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INTERVIEW

ulma sound junction

2023.11.28UPDATE

ulma sound junction

Member:田村 ヒサオ(Ba/Vo) 山里 ヨシタカ(Gt) 福里 シュン(Gt) 加勢本 タモツ(Dr)

Interviewer:フジジュン

シネマティックに激しく美しく。映画を観るようなめくるめく展開と壮大に広がる世界観、そしてその先にある感動。沖縄県石垣島出身の幼馴染み4人によるプログレッシヴ・ラウドロック・バンド ulma sound junctionが、メジャー1stフル・アルバム『INVISIBRUISE』を完成させた。アニメ"ラグナクリムゾン"のOPテーマ「ROAR」を含む、全10曲を収めた本作であるが、"シネマティックコア"を掲げ、予測不能な展開と耳に残るメロディが圧倒的世界観へと引きずり込む、独創的な楽曲たちは聴き応え抜群だ。痛烈なシャウトと轟音で始まる「Appetite」から、本作ラストに収録された11分弱に及ぶ大作「Protopterus」まで、アルバムの世界観を構築する楽曲たちや今作に込めた思い、メジャーへの意気込み、そして十分なキャリアを持つバンドの歴史について、メンバー4人にたっぷり話を訊いた。

-メジャー1stフル・アルバム『INVISIBRUISE』を完成させたulma sound junction。まずはアルバムが完成しての感想から聞かせてください。

田村:シングル・カットされた「ROAR」もあるなか、アルバム・コンセプトというのは本当になくて。今作は一曲一曲のベクトルがだいぶ違うんです。楽曲ごとにカラーがありすぎるので、どういったところで統一感を持たせられるか? っていうのは考えたんですが、それがどこまで表現できているかはわかりません。ただ、作品ができあがってきて、楽曲とジャケットが合わさったとき、そこまで統一感を操作しなくても良かったなというのは思ったし、逆にバラバラでいいんだと思いました。

-今回、全編新曲になるんですよね?

田村:4曲目の「Patient of Echo」はリテイク曲で。おそらく10年以上前に作った曲で、自主制作で作ったものには収録されています。

山里:2008年リリースのミニ・アルバム『patientaholic』だね、15年前の。

-歴史のある曲だったんですね! 全体のコンセプトを決めずに一曲一曲と対峙して作り進めて、楽曲が出揃ったときに曲順を考えるのもかなり大変だったんじゃないですか?

田村:曲順を考えるのはたしかに難しかったですね。今の曲順とは全然違う並びのパターンがあと3つくらいあったので。どれが正解か未だにわかってないです。

-僕が聴かせてもらっての印象として、一曲一曲が短編映画を観ているような、めくるめく世界観を見せてくれるんですが、ラストに収録された大作「Protopterus」はアルバム世界のすべてを内包する美しく壮大なエンディングを観ているようで、聴き終わったときに感動で涙しそうになりました。

田村:ありがとうございます。「Protopterus」で終わるというのはどのパターンも共通していたところで。シネマティックに考えるならば、エンディングから物語を作る映画監督もいるくらいなので。僕はこの曲が最後であれば、そこに至る曲順に関してはそこまで我を通すつもりはなかったです。

加勢本:1曲目は「Appetite」で、最後は「Protopterus」というのはなんとなく決まってて、中盤の流れを考えるのが難しかったですね。あとはここから、ライヴで演奏する自信がまだないんですよ(笑)。「ROAR」はすでに演奏していますが、それくらいで。長尺なのは「Protopterus」くらいで、俺らにしてはコンパクトにまとまった曲が多いんだけど。

田村:もともと6~8分台の曲が多いんで、たしかにコンパクトかもしれないね。

-それでいてこれだけ濃厚な聴き応えある作品になってますから、普段は6~8分で聴かせる内容をギュッと凝縮できてるってことですよね。

加勢本:はい。「ROAR」はこの短さにどう凝縮するか? どうやってうちらっぽさを出すか? っていうところがすごく難しかったですけどね。

-TVアニメ"ラグナクリムゾン"のOPテーマということで、アニメ尺の89秒の縛りもありますし、キャッチーさも求められます。

田村:メロディはいつも以上にキャッチーにした意識はありますね。ドラムに関しては、パートごとに手数の入れ方も意識的に変えたよね?

