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INTERVIEW

FATE GEAR

2023.05.24UPDATE

2023年06月号掲載

FATE GEAR

Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) 黑咲(Key) Haruka(Dr)

Interviewer:山口 哲生

本日5月24日にシングル『Deathless Memories 2023』を全国発売したガールズ・スチーム・メタル楽団、FATE GEAR。『The Sky Prison』から続いた壮大な物語を締めくくったEP『Killers in the Sky Part 2』から半年で届けられた今作は、新曲+再録曲の全3曲を収録している。彼女たちのライヴが目に浮かぶ情熱的な楽曲たちは、まもなくスタートする初ワールド・ツアーでも、間違いなく現地で大きな歓迎を受けるだろう。3人に話を訊いた。


世界に行くこのタイミングでこんな曲を作っておきたいというのはたしかにありましたね


-『The Sky Prison』(2021年1月13日リリースの4thアルバム)、『Killers in the Sky』(2022年4月リリースのEP)、『Killers in the Sky Part 2』(2022年11月リリースのEP)と続いた一連の物語を締めくくり、ワールド・ツアーを目前に控えたタイミングでリリースされたシングル『Deathless Memories 2023』ですが、今作はどういうものにしようと考えていましたか?

Mina隊長:タイトルにもなっている「Deathless Memories (feat.KOKOMI)」と、もう1曲の「Romancer (feat.KOKOMI)」は、もともと1stフル・アルバム(2015年リリースの『A Light in the Black』)に入っていた曲なんですけども、現在は廃盤になっていて手に入らないので、それをなんとか再発して、サブスクでもみんなに届けたいなと思いまして。それがこのタイミングになったというのは......たまたまですかね(笑)。『Killers in the Sky Part 2』で物語が落ち着いたタイミングで、過去のものを出してみようという感じでした。

-新曲の「Adventure in the East (feat.NANA)」に関してはいかがです?

Mina隊長:これは裏設定なんですけど、実はこの曲も『The Sky Prison』からの一連のシリーズと同じ世界観なんです。ただ、同じ主人公を描いているわけでも、この曲に特定の主人公がいるわけでもないんですが、同じ戦いの中で戦っている曲というか。

-スピンオフみたいな感じなんですね。鍵盤の音色に日本というか、アジアを彷彿とさせるものが使われていて。ワールド・ツアー前にそういった楽曲をアピールしようとか、いろいろ考えられたのかなと思ったんですが。

Mina隊長:日本のバンドにしか作れない音ってなんだろうというのを改めて考えてみました。それで、琴の音色も入れたし、それ以外のアジアっぽいものもメロディ的に入れたりしていて。世界に行くこのタイミングでこんな曲を作っておきたいというのはたしかにありましたね。

-ちなみに、楽曲を作るにあたってどちらが先行していましたか? 連作のスピンオフにするのか、ワールド・ツアーというライヴに向けたものにするのか。

Mina隊長:最初にスピンオフを作ろうという考えがあったんですよ。というのも、MVで陸海空を制するって謎の使命がありまして(笑)。最初に「Live in blood」(『Killers in the Sky』収録曲)のMVを戦艦"三笠"で撮ったんですが、あの船は海上自衛隊が管理していて、その次に「Unbreakable Wings (feat.NANA)」(『Killers in the Sky Part 2』収録曲)を航空自衛隊入間基地の飛行機を背景に撮影していたので、残るは戦車しかない! と。それはお客さんや周りの関係者からも言われましたし、自分としてもやりたかったので、スピンオフを作ろうということになって。そうであれば、自衛隊の力をお借りしつつ、日本をアピールできるようなものにしようということになったので、いろんなタイミングが重なった感じでしたね。

-今回のMVは朝霞駐屯地で撮影されたんですよね。SNSを拝見したら、"87式自走高射機関砲 の上でギター弾いたギタリストです!"という写真をアップされていて、すごいインパクトでした(笑)。

Haruka:"今度は戦車だ!"という話は、「Unbreakable Wings」の撮影のときからチラチラ出ていたので、次は戦車で撮るんだろうなと思ってはいましたね(笑)。そこから今回の曲をいただいて。聴いてみたら、海や空とはまた違うテイストではあるんですけど、正統派というか、地に足がどっしりとついたメタルな感じだったので、こう来たか! って思いました。

-重みのあるドラムが気持ち良かったです。

Haruka:ドン! パン! みたいなどっしりとした感じのリズムが多いので、これはライヴでやったら楽しそうだし、盛り上がりそうだなって思いました。なので、MV撮影のときは、動き的にもわりと堅実な感じというか、日本犬のような感じというか(笑)。

Mina隊長:闘犬(笑)?

-ははははは(笑)。勇ましさというか。

Haruka:そうですね(笑)。華やかというよりは、そっちの感じです。撮影していたときも、みなさん訓練中みたいな感じだったんですよ。

Mina隊長:本当に基地の中で撮影していたので。

Haruka:これはチャラチャラしてちゃいけないなという雰囲気の中で撮ったので、背筋が伸びましたね。行進するじゃないけど、そういう感じも必要なのかなと思いながら撮影してました。

-黑咲さんは「Adventure in the East (feat.NANA)」にどう臨まれました?

