INTERVIEW
THE SLUT BANKS
2022.12.14UPDATE
Member:TUSK(Vo) 参代目ACE DRIVER(Gt) DUCK-LEE(Ba) GOD後藤(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
好き放題にブチかます、死霊軍団ロック・バンド THE SLUT BANKSの最新アルバム『Lucky & Rock』がここに到着! 始動から四半世紀以上の歴史を持つ彼らが、約2年ぶりに放つ今作は、ベーシストにしてコンポーザーであるDUCK-LEEの趣味性が、これまで以上に色濃く反映された内容へと仕上がることに。結果、ここにはハジけたロックをベースにモータウンや日本の70年代歌謡曲など、いい意味で雑多な要素をコンフューズすることになったようだ。どこから聴いてもTHE SLUT BANKSらしい一方で、これまでのTHE SLUT BANKSにはなかった華やかな要素も含んだこの1枚は、実に贅沢なつくりのものだと言えよう。
-THE SLUT BANKSとしては約2年ぶりとなるフル・アルバム『Lucky & Rock』がついに完成いたしましたが、今作に向けては、そもそもどのようなヴィジョンをバンド内で練られていくことになったのでしょうか。
DUCK-LEE:最初はこれといってなかったんだけど、作っていくうちに無駄なものはどんどん省いていくようになって、方向性的には曲なんて3分もあればいいやん! っていう感じにはなっていったね。「ガイライヤマイ」とかライヴでちょくちょくやってる曲も入ってるし、曲を作ること自体は好きだからある程度はコンスタントに作ってもいたんで、内容としては約2年の間に積み重ねてきたものがここには詰まってます。
-では、歌詞の面についてはいかがでしたか。
TUSK:まぁ、未だにウイルスうんぬんの時代でもあるんでね。書く詞の内容としては、どうしても全体的に"前に行こうぜ!"って雰囲気にはなりにくい悶々としたところがあったのは事実なんで、そこはリアルに描いていくことになったかな。詞の面でも、まさにここまで約2年の日々が凝縮されてるところがあるかもしれないです。
-では、各パートの見地から、今作『Lucky & Rock』をレコーディングしていくにあたり重視されていたのはどのようなことでしたか。
GOD後藤:このバンドの場合、結構自由にやらせてもらってる曲もあるにはあるんですけど、当初からDUCK-LEEの中でイメーシが固まってる曲もわりと多いんで、そこをどれだけ再現できるのかっていうのが自分にとっては勝負でしたね。そのへんは前回のアルバム(2020年リリースの『Rock'n'Roll to the MAX』)を作っていくときとある意味では一緒だったとも言えるし、でも前回があったからこそ前回の経験を生かしていくことができたレコーディングだった、とも言える気がしてるんですよ。前回よりも慣れた状態でやれたという違いはありました。
ACE DRIVER:僕も基本的にはGOD(後藤)と一緒で、DUCK(-LEE)が理想とする音やアレンジをどれだけかたちにしていけるのか? というのが自分の仕事だと思ってましたよ。その点は毎回おんなじはずなんだけど、でもこれが実際にやっていくとなかなか難しいっていう(笑)。フレーズなんかは家で考えて来てもいいけど、曲ごとに使う音色やギターも違ってくるわけだし、現場でそのときの雰囲気や空気感を捉えたうえでレコーディングしていかないと、本当の意味でのいい音は録れないっていうのは今回もありましたね。とはいっても、まだまだ至らないところが大半なだけに大変なんですよ。毎回がほんとチャレンジの連続でした。
DUCK-LEE:俺も同じく(苦笑)。未だに至らないところが多いから、レコーディングって難しいもんだなと毎回やってて思います。
-THE SLUT BANKSほどのキャリアを誇るバンドであっても、そのように感じられるというのは実に謙虚でいらっしゃいますね。なお、今作には"なりふりかまわず突き進む暴走ロックンロール!!"というコピーが添えられているのですけれど、これは実際にみなさんのスタンスをリアルに表した言葉になりますか。
