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INTERVIEW

ulma sound junction

2023.11.28UPDATE

ulma sound junction

Member:田村 ヒサオ(Ba/Vo) 山里 ヨシタカ(Gt) 福里 シュン(Gt) 加勢本 タモツ(Dr)

Interviewer:フジジュン

カオティックさと美しさの均衡を保って、全体のバランスを無意識に取っている


-まさに"シネマティックコア"という感じで、ulmaの楽曲って聴く人それぞれの頭に風景が浮かぶと思うんですけど、映画と一番違うところは、視覚ではなく聴覚から画を描くというところで。頭の中に描く風景って人それぞれ違うと思うんですけど、誰もが楽曲の世界観にどっぷり浸れるためのアシストとして、ジャケットやブックレットはすごく重要だと思うし、アルバムをとことん楽しむための仕掛けがあるのはすごく嬉しいです。

田村:本当にそう思います。あと資料上、「Appetite」がリード曲で「Welcome Back」がサブリード曲とつけてますけど、それもリスナーが決めちゃっていいと思っています。

-この作品を象徴する曲として、この2曲はすごく納得ですけどね。シングルで言うところの両A面という感じで、正反対の楽曲からulmaの違った魅力が見えるし、このアルバムの振れ幅の広さを表していると思いますし。

山里:「Welcome Back」はすごい平和な曲ですよね。

田村:この曲は完全にポップスを作ろうという脳で作った曲だったし、アレンジャーも加わってチームで作った曲になっていて、そういった経験も初めてだったので新鮮で。そういった挑戦もできたから、色とりどりの曲になったというのもあると思います。

-メンバー以外の人の意見が加わることで、新たな発見や気づきはありました?

田村:コーラスが入ってるんですけど、それはアレンジャーの発案で。実はアレンジャーが同級生で、完全に身内ノリでいろんな人を呼んで歌ってもらって。言葉が軽いかもしれないですけど、ひとつの思い出作りとして、そういうことがやれたのも良かったと思います。

加勢本:この曲は演奏をすごい早い段階で録ってたんですが、"ここからどうしようか?"ってアレンジャーを加えて考えて。コーラスを入れて完成させたのは一番最後くらいで、こういう録り方も珍しかったし、今作は新しい挑戦がすごく多かったですね。

-1曲作るのに、構成もアレンジもきっちり決め込んで、余計なものは入れないって作り方だと思ってたので、フレキシブルにアイディアを取り入れてという話は意外です。

加勢本:昔だったら絶対できなかったけど、そうやって遊びも取り入れられる年になったんですかね。根っこは変わらないですけど、客観的に聴いてアイディアを入れられるっていうのは、すごく面白いしありがたいですね。

田村:同じ話だと、「Irreal」もピアノとヴォーカルだけの曲なので、これもメンバー以外の方に入ってもらった曲になっていて。まさかこのバンドでこういう曲をやると思いませんでしたが、これをライヴでやるとしたら、自分で弾き語りができるようになってからやりたいんですけど、ピアニストの方に弾いていただいて、僕が独唱という形でもいいですね。

-本当に美しいピアノ・バラードになっていて、雰囲気を変えるという意味でもアルバムで重要な役割を果たしていますし、この曲があることで、田村さんの歌のレンジの広さも証明しています。

田村:他の曲と比べるとドライというか、リバーブもあまりかかっていない、リアルな音像になっているし。実は、この曲、ほぼ一発録りなんです。2サビの終わりまで録りっぱなしになっていて、発音が怪しいところもあるんですけど、そこも自分の技量のうちだと思って、そのまま収録しました。

-その効果もあって、グッと胸に迫るものがありますし、この曲もそうですが、ulmaが一番大事にしてるのって"美"の部分じゃないか? と思って。"美=芸術性"にも繋がると思うんですけど、激しい曲もカオスなまま終わらないですし、長尺の曲だったらパーツを組み合わせることで生まれる美しさもありますし。そこに美しさがなければならないという考えが、どこかあるんじゃないかと思いました。

田村:たしかにその通りかもしれません。よく山里が言うのが、"ご褒美パートが必要だ"ということで。楽曲をカオスにしたあと、何かまとめるテーマとなるもの――それはヴォーカル・メロディだったり、ギターの美しいパッセージだったりすることもあるんですけど。結果、すべてでカオティックさと美しさの均衡を保ってるというか、バランスを取っている気持ちが無意識的にあると思いますし、そこは4人で共通して持っているものだと思います。

-そこが、僕が全編を聴き終わったときに涙しそうになった、"感動"というものにも繋がっているんだと思います。

田村:シャウトで終わるだけの曲も考えたことがあるんですけど、結果そうはならないし、どこかでバランスを取らなきゃいけないんだなと思いますし。"ここでクリーン・ヴォイス入れればいいじゃん"というのは、改めてディスカッションするんじゃなくて、軽いノリで出てくるアイディアなので、意外とそういうところが大事なんだろうというのは感じています。