黑咲:この曲は、キーボード・ソロをコード進行から考えさせていただいたんですけど、デモをいただいたときに、これは和風というかアジアっぽい感じだなと思ったので、ソロもそんなものにしようかなと考えていたら、いつの間にか様式美系なソロになってしまって(苦笑)。これで大丈夫かな......と思いながら、隊長さん(Mina隊長)に渡したんですよ。そしたら、楽曲が私のソロに違和感なく入るようにアレンジし直していただけて。

Mina隊長:キーボード・ソロのところはコード進行もまったく決めずに丸投げしたんです。もう全部お任せしようと思って。それでソロに入れるように直したんですけど、結果的にそれがスリリングになって良かったなって感じますね。あと、個人的に様式美も好きなんですよ。昔のRAINBOWとか、そういうのも全然ありかなと思っているので。

-キーボード・ソロにしようと思った理由ってあったりするんですか?

Mina隊長:定期的にキーボード・ソロの曲を作ってはいるんですよ。アルバムに1曲は必ず入っているかなぐらいの頻度なんですけど。あと、新しい感じを出したかったところもありましたね。他のバンドにない感じを出そうとすると、キーボードがいるというのは周りとの違いかなと思うので。そこは全面に出したいと考えていました。

-黑咲さんは、MV撮影に関してはいかがでした?

黑咲:私は重機の上に乗らせていただきました(笑)。映像を観た感じ、そんなに高いところじゃなさそうですけど、体感的にはめちゃくちゃ高かったんですよ。あと、撮影した日は気温も結構低くて寒かったんですけど、怖さもあいまって、鼻水が映ってないかめっちゃ不安でした(苦笑)。個人的な感想になっちゃいましたけど。

Haruka:みんな高いところに乗ってパフォーマンスするの大変ですよね。ドラムは(重機の)上に乗せられないので(笑)、私は地面でやりました。

-あと、この曲はNANA(THEO NOVA/GUNGIRE)さんが歌唱されていますが、こんなふうに歌ってほしいというオーダーもされたんですか?

Mina隊長:そこまで細かくはしてないですね。ここはクリーン(クリーン・ヴォイス)で、ここはデス(デス・ヴォイス)でっていうぐらい(笑)。

-そこはもう何度もご一緒しているのもあって。

Mina隊長:安心感はありましたね。

-過去にヨーロッパは何度か回られていますが、現地でライヴをしたことで感じたものはこの楽曲に生かされていたりしますか?

Mina隊長:まだ実際に行ったのはヨーロッパとイギリスだけなんですけど、日本のメタラーとはまたちょっと違う好みをしているというか、わりとどっしりとした遅い曲がウケるんですよ。日本人には、速めでヘドバンする感じの曲とか、ツーバスが高速で入っていたり、ギターも速弾きしていたりするのが人気なんですけど、それとは真逆のものがウケているかなというのが体感的にあって。だからこういった重い曲も、もしかしたら人気が出るんじゃないかなって感じはしてます。

-現地での盛り上がりを期待しつつ、再録曲「Romancer (feat.KOKOMI)」、「Deathless Memories (feat.KOKOMI)」についてもお聞きしたいです。1stフル・アルバムからこの2曲をピックアップした理由というと?

Mina隊長:過去に1stフル・アルバムの中から再録して出したこともあって。そうなると、「Deathless Memories」を出さないわけにはいかないよなと。単純にまだやっていなかったからというのが大きいんですけど、「Romancer」に関しては、英語版(「Romancer ENG.ver (Feat.Sophia)」/2021年1月27日リリースの『Scars in my Life -English edition-』収録曲)は出していたんですよ。でも、日本語版の歌詞もわりと人気なのがわかってきて。特に「Romancer」は日本の桜が咲いている情景を歌っているのもあって、ここは日本語歌詞も出しておくべきかなと思って今回再録しました。

-今回の作業をしていて、1stフル・アルバムを制作されていた当時のことを思い出したりしました?

Mina隊長:そうですね。いろいろと。いつの間にかこんなに時間が経っていたのかと思いましたね(笑)。1stを出したのが2015年の8月なので、もう8年経つんですけど、あっという間だったなと。

-その当時、FATE GEARの活動ヴィジョンってどんなものを思い描いていたんですか?

Mina隊長:活動当初から、音源中心の活動にしたいなとは思っていましたね。FATE GEARをやる前に、年末のコミケでアニソンのカバー・アルバムを一度出していたのもあって、ちょっと同人寄りというか、音源中心にして、ライヴはそこまでやらないようにしようとは、その当時から思っていたんですけど......。まぁ、なんやかんや(ライヴに)誘われたら出るんですけどね(笑)。

-(笑)誘われたら嬉しいですし。

Mina隊長:はい。だからライヴもやりつつ、音源も出しつつという理想的な活動ができているのかなと思います。