DUCK-LEE:今さら"ヒット曲を作ろうぜ!"とか"時代の寵児になってやる"とか、そんなのはあるわけないけどね(笑)。純粋に好きなことを思い切りやろうぜっていう気持ちでやってるだけです。
-そうしたなか、今作のオープニングを飾るのはそれこそ思いきりのいいドッカン系爆裂サウンドと、悶々とした現状に対する閉塞感を打破するような歌詞が交錯する、豪快なロック・チューン「ぐにゃり」です。THE SLUT BANKSここにあり、という強い主張をこの曲からは感じることができました。
DUCK-LEE:まずはこういうのやっとかないと、古くからのTHE SLUT BANKSファンは安心してくれないからさ(笑)。音も派手で、メロディもはっきりしてて、というウチのバンドの得意技が詰まってます。
-やさぐれ感はありつつもポジティヴな姿勢を感じる、この歌詞の絶妙なサジ加減もまたTUSKさんならでは素敵ですね。
TUSK:絶望的な状況をあえて嗤うような感じにしたかったし、特に後半のほうには半ば強引にポジティヴなフレーズをブチ込んでいったんですよ。もちろん、歌でもこの曲では力強いところを表現していくようにしました。
-それから、今作でのリード・チューンとしては、「ラッキーROCK」と「ワンカップ」の2曲が選ばれているようですが、こちらをピックアップすることになった経緯についても教えていただけますと嬉しいです。
DUCK-LEE:俺としてはなんでもよかったんですよ。むしろ、どれにすればいいかわかんなくて困っちゃったから、レコード会社の人に相談して決めた結果、「ラッキーROCK」と「ワンカップ」の2曲になったっていうことですね。
-では、ここからはまず「ラッキーROCK」についてうかがってまいりましょう。こちらは、アルバム・タイトルである『Lucky & Rock』とも密接な関係にある楽曲なのだと思われますが、サウンドとしては、ロックを基盤に懐かしいソウルやモータウンのニュアンスも滲ませた作りになっているところが、かなり特徴的だと感じました。
DUCK-LEE:そうそう、自分の好きなものや10代の頃に刺激を受けた音楽とかをここにも入れちゃいました。ABBAみたいなピアノの音とか、女性コーラスも入れてとことんポップにしましたね。もともと流行りもんは好きだし、最近はサブスクが便利だから新しい音楽もあれこれ聴くんだけど、1975年くらいに流行ってた音楽って今聴いてもいいなと改めて思っちゃう自分がいるんですよ。そういう感覚を生かしながら作ったのがこの曲です。
-そんな「ラッキーROCK」の歌詞について、TUSKさんは何をテーマにまとめていくことにされたのですか。
TUSK:曲が明るいトーンだったので、まずはこういうわかりやすいタイトルを付けました。そして、詞の中身でも"ラッキー"とか"ロック"って簡単なワードを使いつつ、それにプラスしてリアリティとか毒々しさも交ぜていった感じですね。
-ソウルやモータウンの要素が入っているだけに、この「ラッキーROCK」はリズムのアプローチが他の曲とはまた違ったと思いますけれど、ドラマーとしてはどのように対峙されていかれたのでしょうか。
GOD後藤:THE SLUT BANKSでは、ドラムの叩き方やタッチの具合が曲調に大きく左右されることって意外とないんですよ。ただ、今回のアルバムでは、前作よりも曲ごとのチューニングを差別化するように意識していったところはあるので、そこで音の変化が出たところはあるんじゃないかと思います。「ラッキーROCK」に関しては、他のロックでハジけた曲たちよりもタイトさのある音づくりを狙いました。
ACE DRIVER:R&Bとかソウルは僕も大好きだから、この曲は弾いてて楽しかったですね。とはいえ、別に本物のモータウンみたいにやる必要はないと思ってたし、THE SLUT BANKSの曲である以上はガンガンいかないと意味がないんで(笑)、これはちょうどいい感じでかたちにできたんじゃないかと思います。このバンドでこういうリズムの曲をやるってなかなかないから、すごく面白かったですよ。
