INTERVIEW
FATE GEAR
2022.11.09UPDATE
2022年11月号掲載
Member:Mina隊長(Gt/Ba/Composer) 黑咲(Key) Haruka(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
-それから、今作における1曲目は"朱に染まる穹"と題されたインストゥルメンタルになります。ストーリー展開を把握するうえでも、この曲から今作が幕開けしていくことになる背景を、Mina隊長から解説していただけますと嬉しいです。
Mina隊長:これは"しゅにそまるそら"と読みまして、そらの字は意図して難しい漢字を使っているんですよ。場面としては、空が燃え盛っているというところですね。その光景は通常盤のジャケット・デザインと重なっていて、これから闘いが始まるという不穏な空気を漂わせたものになっています。この最初のインストは、ちょっと映画音楽っぽいものとして作ったところもありました。
-それに次いでの「Unbreakable Wings」は、前作における「Live in blood」で世界三大記念艦である三笠とのコラボをしたのに引き続き、今度はMVを航空自衛隊入間基地でシューティングされたという今作のリード・チューンとなります。つまり、ここではメアリによる熾烈な闘いが描かれているわけですね。
Mina隊長:直訳すると壊れない翼という意味のタイトルでもあるので、そのことを前提にこの曲を聴いてみなさんそれぞれで想いを巡らせていただきたいですし、CDにはいつものように私の書いたストーリーがブックレットとしてつくので、できればそちらも併せて読んでもらえるとよりいろいろなことがわかってくると思います。
-承知いたしました。ちなみに、この曲はギター・ソロも実に秀逸ですね。
Mina隊長:ありがとうございます! この曲にはキーボード・ソロも入っていて、そっちは完全に攻撃的なスタンスで主人公の怒りを表すような音で弾いてもらっているんですが、対比として私のギター・ソロのほうではそれだけじゃなく闘いに対する哀しみとか、切なさみたいなものも含めたソロを弾けたんではないかなと思ってますね。
黑咲:たしかに、イントロとアウトロとギター・ソロ前のキーボード・ソロは、怒りの感情をイメージした音でストレートに弾いてますね。
Haruka:ドラムもこの曲は怒り系のモチベーションで叩いたんですけど、黑咲ちゃんから貰った仮のトラックが、パワー感はあるんだけどすごく上手くてきれいな鍵盤が入っていたので、その音に触発されたところも相当ありました。気持ち的には怒りのモードで叩きながらも、音粒とかはちゃんと揃えていくようにしたんです。黑咲ちゃんが作ってくれたネオ・クラシカルっぽい音を無駄にしないように頑張りました。
-それから、今作の3曲目にあたる「雨が紡ぐレクイエム」で、久しぶりに再会したアマギセーラさんをゲスト・ヴォーカルに起用した理由は、闘いによって失われた命に対するレクイエムとして歌われるバラードである、というこの曲調を鑑みてのことでもあったのでしょうか。
Mina隊長:ええ、そういうことです。彼女は普段わりと民族系のゲーム音楽とかを歌っている人なので、セーラちゃん(アマギセーラ)の声を生かすのであればこの曲だろうなという読みはありましたね。セーラちゃんにだいぶ寄せて作った曲だとも言えます。
-「雨が紡ぐレクイエム」はイントロでの鍵盤も大変素晴らしい響きだと感じました。
黑咲:これ、感情はかなり乗せてます。というか、久しぶりに88鍵盤を出してきて弾いてみたらあまりにも感情が乗りすぎてしまって、最初はリズムがぐしゃぐしゃになってしまっていたくらいです。その意味では、きちんと弾かなきゃという理性の部分と感情の部分が入り混じった葛藤の中で弾くのは、難しいところもあったんですが、私としては弾けば弾くほど入り込める曲でした。
