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INTERVIEW

FATE GEAR

2022.11.09UPDATE

2022年11月号掲載

FATE GEAR

Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) 黑咲(Key) Haruka(Dr)

Interviewer:杉江 由紀

18世紀に実在したとされる女海賊のアン・ボニーとメアリ・リードをモチーフにし、Mina隊長の率いるガールズ・スチーム・メタル楽団 FATE GEARが、2021年1月に発表したフル・アルバム『The Sky Prison』から描き出してきたひとつの長い物語は、ここでようやくひとつの結末を迎えることになった。前作の前日譚にあたった『Killers in the Sky』に続いての第3弾作品『Killers in the Sky Part 2』は、なんでもこのストーリーをひもといていくうえでの最後の1ピースになるという。ここでは物語を紡ぐMina隊長、楽団の基盤を支えるHaruka、そしてこのたび新乗組員となった黑咲の3人に、今作が生まれるに至った経緯を問うてみるとしよう。

-今作『Killers in the Sky Part 2』は前作『Killers in the Sky』(2022年4月リリースのEP)の続編であると同時に、FATE GEARにとっては21年1月に発表したフル・アルバム『The Sky Prison』から始まった一大巨篇の完結編ともなる作品でもありますが、今作からは新たなる乗組員としてキーボーディストの黑咲さんが加入されたそうですね。

黑咲:初めまして。このたびキーボーディストとしてFATE GEARの新たな乗組員になりました黑咲と申します。よろしくお願いします。

-黑咲さんとFATE GEARのなれそめとはどのようなかたちだったのでしょうか。

Mina隊長:最初は黑咲がまだ別のガールズ・バンドで活動していたときで、対バン相手として知り合ったんですよ。その時点では顔見知りくらいの感じで、お互いに軽く挨拶を交わした程度だったんですけど、そのあとセッションで同じイベントに出たり、あとはFATE GEARが大阪でLOUDNESSの高崎(晃/Gt)さんと山下(昌良/Ba)さんたちのイベント("MindbloW Rock Fes vol.6")に出たときにも、高崎さんと山下さんのセッション・バンドに黑咲がいたので、そこでも一緒に対バンしたことがあったんです。そして、そこからしばらくしてYuriちゃんの都合でスケジュールが合わなくなってしまって、キーボードを交代する必要が出てきたときに黑咲の師匠である岡垣さんと、以前からちょくちょく連絡を取っていたこともあり、岡垣さんから"黑咲ちゃん誘ったらええんちゃう? 今はバンドもやってないし"というアドバイスをいただいたんですよ。それが大きなきっかけでした。

-岡垣さんとはあのTERRA ROSAの岡垣正志(Key)氏のことですよね。

黑咲:わたしは福岡から上京してきたんですけど、まだ地元にいたときに私より先に東京へ行って活動していた知り合いのバンドマンから、"キーボードをやるならこんな素敵な先生がいるよ"ということで、紹介していただいたのが岡垣さんだったんです。その当時、何回か大阪まで通ってレッスンを受けさせていただいたことがありました。

-FATE GEARから声が掛かったとき、黑咲さんとしてはどのようにその事実を受け止められたのでしょうか。

黑咲:嬉しかったですね。私としてもやるならガールズ・バンドがやりたかったですし、個人的にはライヴのパフォーマンスも意識しているほうなので、FATE GEARに誘ってもらえたのは自分にとって大きなチャンスだったと思います。

-そうした新体制にて制作された今作『Killers in the Sky Part 2』では、前作『Killers in the Sky』に引き続いてのNANA(THEO NOVA)さんとIBUKI(ex-Disqualia)さんに加えて、新たにアマギセーラさんもゲスト・ヴォーカリストとして参加されておりますね。

Mina隊長:実は、昔やっていた某バンドで、彼女にはサポート・ヴォーカルで参加してもらったことがあったんですが、春の"M3"(音系/メディア・ミックス同人即売会)で偶然に再会したんですよ。10年ぶりくらいの感激の再会で向こうも泣いちゃって(笑)、そこで"一緒に何かやろうよ"というところから、今回「雨が紡ぐレクイエム」を歌ってもらうことになりました。

-かくして、今作『Killers in the Sky Part 2』で、FATE GEARはまた新たな局面を迎えたことになりますが、それと同時に流れとしては21年1月のフル・アルバム『The Sky Prison』、前作『Killers in the Sky』と続いてきた物語が、ここでいよいよ完結することにもなるそうですので、そのあたりに対する解説もいただけますと幸いです。

