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INTERVIEW

FATE GEAR

2024.12.18UPDATE

2024年12月号掲載

FATE GEAR

Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) 橋村 姫(Guest Vo)

Interviewer:杉江 由紀

天使が悪魔の棲んでいる冥界に迷い込んでしまう、という場面を描いた前作『The Vanguard Of Hades』からわずか半年。FATE GEARがここで新たに提示するのは、その続編となる『Kill the Shadow King』だ。世界各国を飛び回りながら活動を続行してきたガールズ・スチーム・メタル楽団、FATE GEARの織りなすファンタジックな異世界空間、そしてモダンさと古き良き様式美HRを融合させたシンフォニック・メタルの音像を、存分にご堪能いただこう。

-6月に発表された『The Vanguard Of Hades』の続編となる『Kill the Shadow King』が、このたび完成したとのことですが、前作は天使が悪魔の住んでいる冥界に迷い込んでしまう、という場面から始まるストーリーの序章にあたるものだったかと思います。だとするならば、Mina隊長は今作において、音と物語の両面からいかなる新展開を見せていきたいとお考えだったのでしょうか。

Mina隊長:RPGに喩えるなら、敵と戦うシーンというか、最初のボス戦みたいなイメージで曲を作っていったところがありましたね(笑)。序章を経た上での盛り上がりのある場面というのを描いていきたかったんです。

-今作のタイトル・チューン「Kill the Shadow King feat.NANA、橋村姫」は、まさにそのような雰囲気を漂わせた1曲となっておりますね。姫さんは前作『The Vanguard Of Hades』で「This Fate (feat.NANA, 橋村姫)」を歌っていらっしゃいましたが、その続きであるこの曲を受け取った際にはどのような印象を持たれたのでしょう。

橋村:前回の「This Fate」もかなり力強さを持った曲だったと感じてましたし、あの時点ですでに私としては戦っている気持ちもあったんですよね。というのも、あの曲ではMVでもデス・ヴォイス担当のNANAさんと背中合わせで歌ってもいますし、曲中で声が重なる場面もあったので、そこが物語の中の天使と悪魔の存在を両方ともよく表していたし、(天使が)まだ状況がよく分からなくて"なぜ私はここにいるの?"って葛藤している様子も出ていたと思うんです。そして、今回の「Kill the Shadow King feat.NANA、橋村姫」はそこから繋がっている新曲ということで、まずはこのイントロ部分を聴いただけで"さぁ、始まるぞ!"っていう臨戦態勢に自然となりました。そして、隊長の言われる"ボス戦"の雰囲気はジャケットのイラストにも色濃く出ていて、私はそれを見たときにもイマジネーションがより広がったんですよ。だから、この曲に対して私はちょっと身構えたところがありました。戦うための武器を構えて、より覚悟が深まった場面を歌っていく必要があるなと感じたんです。

-物語のフェーズが変わったことを歌でも意識的に伝えていらっしゃるわけですね。

橋村:湧き上がるような"やったるぞ感"と戦いの場面ならではの圧や緊張感を、歌で醸し出していきたいとオファーをいただいたときから意気込んでました(笑)。

-レコーディング前にMina隊長からのオーダーは何かしらあったのですか?

橋村:隊長からもこの曲の解説や説明は伺ったんですけど、その内容とデモをいただいたときに自分が受けたインスピレーションが、びっくりするくらい一致していたんですよ。やっぱり、デモをいただくのと同時にジャケットのイラストを見せていただいていたのが、結構大きかったと思います。

-「Kill the Shadow King feat.NANA、橋村姫」を曲として仕上げていく側として、Mina隊長が音楽的な面で特にこだわられたのはどのようなところでしたか。

Mina隊長:ギター・ソロは必要だなっていうのがありました。前の「This Fate」にはそこまでリード・ギター的なものは入れなかったんで、全体的に言うとザクザクしたバッキングが中心になっていたんですが、今回は途中にギターが主役になる場面を入れたんです。それと、この曲って実は、タイトルもRAINBOWの「Kill The King」をオマージュしたものになっていて、ああいったシンセやキーボードが入ったファンタジーな空気感というんですかね。メタルとしての昔ながらの様式美も持ちつつ、ゲームのBGMにも使えそうな曲としてアレンジをしていったところがありました。

-たしかに資料にも"古き良き様式美HRを融合させた、ゴシック、シンフォニックメタルサウンド"との文言がありますね。なお、Mina隊長がもともとオールドスクールなロックにも造詣が深いのは存知上げておりましたけれど、まさかここでRAINBOWの名前が出てくるとは! 個人的には、"Stranger In Us All World Tour Japan 1995"の東京公演を観に行ったことがありましたし、どうやら近年もコロナ禍前までは活動していたようなのですが、当然隊長は、リアルタイムで「Kill The King」を聴いていらっしゃったわけではありませんよね?