Haruka:ドラムもこれは難しかったですねぇ。アレンジは大半を任せていただいていたので、このどこか懐かしいような雰囲気とか、民族っぽい感じをリズムの面でもちょっと醸し出していくようにしました。自分ではいつもやらないようなこともやった曲だったぶん、まずは覚えるのも大変でしたけど、完成したものを聴いたら思っていた以上に壮大な感じになっていて、すごく手応えを感じられて良かったです。
-"レクイエム"と銘打たれてはいますが、ただ悲しいだけではなく温かな慈愛やノスタルジーを感じられるところが、とても沁みる曲になっていますね。
Mina隊長:良かったです。そこが伝わっているのはとても嬉しいですよ。
-しかし、それでいて次の「suicidal heart」は......。
Mina隊長:これは主人公の心が闇に"落ちて"しまっている場面ですね。実際、ダウン・チューニングで曲としても暗くて重いです。
-もっとも、その闇を抜けた先には「Fly for our future」が待ち受けているわけですので。この展開には救いを感じました。
Mina隊長:この作品の中だとこの曲は物語が大きく動くクライマックス的な場面ですし、盛り上がりの要素や力強い激しさが必要だったので、これはキーの高い曲が得意なIBUKIに歌ってもらうことにしました。この作品の中で最もFATE GEAR的な王道曲になっていると思います。
Haruka:ドラムはキメのフレーズとツーバスが命、みたいな曲になってますね。とにかく勢いを失わないようにしっかり叩く、ということを心掛けました。
黑咲:いわゆるザ・FATE GEARな曲の中に、自分の持っているクラシカルな要素を融合させていくことで、この曲はいいバランスで仕上げることができました。
-そのあと、冒頭でも触れさせていただいた「Epilogue」を経て、今作は「天空の比翼 (instrumental version)」をもって幕を閉じます。FATE GEARの音楽に物語性があるのはいつものことではありますが、今作は、これまで以上にサウンド・トラック的な色合いの強いものになっているように感じますよ。
Mina隊長:あぁ、それはあるかもしれないですね。前作『Killers in the Sky』にはオリジナルの「天空の比翼」を終盤に入れたんですが、今回もストーリーの最後にどうしてもこの曲を入れたくて、それで最後は映画のエンドロールで流れるような、オーケストラっぽいインストゥルメンタルのかたちにして、この作品を締めくくることにしたんです。FATE GEARでは、海外ツアー限定のFATE GEAR's X-Flightsという別名バンドもやっていまして、そこでは映画音楽のカバーなんかもしてきていたんですが、ここではその経験も音作りに生かすことができました。
-さて。今作『Killers in the Sky Part 2』で『The Sky Prison』から始まった一大巨篇は終局を迎えることになりましたが、Mina隊長のことですから、"その次"へと向けたヴィジョンもすでにお持ちでいらっしゃるのではないですか?
Mina隊長:FATE GEARとして描き続けてきたスチーム・パンクの世界観自体は、これからも変わりませんけど、次はきっとまた全然違う物語を作っていくことになるでしょうね。
-具体的なところでも、来年に向けての動向が決まっているところはありますか?
Mina隊長:ありがたいことにライヴのお誘いはいろいろといただいていて、来年はまたすごい方たちと一緒にやらせていただく可能性が結構ありますね。あと、コロナで延期になっていたヨーロッパ・ツアーもそろそろ日程が決まりそうなので、そのリベンジも来年はしたいと思っていて、楽しみです。
黑咲:私は今回レコーディング自体も実は初めてでしたけど、ヨーロッパ・ツアーが決まったら今度は初の海外遠征です(笑)。
Haruka:ライヴが少なかったぶん、これまでは制作に集中したり、『Killers in the Sky Part 2』でもジャケットの豪華盤のほうを描かせていただいたり、一生懸命そのときにできることをやってきましたけど、来年は外に向けたライヴの時間が多くなるんだと思うとまた期待が膨らみますね。もちろん、ライヴも精いっぱいやっていきたいと思ってます。