MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

FATE GEAR

2023.12.12UPDATE

2023年12月号掲載

FATE GEAR

Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) Haruka(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

邁進あるのみ。Mina隊長の率いるガールズ・スチーム・メタル楽団 FATE GEARは、今夏にアジア("仲夏夜之願 -Midsummer's Night Wish-")を手始めにEUおよびUKも回るワールド・ツアー("Europe tour")を開催し、無事に日本へと戻ってきた。そうしたなかで、12月20日にリリースされるのは新たなシングル『Winds of Fall』で、これは2015年発表の1stフル・アルバム『A Light in the Black』に収録されていたメロディックな疾走チューン「Winds of Fall」と、ゴシックな雰囲気の「Nocturnal Moon」をリテイクした作品となっているとのこと。そして、来たる12月23日には目黒鹿鳴館にてのワンマン・ライヴ"FATE GEARワールドツアー前半ファイナル!Adventure in the East東京編"も開催されるそうだ。

-このたび、FATE GEARは12月20日に新たなシングル『Winds of Fall』をリリースされることになりますけれど、まずは今年5月に『Deathless Memories 2023』を発表したのちに行われていたライヴについてのお話を少しうかがっておきたいと思います。6月に東京公演("Next Rail Creation presents「INFINITY vol.79」")を開催して以降、7月からは香港や台北、さらにはEUとUKでもワールド・ツアーを展開されてきたそうですが、各地で得てきたのはどのような手応えでしたか。

Mina隊長:今まで、FATE GEARの海外ライヴに関してはヨーロッパを中心にやらせていただいてたんですけど、今回は初めて香港や台湾に行くことになって、そこでは同じアジア人同士というところでの親近感みたいなものをかなり感じることができました。ライヴの雰囲気そのものも、お客さんたちのノリがそこまで激しすぎないというか(笑)、なんとなく日本と似ているような感じでしたね。

-たしかに、アジア圏とEU/UK圏だとライヴの場の空気感が違う、というケースは他でもよく見られる現象のように思います。地域性による文化の違いなのか、DNAレベルでの感覚の違いなのか、きっとそこには様々なファクターが関係しているのでしょうね。

Haruka:やっぱり、アジア人同士だとみんな顔の造りが近いせいか、自然と仲間っぽい感覚が生まれるというのはあるような気がしますね。それと、これは個人的なことですけど、私は子供の頃に2年くらい台湾に住んでいたことがありまして、当時台湾のみなさんにはとても良くしていただいた記憶があるんですよ。だから、台湾でのライヴはちょっと里帰りしたような気持ちでやらせていただいたところもありました。

-ある意味、Harukaさんにとっての台湾公演は凱旋公演でもあられたのですね。

Haruka:そうですねぇ。さすがにかなり昔のことなので(笑)、街並みとかは自分がいた頃とはずいぶん変わってましたし、いろんなところがきれいになってるなという印象でしたけど、人の優しさは全然変わってなかったのが嬉しかったです。ライヴのときの雰囲気もすごく温かい感じで、会場のサイズ感は日本でのライヴのときより結構大きかったんですけど、みんなが楽しんでくれてることもよくわかりました。

-台湾ではゲーセンに日本の音ゲーがたくさん導入されていて、みなさん日本の楽曲で普通に遊んでいらっしゃったりもしますしね。日本から生まれたサブカルチャーの浸透度合は、相当なものなのではないかと思われます。

Mina隊長:FATE GEARの音楽もそうですし、みなさんいろいろと日本の文化に親しんでくださっているんだろうなぁ、ということは私も感じましたね。

-一方、アジア・ツアーから約1週間後にFATE GEARは欧州へと飛ばれまして、ドイツのフランクフルトを皮切りに、ブレーメンでは"Breminale 2023"というフェスにも参加されたのだとか。

Mina隊長:新たにインターネットを通じて知ってくださった方たちが多いのか、以前ヨーロッパを回ったときよりもお客さんの数が増えたなという印象がありましたね。あと、ブレーメンでの"Breminale 2023"に関しては、まさに童話の"ブレーメンの音楽隊"で有名なあのブレーメンでのフェスで、FATE GEARにとっては初の野外イベントだったんですよ。しかも、ヘッドライナーとしてトリを務めさせていただくことになり、メタル好きな人たちももちろんいましたけど、普段はあんまりメタルを聴かなさそうな人たちも最前列で盛り上がってくれていて、そういうのも嬉しかったです。

-ただ、少しばかり現実的なお話をさせていただくと、昨今は円安傾向に拍車が掛かり続けている状態ですし、コロナショックの余韻や、ウクライナ侵攻に関連するエネルギー問題などもあって、EU圏では日本以上に物価高が激しくなっていて、500mlのペットボトルが日本の倍かそれ以上になっている現実があります。ぶっちゃけ、今回のワールド・ツアーはコスト面で日本のバンドにとって厳しいところがあったのではありませんか。