Mina隊長:さすがに私はまだ生まれてなかったです(笑)。

-となりますと、RAINBOWとはいつどのように出会われたのです?

Mina隊長:父親が結構ロックを聴いていて、基本的にはLED ZEPPELIN派だったんですけど、他にもKING CRIMSONとかいろいろ聴いてたんで、私はその影響でロックに興味を持つようになったんですね。で、そういう古い時代の同年代バンドをいろいろ調べていくなかで、RAINBOWと出会うことになったんですよ。

-そういうことでしたか。隊長はそのような深いバックボーンをお持ちであるだけに、なにかとその素養が曲作りやプレイの中で活かされているのでしょうね。一方で、隊長が「Kill the Shadow King feat.NANA、橋村姫」の歌詞を書いていく段階で、重視されたのはどのようなことだったのでしょうか。

Mina隊長:ここでの登場人物は天使と悪魔なので、対比を前回と同様に黒と白のかたちでそのまま表現したというのがまずはありました。あとは、やっぱり心情の違いも重要な部分でした。悪魔のほうがめっちゃ強気なのに対して、天使のほうにはまだ少し弱気な部分も残っていたりするので、そこは詞としても表してますね。

橋村:詞の中に"ここは深淵の城"ってフレーズがあるんですけど、レコーディングのときにそこだけは隊長から、"もっと深いスケールのある感じで歌ってほしい"という意見をいただいたんですよ。つまり、それは天使が"深淵の城"に対しての恐れや畏怖みたいなものを感じている場面なので、天使の複雑な感情はそういうところでも伝えることができたような気がします。逆に他の部分ではいかにも天使らしく歌っているので、そこのギャップがメンタリティの変化としては分かりやすいはずです。

-ちなみに、隊長からすると今回この曲を姫さんに託す際に、最も"期待"していたのはどのようなことでしたか。

Mina隊長:NANAさんがグロウル・パート、姫ちゃんがクリーン・パートなので、姫ちゃんには「This Fate」のときと同じく、ハイトーンや透明感の部分に特に期待していましたね。歌唱力もですけど、声そのものにすごく魅力のあるヴォーカリストなので、そこは期待以上に応えてもらえたなというふうに感じてます。

橋村:そう言っていただけて良かったです。嬉しい! ありがとうございます。

-そういえば、姫さんとFATE GEARの"馴れ初め"についてはまだ伺ったことがありませんでしたね。よろしければその経緯をお話していただけますか?

橋村:私が前に別のプロジェクトでサポート・ヴォーカルをやっていたときに、ツアー先の名古屋と大阪で、FATE GEARと2日連続で一緒になったことがあったんですよね。そのとき、実は初めてライヴを観てガツン! とパンチをくらっちゃったんです。もうほんとにカッコ良すぎて、これはちょっと敵わないなと感じたせいかその日はすごくヘコんじゃったくらいでした(苦笑)。

-なかなか強烈な出会いだったのですね。

橋村:FATE GEARって、とにかく世界観の完成度がすごいじゃないですか。音楽的なところはもちろんですし、衣装しかり、演奏しながらツーステ踏むとかみんなでヘドバンするところも含めて、何をどう表現したいのかが明確なんですよね。だから、最初はその全てが衝撃すぎてヘコんじゃったんですけど、心からすごいなと思ったんでその後すぐファンになっちゃってたんです。普通にサブスクで聴いたり、ダウンロードしたりもしてましたし、例えばNANAさんのヴォーカルとかも自分には全然ない要素だから、純粋に"カッコいいな"って思って聴いてたんですよ。そういう意味で、前作の『The Vanguard Of Hades』から、ヴォーカリストとして携わらせてもらうことになったときは、とても嬉しかったですね。自分もFATE GEARの乗組員として物語を彩る一員になれるんだ! と大変光栄な気持ちになりました。