INTERVIEW
FATE GEAR
2025.12.10UPDATE
2025年12月号掲載
Member:Mina隊長(Gt/Ba/Compose/Voice etc.) Haruka(Dr/Compose)
Interviewer:杉江 由紀
10年の歳月をかけて丁寧に紡がれてきた音楽と物語が、今ここに集約されたということだろう。ガールズ・スチーム・メタル楽団たるFATE GEARが、このたび始動10周年を記念して発表するベスト盤『BEST - Angelic Melodies』は、あえてクリーン・ヴォーカルの曲だけを選抜したという劇的且つ美しき旋律に彩られた作品として仕上がった。FATE GEARにはデスヴォイスの登場する曲も多々あるが、ここはMina隊長のメロディ・メイカーとしての手腕を存分にご堪能いただきたい。
-FATE GEARの10周年を記念するベスト・アルバム『BEST - Angelic Melodies』が完成いたしましたが、これまで作品ごとにストーリーやコンセプトを固めたなかで発表されてきたことを踏まえますと、10年分の楽曲たちからどのように選曲と構成をされていったのか、ということが気になります。まずはその点についての解説をいただけますか?
Mina隊長:このベストについてはストーリーを追っていくのではなく、それぞれの楽曲を古い順に並べて時代を追っていけるような並びにしているんです。FATE GEARのこれまでの流れを分かりやすく提示することを重視したので、このベストを聴いてみてからストーリーも追ってもらえたらいいなという気持ちもありますね。そして、このベストではクリーン・ヴォーカルの曲だけをあえてセレクトしました。
-FATE GEARにはデスヴォイスの類いをフィーチャーした曲も多々ありますけれど、あえての全曲クリーン・ヴォーカルとは思い切りましたね。
Mina隊長:やっぱり、ベスト盤というと今までのファンが聴いてくれるというだけじゃなくて、新しくFATE GEARに興味を持ってくれた方たちにとっての入り口になることも多いと思うんですよね。そう考えると、メタル=デスボばっかりみたいなイメージで敬遠しがちな人にも、クリーン・ヴォーカル曲だけのベスト盤となれば聴きやすいと思ってもらえそうかな? と考えたんです。
-曲調の面から見ても、このベストにはメタル曲だけではなくて「Romancer feat.KOKOMI 2025」のようにキャッチーさを持った曲も収録されていますものね。
Mina隊長:たしかに「Romancer feat.KOKOMI 2025」は、いわゆるJ-ROCKっていうんですかね? そういう系統の音が好きな人にも楽しんでもらえる要素があると思います。
-そして、これはベスト盤の面白いところだと思うのですが、過去に聴いたことがある曲でも、この並びだとちょっと違う印象を感じるようなところもありますね。
Mina隊長:そこは、作った側としてもそれぞれの曲たちに新しい表情を与えられたらいいなと意識していたところですね。それもあって今回は新たにリミックスもしてますし、曲によってはドラムを再録してたりするんです。
-ドラムを再録したものは何曲あるのですか?
Haruka:「New Gate 2025」、「カルミア feat.NANA 2025」、「Get lost in Hades feat.荊 Single ver. 2025」、「Force of the Holy feat.橋村姫 2025」、「天空の比翼 feat.IBUKI 2025」の5曲です。
Mina隊長:もともと原曲の「New Gate」(2017年リリースの2ndフル・アルバム『OZ -Rebellion-』収録)は2016年に録っていて、Harukaさんが入る前だったから、当時は別のサポートの方に叩いてもらったんです。
Haruka:私は『OZ -Rebellion-』(2017年リリースの2ndフル・アルバム)の制作途中からFATE GEARに参加するようになったので、その時点だと「New Gate」のレコーディングは終わっていて、私はあのアルバムでは2曲しか叩いていなかったんですよ。だから、今回この曲をこうして録れたのは嬉しかったです。
Mina隊長:あとはまぁ、単純に音質的に向上させたくてドラムを録り直したっていう曲もあったりしますね。
Haruka:ずっとライヴでやっている曲も、だんだんとフレーズが変わってきたりしてるんで、そういうものを今現在の形で録れたっていう点も良かったと思います。
-では、せっかくですのでHarukaさんから再録した5曲についてそれぞれコメントをいただけますでしょうか。
