INTERVIEW
FATE GEAR
2024.07.19UPDATE
2024年07月号掲載
Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) Haruka(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
構想20年以上。Mina隊長が小学生のときから思い描いていたという、悪魔と天使にまつわる物語が今ここにFATE GEARの作品として描き出されていくことになったのは、ある種の運命なのかもしれない。世界を飛び回りつつ活動を続行しているFATE GEARは、Mina隊長と乗組員らにより編成されるガールズ・メタル楽団となるが、ここに来ての新たな物語『The Vanguard Of Hades』はダーク・ファンタジーの領域にとどまらない壮大さが実に魅力的だ。
-新たなる作品『The Vanguard Of Hades』のリリースを前に、5月にはEUツアー("Live in blood Tour 2024")で10公演を実施されてきたというFATE GEARですが、まずはその旅で得てきた手応えについてうかがってもよろしいでしょうか。
Mina隊長:前回のEUツアー("Europe tour")のドラマーはスケジュールの都合でJUNNA(HAGANE)ちゃんだったんですが、今回はようやくHarukaさんと一緒に各地を回ってくることができて良かったです。前回は2020年3月("FATE GEAR Europe Tour 2020")が最後だったので、向こうのファンの方たちから"Harukaさんに会いたかった!"っていうコメントをいただいたりもしました。
Haruka:ほんと、私としても久しぶりに行けて良かったです。4年前と比べるとコンベンションとかもお客さんたちが増えてる印象でしたし、ライヴでの反応も前よりさらに良くなってるというか盛り上がってて、終演後にやった写真撮影会とか、物販コーナーに立ち寄ってくれる方も多くて嬉しかったですね。そして、そういう状況は私が参加できなかった間もみなさんが頑張ってくれてたからこそ生まれたものだと思いますし、さすが隊長の率いてるチームだな! って改めて感じました。
Mina隊長:まぁ、確かにどこも回るたびにお客さんたちが増えてくれてるなという実感はありますね。会場の規模もちょっとずつですが大きくなっていますし、去年は治安的な問題で公演中止になってしまったフランスに関しても、今回出させていただいたコンベンション("JAPAN TOUCH HARU")の盛り上がり方は予想以上にすごくてちょっと驚きました(笑)。
-そうした良き状況が生まれてきているなかで、このたびは新曲4曲にライヴ音源が9曲、さらに豪華盤にはライヴDVDまでもが詰め込まれた『The Vanguard Of Hades』がリリースされることになりました。これは実に"てんこ盛り"な作品となっていますね。
Mina隊長:実は、今回の『The Vanguard Of Hades』がこういう作品になるまでには紆余曲折があったんです。まず、CDに入っているライヴ音源は去年9月に代官山UNITでVICTORIUSの来日公演("偉大なる恐竜たちのツアー")のオープニング・アクトとしてやったときのものなんですね。そして、本当だったらこれはライヴ映像として出すつもりのものでした。ところが、なんと映像データが飛ぶというトラブルが起きてしまったんですよ。
-いやはや、なんともそれはデジタル・データの怖いところですね。
Mina隊長:ただ、奇跡的に音だけは残っていたんですよ。それで、なんとか音だけでも出したいということで今回は新曲たちと一緒に出すことにしました。
-なおかつ、豪華盤のライヴDVDに収録されている映像というのは、昨年末に目黒鹿鳴館で開催されたワンマン・ライヴ"FATE GEARワールドツアー前半ファイナル!Adventure in the East東京編"の模様になるわけですね。
Mina隊長:はい。豪華盤はCDとDVDの2枚組で、映像には(目黒)鹿鳴館のワンマンが丸ごと90分入ってます。