加勢本:"アニメにしては手数多いな"と思われるでしょうけど、狙ってはいます(笑)。メロディはキャッチーで、演奏面でうちらっぽさを出したいなと思って。

山里:「ROAR」はヴォーカル始まりなんですが、それはマストだと自分は思ってて。初めて聴く人がたくさんいるなかで、イントロ始まりだと好みもあるので、聴く人が選別されてしまうと思うんですが、アニメが始まってすぐに歌が始まると、聴かざるを得ないというか。

-若いバンドも、スキップされないようにヴォーカル始まり、サビ始まりの曲が多いですからね。今の若い子って"タイパがいい"なんて言って、イントロもない短い曲が多いですけど、ulma(sound junction)の楽曲は真逆ですよね?

田村:そうですね。我々の骨組みというか、バックボーンにあるのは、まさに真逆の音楽で。長尺でゆっくり時間をかけて世界観を構築して、そのあとに放つカタルシスみたいな音楽を聴いてきたし作ってきたんですが、時代の流れもわかっているので、頭を使って考えて。瞬間瞬間で、どのカタルシスを使い分けるか? っていうのは今後の課題だと思うし、どっちもできるようになりたいです。

-メジャー進出してアニメのOPテーマもやって、いろんな人に聴いてもらうきっかけとなるメジャー1stフル・アルバムで自身のスタイルを貫いてるのが痛快だったし、若いリスナーも聴く機会がないだけで、「ROAR」で知ってアルバムを聴いた子は"こういう音楽もあるんだ!"と自身の価値観を大きく広げるきっかけになると思うんです。

田村:僕ら、プログレッシヴ・ロックをやってますけど、おこがましいですがプログレ入門編的な作品になってもらえれば一番いいなと思っていて。こういう音楽もあるんだぞっていう、プログレの沼にハマってもらえればというのは、期待するところです。

加勢本:「ROAR」が聴きたくてアルバム聴いて、「Protopterus」が同じアルバムに入ってるって、ギャップがものすごいですしね。

-山里さんは、アルバムができあがっての感想はいかがですか?

山里:"苦労した"ってみんな言いますけど、やっぱり大変でした。でも、できあがりのジャケットを見たときに報われた感じがありますね。アルバム・タイトルを付けたのは自分で、"INVISIBRUISE=見えない痣"って造語なんですけど。自分がタイトルからのヴィジュアル・イメージをデザイナーさんに伝えて、ジャケットをデザインしてもらいました。アルバム・タイトルの"INVISIBRUISE"は、小さい頃の痣が、大きくなると一緒に大きくなるように、僕ら4人も幼馴染みで小さい痣を抱えていたのが、今は大きな痣になってるという、ちょっとネガティヴな意味もあったんです。それをデザイナーさんがタロット・カードの"吊るされた男"をアレンジして作ってくれて。"受難を冷静に受け入れる"って意味があるらしいんですけど、逆位置にすると"前向きに前進する"ってポジティヴな意味もあるらしくて、すごくいいデザインになったと思います。

田村:そういう意味もあったんだね、知らなかった。

-メンバー同士で確認し合うという意味でもインタビューって大事ですね(笑)。バンド結成から約19年。吊るされた男じゃないですけど、受難を受け入れなくてはいけない時期もありながら、今メジャーのフィールドに打って出て、前向きな気持ちで前進できていると思いますが、変な話、このタイミングでメジャーの話がなかったとしても、この4人で音楽を続けるということは変わらなかったですよね?