Haruka: わかりました。まず「New Gate 2025」はBPMでいうと150くらいで、ミドルよりちょっと速いかな? っていう感じではあるんですけど、当時ライヴでやるときはかなり必死だったんです。昔はそうやって"速いなぁ"と感じてた曲を、今は"ちょっと速いかな?"くらいの感覚で録れたのは自分にとっての変化だと思いますし、爽やかな風が吹き抜けるような感じで録れたんじゃないかなと思いますね。
-「Force of the Holy feat.橋村姫 2025」についてはいかがでしたか。
Haruka:これはわりと最近の曲(原曲は2024年6月リリースのアルバム『The Vanguard Of Hades』収録曲「Force Of The Holy (feat.橋村姫)」)ですけど、以前よりちょっとスピーディで疾走感のある感じで録れました。メロディがきれいなので、ストーリーを感じながら叩けたのも良かったですね。感覚的にはジムのランニング・マシンで走るんじゃなく、ちゃんと緑のいっぱいある公園を走ってるみたいな気持ちで、速いけど楽しく叩けました(笑)。
-ちなみに、再録の際に(Mina)隊長から何かオーダーが出るようなことはあったのでしょうか。
Haruka:そんなになかったですよね? "ライヴのときの感じでいいですか?"、"それで大丈夫です"みたいな。
Mina隊長: 毎回、ドラムのデモを作った後はHarukaさんにほぼお任せしてるんですよ(笑)。
Haruka:隊長の作るデモと言えば、「カルミア feat.NANA 2025」は相当難しかったです。打ち込みで作ってるからだとは思うんですけど、人力で叩こうと思うとほんとに大変で。実際、オリジナル(2021年リリースの4thアルバム『The Sky Prison』収録曲「カルミア (feat.NANA)」)のときは叩けなかったんですよ。でも、今回はそれに挑戦しました。
Mina隊長:そういう意味では、今回の5曲だと「カルミア feat.NANA 2025」は一番オーダーを多く出した曲だったかもしれないですね。特に金物の入れ方にこだわりがあったので、ハイハットとかライドに関してはだいぶいろいろやってもらいました。
Haruka:1発でパーン! って録れる感じではなかったので(苦笑)、この曲は練習しながらやっていきましたね。苦労はしましたけど、でも結果的には楽しかったです(笑)。
-「カルミア feat.NANA 2025」も曲調としてはJ-ROCK要素が強いですし、ドラムもそこまで難しそうには聴こえず、むしろ軽やかに聴こえるくらいなのですけれど、これは優雅に水面を進んでいるように見える水鳥的なあれだったりして?
Mina隊長:だと思います。水面の下ではすごいバタバタしてるみたいな(笑)。
Haruka:きっと、録音中の顔とかもすごい真剣で険しい感じになってたはずですよ。でも、音としては軽やかに聴こえていたんだったら良かったです(笑)。
-「Get lost in Hades feat.荊 Single ver. 2025」はメロディアスでドラマチックな雰囲気ですが、これを再録される際にはどのようなことを心掛けられましたか。
Haruka:この曲はちょっとヴィジュアル系っぽい感じもありつつ、基本的にはミドル・テンポなので激しい曲たちに囲まれるとバラード的な立ち位置になることが多いんですよ。でも、このベスト・アルバムに入るとまた少し印象が変わってくるというか、ダークな世界観が色濃く感じられる曲として聴こえてくるんですね。今回リレコーディングしていくときには、そのあたりを大事にしていくようにしました。これ以外はどれもツーバスなんですけど、ここではワンバスで歌詞の世界を味わいながら余裕を持って叩くことができました。私はこれ、メロディもすごく好きなんです。
-分かります。リリース当時(原曲は2024年4月リリースの配信シングル「Get Lost In Hades feat.荊 (Single Version)」)もこの曲はメロが秀逸だなと感じていたのですけれど、今作のようにこれだけメロディックな曲たちが並んでいる中にあってもなお、繊細な「Get lost in Hades feat.荊 Single ver. 2025」のメロディは突出していると感じます。
Mina隊長:ありがとうございます。今まで私が書いてきた曲たちって、どちらかというとX JAPANとか日本のメロスピっぽいものが多かったと思うんですよ。この曲の場合はテンポがそれよりもずっと遅いので、そうなったことで海外のゴシック・メタル系の影響が強く出たのかもしれないです。それもちょっとキャッチーな形で。
-なるほど。かと思うと、今作には「天空の比翼 feat.IBUKI 2025」のようにスピード感の強い曲も収録されていますね。
Haruka:BPMで言うとこれは170くらいです。IBUKIさんのヴォーカルがすごくカッコいい曲なので、私はその声を聴きながら"ウォーッ!!"ってテンションを一緒に上げていくような感じで録りました(笑)。