Mina隊長:少し複雑にはなるんですが、アルバム『The Sky Prison』の世界を過去に10年ほどさかのぼったうえで描いた前日譚が、2022年春に出したEP『Killers in the Sky』で表現したストーリーだったんですよ。今回のEP『Killers in the Sky Part 2』に関しては、さらにその"間"を埋める物語となっています。最後の1ピースをここではめることによって主人公メアリの物語がようやくここで完結したことになるんです。

-なるほど。その最後の1ピースとは結果的に残ったものだったのでしょうか。それともあえて残しておいたものなのでしょうか。

Mina隊長:後者ですね(笑)。前回の取材(※2022年4月号掲載)のときに"まだもう1作くらいは出すと思います。今年の秋くらいにそれを出して、ストーリーを完成させたいなという構想はあるんですよ"と言っていたと思うんですが、あの時点からもう構想は固まっていました。

-そういえばそうでしたね。ただ、最後のパーツが"間"を埋める物語だったというのはなかなか意外でもありましたよ。また、意外と言えば、今作にはなんとHarukaさんが初めて作曲を手掛けられたという「Epilogue」も収録されておりまして、この点についても実に興味深く聴かせていただきました。

Haruka:初めて作って出した曲がいきなり物語の終盤を締めくくる曲になって、すごいポジションに入れてもらう感じになっちゃったんですよ(笑)。

-これが初の作曲だったのですか??

Haruka:FATE GEARに対しての曲という意味では初でした。作曲自体はこれまでも個人的にいろいろやってはいたんですけど、あまりバンド向きではないものが多かったんですよね。それが今回は珍しくバンドでやったときにも良さそうな曲ができたので、思い切って出してみたんです。

Mina隊長:私としてもこの物語の最後に入れる軽めで明るいテイストの曲が欲しいなと思って、ちょうど作ろうとはしていたんですけどね。でも、自分で作ろうとすると30曲に1曲くらいしか明るいものが出てこなくて(笑)。どうしようかな? と思っていたところに、Harukaさんがこの曲を持ってきてくれて、"これはきっと最後の場面に似合う曲になってくれるだろう"って感じたんです。ほんと、うまくはまってくれましたね。

-FATE GEARの楽曲を初めて作られてみて、Harukaさんが感じられた面白さと難しさがあるとしたら、それはそれぞれどのようなものでしたか。

Haruka:難しかったのはコードとかが全然わからないので、どうしてもベースとドラムばっかりに意識が行ってしまったところですね。ギターとキーボードの音がちゃんと別れた状態では頭の中に浮かんでこなかったので、今回そういった面に関する音の整理は隊長にお任せしたんです。とはいえ、今までは曲作りの途中で何か壁にぶち当たってしまうと、そこですぐ諦めてしまうことが多かったんですけど、今回は自分なりに勉強して、なんとか1曲としての基本的な流れを作るところまでは行けたので、そこは自分としても楽しめるところまでは行かないまでも、ある程度の達成感を得ることはできました。

-隊長は「Epilogue」がHarukaさんから提示されたとき、どのような印象を持たれたのです?

Mina隊長:Harukaさんらしさの出ている曲だな、と感じました。Harukaさんはプログレも聴いているから、突然3拍子になるドラムのフレーズとかにはそういうニュアンスも入っているなと思ったし、ベースもリズミカルでドラマーならではの視点が入っている雰囲気だなと。最低限のギター・ソロ以外はピアノの音色ですべて打ち込まれている状態だったこともあるのか、イメージとしては、メタルというよりは、フュージョンとかジャズに近い空気感のある曲になっていたところもありましたね。ギターのプレイ面でもあまりガシガシ弾くことはしないで、私としては抑えめなアプローチをしていきました。あと、鍵盤のアレンジに関してはほぼほぼ黑咲ちゃんに投げたので、仕上がりとしてはその影響も大きいと思います。まさに今までのFATE GEARにはちょっとなかったタイプの曲になりました。

-黑咲さんからすれば、今回のレコーディングでは、どれも初めて対峙するFATE GEARの楽曲たちだったとは思いますが、特に「Epilogue」を録っていくうえで大事にされたのはどのようなことでしたか。

黑咲:自分としてはあまり経験のないジャンルというかタイプの曲だったんですが、弾き方としてはアタック感を結構強めにしていく感じにしていきました。あとは、難しい運指の部分もちょいちょいあったので(笑)、今作の中でもかなり弾き応えのある曲だったなと感じてますね。