に華を添える、とても粋な演出だ。そして、渋谷AXの超満員のオーディエンスの大歓声の中でライヴの幕を切って落としたのは、その『Roclassick』のオープニング・ナンバーでもある「走れエロス」。ヴィヴァルディの「四季」をサウンドのモチーフにしながら、一気に加速していくパンキッシュな展開が圧巻!「テレーゼのために」もタイトルのとおり、そのモチーフはヴェートーベンのクラシックの名曲「エリーゼのために」。クラシックといってもそこに小難しさはなく、逆に、サウンドからも歌詞からも随所に遊び心を感じさせるのが彼らの楽曲の面白いところだ。

立錐の余地もなく埋め尽くされた客席フロアは、クラウド・サーファーが前方に向かって勢いよく転がっていく。かと思えば、集団で肩を組み、輪を描いてハイタッチ。そして、拳を突き上げて高らかに曲を歌い上げる。そんな反応は、BIGMAMAの音楽性がそれだけ多彩な側面を持っているということを物語る。幕開けから息をつく間もなく、この日の彼らが連射したナンバーは、ハードコア、エモ、ポップス、そしてクラシックと、ジャンルの壁を超える様々なアプローチが融合するものばかりだ。ロックにはまだまだ、新たなものを切り拓く可能性は無限にある━━。BIGMAMAの音楽は、そんな頼もしさを感じさせてくれる。

ちなみに、この日のライヴは、東日本大震災の影響によりライヴの中止や延期が相次いでいた状況のもとで開催された。復興までの道のりは、これからも長く続いていく。そして、被害に遭われた方々はもちろん、僕も含めて、被害には遭わなかった日本中の人間にとっても不安な日々は続くに違いない。そんな中で、音楽は直接何かを出来るわけではないけれど、人の心を癒したり、力づけたりすることはきっと出来る。BIGMAMAも、音楽からエネルギーを多くの人へ伝えていこうとする誓いを、この日立ったステージ上から届けた。

"今日、やるべき理由もたくさんあったし、やらないほうが理由もたくさんあったし、直前まですごい悩みました。ただ、散々迷ったあげく、最後の最後で自分の気持ちを後押ししたのが......。結果的に他人に何を言われようと自分達の音楽を信じていたのと、ここにいる皆さんに会いたかったからです。今日は本当にありがとうございました。ちょっと気が早いんですけど、今日来たくても来れなかった人がいると思って、《Roclassick Tour グランドファイナル》、リターンズ用意してます。日付は、今年のクリスマス、場所は仙台でやらせてもらおうと思ってます。今回の震災で僕らにできることは限りなく無力というか、それは重々承知です。でもね、ゼロじゃないと思うんで、僕らにできることをやろうと思ってます"

ヴォーカル・金井政人の言葉に続いたのは、新曲の「秘密」。ヴァイオリンの音色が厳かな雰囲気をかもし出しながら、疾走感豊かに演奏が展開する。近いうちに発表されるであろう仙台のライヴで、その星空へ吸い込まれていくように響く美しい場面が今から浮かぶ。アンコールで披露されたまだタイトルもついていない未発表曲では、行進曲のように勇ましいリズムに乗って大合唱が会場を包んだ。日本中を今包んでいる悲しみが一日も早く晴れるように、そして、日本中に音楽が響き笑顔があふれるように......。全てのミュージシャンが今抱いているであろう思いを代弁しているかのようだった、この日のBIGMAMAの音色。本当に胸が熱くなる、激しくも感動的な瞬間だった。

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