-FATE GEARはコンセプチュアルな作品を生み出すプロジェクトである一方、ライヴならではのパフォーマンスを展開する面も持っていることを考えると、今作では新曲と同時にそれを味わえる贅沢なつくりになっている言えそうです。
Haruka:それに、今までFATE GEARには音だけのライヴ作品ってなかったんですよ。結果的にではあるんですけど、初めてのことが実現できたことにもなるので結構新鮮な感じを味わえてますね。ライヴ音源ならではの臨場感とか、みんなが出してるそのときだけの演奏をみなさんにもぜひ楽しんでいただきたいです。そして、DVDに入ってる目黒鹿鳴館でのライヴ映像はキーボーディスト 黑咲ちゃんのラスト公演でもあったので、こちらもまた違った意味でこの日だけの空気感が詰まってると思いますね。
-そして、今作『The Vanguard Of Hades』では新曲4曲が聴けるところも重要な点になるかと思います。しかも、ここに収められている楽曲たちはどれもFATE GEARにとっての新たなる方向性を示しているものばかりなのだそうですね。
Mina隊長:今回の4曲は、ストーリーの面で以前とはまったく違う新シリーズに突入してます。これは2022年に『Killers in the Sky Part 2』を出した時点で、次にやりたいこととして方向性を定めていたものでもありましたし、実を言うと構想そのものは私が子供の頃からずっと思い描いていたものでもあるんです。
-えっ! 子供の頃からずっと!?
Mina隊長:『The Vanguard Of Hades』のジャケットでは幽妃-yuki-さんにイラストを描いていただいてるんですけど、ここには天使と悪魔がデザインされているんですね。私は小学校の1年とか2年くらいのときから、誰しも人間の中には天使と悪魔がいるんじゃないか? という妄想をしていたところがあって(笑)、その世界を作品として具現化したのが『The Vanguard Of Hades』なんです。もちろん、当時はバンドにはまだ興味がなくて絵を描いたりするのが好きだったので、物語の中のキャラクターとかそれぞれ設定を考えていただけなんですけど、あれから20年以上経った今になってこの物語をCDとして出す日が来るとは自分でも想像していませんでした。
-ちなみに、隊長は作品を出されるたびに原作となる小説も発表されていますよね。今回、イラストレーターの方にはそうしたものを渡されたのでしょうか?
Mina隊長:今回の場合は自分が子供の頃から描き溜めていた絵があったので、それを幽妃-yuki-さんに見ていただきました。もともと私は美大に行きたかった人間なので、音楽をやらなかったらおそらく美術系に進んでいたと思うんですよね。
-だとすると、ご自身でイラストレーションも賄うという選択肢もあったのでは??
Mina隊長:あぁ、それもなくはなかったですけどね。今回は作詞や作曲もそうですし、レコーディングもあったので。ちょっと時間がなさすぎて無理でした(苦笑)。それに、幽妃-yuki-さんとはもうここ2年くらいずっとやりとりをしていますから、お互いのノリもわかってきていますし、いろいろと汲み取ってもくれるので相談しやすかったです。
-それだけ世界観が明確に定まっていたという『The Vanguard Of Hades』には、キャッチコピーとして"「貴方と出会った、それは救いなの?」悲運の歯車は回り出す。悪魔の盟約と共に。"という言葉も添えられております。ここは読者の方々に向けて、隊長から少しばかり解説をいただけますと幸いです。
Mina隊長:これまでのFATE GEARはスチームパンク的な世界観の中で人間の織りなす物語を表現してきていたんですが、今回は人間が登場しない完全なるファンタジーの世界になります。天使と悪魔が主な登場キャラクターで、キャッチコピーにある"貴方と出会った、それは救いなの?"という台詞は、2曲目の「Get Lost In Hades (feat.荊)」の歌詞にも含まれているものなんですよ。天使が悪魔の棲んでいる冥界に迷い込んでしまう、という場面からストーリーがスタートします。
Haruka:この歌詞もそうですし、ファンタジーとは言ってもこの物語は人間の世界にも結構通じる話だなと感じるんですよね。聴く人それぞれにとって、きっといろんな感じ方ができるんじゃないかと思います。