加勢本:やっぱり、このバンドの根底にあるのは歌モノだと思ってて。インストの曲とかも本当はやりたいんですけど、ヴォーカルを推していきたいというのがこのバンドでは重要で。演奏面でもいろいろアイディアはあるんですが、歌を立てるっていうところにこだわっていきたいというのは思っていて。

山里:"ご褒美パート"の話が出ましたが、僕のイメージとしては"トンネルを抜けた先に美しい景色が待っていた"みたいな感じで。全編聴き終えて感動してくださったのは、終着駅に辿り着いたということだと思いますし、曲は旅のようなものだなと考えているんです。

-映画に例えると、ハッピー・エンドとなる美しい景色が待っていたということですよね。

山里:「Protopterus」だけで言うと、イントロのマイナーな部分と最後のメジャーな部分って弾き方が一緒なんですよ。最初の段階では、冗談で"そこから明るいメジャーのまま、同じフレーズをもう10分やって、マイナーで終わったらきれいに繋がるよね"って話していて(笑)。それは今からでも遅くないと思ってるんですけど。

加勢本:"プログレッシヴ=実験的"っていうのが根底にあるので、最後にきれいに終わるっていうのもいいですけど、次は暗いまま終わるという実験をしてるかもしれない(笑)。

-わはは。1曲25分みたいな曲をメジャーでシングル・カットするとか実験的ですし、それこそ痛快ですけどね。

田村:それはぜひやってみたいことですね(笑)。

加勢本:今回はきれいにまとまったかもしれないですけど、前衛的で実験的で、予定調和でないことがプログレの良さですから。

-やりたいことをコンパクトに詰め込みながら、自分たちらしさもしっかり出してという今作も、過去作品から考えたらひとつの実験ですから。これはこれでひとつ成功例を作りましたから、次は新たな実験をしてもいいかもしれないですね。では、今作からそれぞれ1曲ずつお気に入りの曲と、その理由を聞かせていただきたいのですが?

山里:僕は「Patient of Echo」ですね。それまで作ったきた曲と比べたとき、最初にプログレ感を出せたのがこの曲で。LED ZEPPELINとかQUEENとか大好きなので、ああいったドラマチックな展開があって、きれいに終わる曲ができたらいいなと思ってて、この曲ができて。バンドの方向性も固まったかなと思うし、当時のバンド仲間に"ヤバい曲作っちゃった"って言ってた覚えがあります。それぞれのバックボーンがありながら、バンドの走りとしてはニューメタルとかが軸になっていたんですが、こういった曲ができたのが15年前で。最新の曲と並べてみたとき、オリジナルからアレンジはしてますけど、今に繋がるプログレッシヴな方向性があの頃からあったんだなという確認にもなりましたね。

加勢本:自分も山里と似てて、「Protopterus」が一番プログレ感が出せてるなと思って。中間のカオティックなパートから、後半に向けての美しい展開とか、めちゃくちゃプログレっぽくて好きですね。最初はもっと短くて、"ノリが一緒だから変えてみよう"ってややこしくなっていったんですが、今の形に収まってすごく気に入ってます。

福里:僕は1曲目「Appetite」ですね。田村が他にもいろいろやることがあって、歌詞が間に合わなさそうになってしまったので、「Appetite」と「Obsidian Sugar」の歌詞は僕も手伝っているんですが、バンド内でいろいろあった時期だったので、"今感じてることを書こう"と思って。聴いた人がどう感じるかは別ですが、歌詞に僕の気持ちを詰め込むことができたので、思い入れは強いですね。

田村:そんなこと思って書いてたんだ(笑)。でも、その流れで言うなら僕は「Obsidian Sugar」が一番刺さるんです。シュンが組み立ててくれた歌詞から、僕が作詞して、ほぼほぼ共作みたいになっているんですが、歌詞もメロディもめちゃめちゃハマって。5分台の短めの曲に、プログレッシヴ要素とコンパクトさと歌詞の世界観としての軸と、すべてがバシッと決まって、僕の中ではサブリードくらいの立ち位置の曲になりました。

-最後に、アルバムを掲げてのライヴ[ulma sound junction One Man Live 2023 "INVISIBRUISE"]やツアーに向けてのヴィジョンを聞かせてください。

田村:ツアーも考えてるんですが、どんなバンドを誘おうか? と考えたとき、我々がこういう音楽をやっているからってところで、"こういうバンドともやってくれるんだ"と思ってもらえるような、いろんなバンドとやりたいと思いますし、そこでいい化学反応が起きればいいなと考えています。それと同時に、僕ら自身の新陳代謝も上げていかなきゃいけないと思っているので、僕らの音楽に賛同してくれる若手のバンドも呼んで、どんどん火を着けていければいいなと。その起爆剤となるアルバムができたと思っているので、ワンマンから始まって、ツアーでいろんなバンドと対バンできるのを楽しみにしてます。