田村:それはそうですね、きっと。マイペースにずっとやっていくでしょうね。今はマイペースにできない瞬間があるかもしれないですけど、マイペースな僕らのマインドは基本的に変わらないと思います。

-ulmaはプログレッシヴ・ラウドロック・バンドとジャンル分けされてますが、それって結果論で。4人が19年間、誰に遠慮することもなく好きな音楽をやり続けて、自分たちの音楽を追求し続けてきた結果、現在のスタイルに辿り着いた気もするのですが?

田村:そうですね。基本的にメイン・コンポーザーは僕で、編曲は4人でやってきたんですけど、だからこそ作曲に時間がかかってしまう側面もあって。今後は他のメンバー主体の曲も作っていきたいなと思っていて。全員音楽性も違うし。もう少し時間をかければ、僕以外の3人がメインで作曲してアルバムができるくらいのポテンシャルを持ってるので。僕らの中のパワー・バランスが変わることで、また全然違ったカラーを持つ楽曲もできるんじゃないかと考えています。ここまでもですけど、今後のほうが僕は楽しみで。下手したら、ポップスみたいなアルバムができるかもしれないですし、そうなってもいいと思うところもあるし。

-それくらいフレキシブルに考えてるし、バンドに可能性を感じているんですね。たぶん、ポップスみたいな曲が1曲できて、アニソンでヒットしても、"あいつら変わったな"にはならないと思うし。どうやったって、ulmaらしさは残ってしまうと思います(笑)。

田村:うん、そうでしょうね。今回のアルバムも"メジャーに行って変わったな"とは言われないだろうという自負があります。"ulmaってまだ10分超える曲やってるの?"とか言われたいので(笑)。

-"メジャー行ったんだよね? 大丈夫!?"って、心配されたりして(笑)。さて、お待たせいたしました。福里さんはアルバムが完成しての感想はいかがでしょうか?

福里:"やっとできた~"とホッとしました(笑)。今回は大変でしたし、曲が揃い切ってない状態で「ROAR」からレコーディングを始めて、できあがったばかりの曲を4曲録って、ちょっと空いてまた録ってみたいな感じで、1年スパンで録ったのでそれも大変でした。大きく分けると前半、後半みたいな感じで録ったんで、後半を録るときには前半の曲を忘れてるみたいな(笑)。

加勢本:だから、今は"ライヴでできるかな?"っていう不安もあって。期間が空いてるから、思い出すところから始めないと(笑)。

福里:あとはいろんな色の曲があるので、シャッフルで聴いても面白いと思いますし。

田村:この人(福里)はね、そもそもラウドロックを聴かないんですよ。

福里:そうなんです。フォークとかポップスが好きなので、プログレやラウドで聴いてるのはulmaくらいで。僕が聴けるくらいだから、いい入門編になってると思います(笑)。本当は僕、レコーディングしたあとのミックスとか立ち会いたくないんですよ。みんなと一緒に、11月29日の発売日に聴きたいんです。

-ただのファンじゃないですか(笑)。

田村:あはは。でも、やっぱりファースト・インプレッションって大事だと思うし、メンバーの中で一番バンドを客観的に見れる人間なので。こういう立ち位置の人間は必要です。あと、僕もこの作品は盤で持っていたいなと思って。昨今の作品はサブスクで聴けちゃうから、フィジカルは持っていない人も結構多いと思うんですけど、ジャケットもブックレットもめちゃめちゃいいものに仕上がってるんで、僕も早く実物が欲しくてしょうがないです。昔、TOOLの『10,000 Days』ってアルバムが出たとき、変なジャケットだったんですよ。歌詞カードが3Dで見えるレンズみたいなのがついてて、"何をやってるんだろう、この人たちは?"と思ったんですけど、時代を先読みしてたかはわからないですが、サブスクや配信でしか聴かない時代を風刺していたようにも感じて。僕らの作品も一助になればとは思わないですけど、CDという形態はなくなってほしくないと改めて思いました。