Mina隊長:そうなんですよね。実は私、Twitter(X)にそのへんのお金の話を"今って円安でヤバいし、ツアーやるとこのくらいかかるんだよ"って正直に投稿したんです。そうしたら、プチバズってしまいました(苦笑)。みんなびっくりしたみたいですけど、それと同時に応援の声もたくさんいただけたんですよ。

-遠征費もさることながら、グッズ制作をするにしても海外発注する場合はこれまた円安の影響を避けることができませんものね。

Mina隊長:グッズの場合は、まず発注する段階でこちらからお金を払う必要がありますから。そこの部分だけでも"経費が前より何十万単位で増えてるんだけど!?"っていうのはありましたけど、今回ありがたいことにTシャツなんかはソールド・アウトしてしまったので、なんとかグッズの面に関しては赤字にならないで済みました。

-それは何よりでした。とはいえ、このワールド・ツアーはまだ前半戦が終わっただけの状態で、来年からは引き続き後半戦が始まるのでしたっけ。

Mina隊長:本当だったら11月にフランス・ツアーも決まっていたんですが、それに関しては治安上の問題があって中止になってしまったんですけどね。でも、幸いこの先もいっぱいお話をいただいているので、来年はまた行ってくることになってます。

-各国で移民問題が不安定化していたり、様々なテロ事件、イスラエル情勢の悪化と、この数年は次々とやっかいな状態が起きていて、世界を渡り歩くにはなかなか大変なところもありますが、FATE GEARにはぜひこれからも果敢なる姿勢でワールドワイドに頑張っていただきたいところですよ。

Mina隊長:はい。来年はカナダとか、ヨーロッパやアジア以外のところにもまた新しく進出していきたいと思ってます。

-そうしたなかにあって、FATE GEARは12月20日に新たなシングル『Winds of Fall』をリリースすることになっております。こちらは、2015年発表の1stフル・アルバム『A Light in the Black』に収録されていた秋を感じさせるメロディックな疾走チューン「Winds of Fall」と、ゴシックな雰囲気の「Nocturnal Moon」をリテイクした作品となっているようですね。

Mina隊長:5月に出した『Deathless Memories 2023』も、1stフル・アルバム『A Light in the Black』から「Romancer」と「Deathless Memories」を再録したシングルだったんですが、今回はまた新たにそのアルバムから2曲を再録しました。結局、現状だと『A Light in the Black』が廃盤になっていて入手ができないので、新しいファンの方たちが聴けないという状況をなんとかしたかったんです。

-なお、曲順としては「Winds of Fall (feat.KOKOMI)」、「Nocturnal Moon (feat.KOKOMI)」、「Winds of Fall - Alternative ver. (feat.NANA)」という流れで収録されている今作ですが、表題曲についてはKOKOMI(MISLIAR/ex-Asriel)さんとNANA(GUNGIRE)さんのおふたりがそれぞれ歌っていらっしゃいます。オケの仕上がりにもそれぞれ違いがあるとはいえ、同じ楽曲をおふたりに歌い分けていただいた理由というのがどこにあったのか、ぜひ教えてください。

Mina隊長:この手法に関しては以前『7 years ago』(2018年リリース)というアルバムでもやったことがあるんですけど、やっぱりヴォーカリストの違いによって曲というのはまったく別の一面を見せると思うんですよ。今回の場合だと「Winds of Fall (feat.KOKOMI)」はシンフォニックな仕上がりというか、シンセのパートを多めに入れてあって、北欧メタル的なイメージのアレンジを意識したんですね。というのも、KOKOMIさんはハイトーンでクリアな声質の方なので、彼女の声に似合う音を作っていくようにしました。

-その点、「Winds of Fall - Alternative ver. (feat.NANA)」のほうはどちらかというとオリジナルの雰囲気に近い感じがあるような?

Mina隊長:そうですね。当然オリジナルの形が好きだという方もいらっしゃると思うので、こちらはオリジナルに寄せるようにしたんですよ。だから、シンセのパートは少なめでよりハード・ロックっぽい感じになっていると思います。ミックス的にも、わざとギターの音を上げ気味にしてあります。

-スポンジ生地そのものは一緒でも、クリームの味や使うフルーツによってまったく異なるケーキができあがるのと近い感覚がありますね。それぞれに味わいが違います。

Mina隊長:1枚のシングルでその両方を楽しんでいただけると嬉しいです。

Haruka:ドラム・パートも基本的に使ってるトラックは一緒なんですよ。でも、ミックスが違うとドラムまで結構違う印象になるんですよね。ほんと、NANAさんが歌っているほうは聴き慣れてるFATE GEARの音っていう感じだったんですけど、KOKOMIさんが歌ってるほうはシンフォニックだし、歌にすごく合った音になってるなと感じました。