DUCK-LEE:黒人離れしたモータウンになったよね(笑)。
-日本人のロック・バンドならではなオリジナリティがあって最高かと。
DUCK-LEE:そうね。自分は全然そっちの出身じゃないから、モータウンっぽい曲を弾くってちょっと難しかったけど、別にこういう曲だからってAmpegの古いアンプとか使うとかはしてないし、その必要もないと思ってたんですよ。逆に、こういうポップでゴージャスな曲に、太くてロックで凶暴なベースの音を重ねることでいい音を作ることができたんで、僕としては非常に満足してます。
-また、アルバムの構成としては、モータウン調の「ラッキーROCK」から次の「RAIN CAT」への流れが、なんとも乙だと感じます。いわゆる70年代を風靡したゴーゴー(ダンス・ミュージック)のテイストや、懐かしい昭和歌謡曲のムードが渾然一体となった仕上がりが絶品です。
DUCK-LEE:でしょ? 今回そこの流れは俺的にすごくオススメなんですよ(笑)。
TUSK:そこの感覚をわかってもらえるのは嬉しいですねぇ。
ACE DRIVER:たぶん、このあたりはみんなも聴いててグッと来るんじゃないかなぁ。僕もここの流れ、ほんと好きですよ。
DUCK-LEE:あと、これはTUSKの歌い方がエロいのもいい(笑)。
-かと思うと、曲順としては前後しますが、「SWEET GIRL」のようにスリリングなロックンロールも楽しめるのが、このアルバムの楽しいところですね。
DUCK-LEE:あれはアゲアゲで強烈なのが欲しくて作った曲ですね。
-また、この「SWEET GIRL」でのギター・ソロは"酔いどれ感"があって、そこがとても味わい深かったのですが、あれは......。
ACE DRIVER:あのソロは僕じゃなく、首振りDollsのジョニー・ダイアモンド(Gt/Vo)がゲスト参加して弾いてくれてるんですよ。
TUSK:この曲はそこもポイントだもんね。鋭い!
DUCK-LEE:俺、アイツのギターが好きでさ。厳密に言うとリズム感としては外れてるんだけど、ああいうギターをいい具合に弾くってなかなかできないことなんだよ。俺はIGGY POPのやってたTHE STOOGESとかも好きだから、THE SLUT BANKSでそれをちょっとやってみたかったの。でも、あれはドラムが大変だよね? "最初から最後までとにかくずっと叩き続けろ!"って俺は言ったけど。
GOD後藤:いやもう、今回のアルバムの中では一番ドラムは大変でした。
ACE DRIVER:ずっとドラム・ソロ状態だもんね。
-言うなれば暴れ太鼓の如く、醍醐味に溢れるカッコいいロック・ドラムが響き渡り続けていて痺れますよ。
GOD後藤:右手が動きっぱなしなんで、ライヴでもこの曲のときは必ず右手が終わります(笑)。でも、あれをカッコいいと言っていただけるなら頑張ってやった甲斐がありました。良かったです。
-アゲアゲで強烈な「SWEET GIRL」は、それでいて詞に大人っぽい色気が含まれているところも刺激的です。ここで描かれている女性像は、もしや"ルパン三世"の不二子(峰 不二子)ちゃん的なイメージだったりして?
TUSK:当たってます。当てられると怖いな(笑)。これは自分の好きな女の子像を思い浮かべながら、それをガンガン言葉にしてフレーズをブチ込んでいった詞でしたね。もしかしたら、曲とタイトルのイメージにギャップがあるって感じる人もいるかもしれないけど、俺の中ではこれ以上ないっていうくらいにどマッチしてます。
-いわゆる王道的なロックンロールとしての存在感が強い「いびつな飛行船」も、このアルバムにおいて欠かせないものとなっておりますが、こちらはどのような背景を持って生まれてきたものでしたか。
DUCK-LEE:これは、イントロのギター・リフが気に入ってるんだよね。
ACE DRIVER:レコーディングではDUCKもギターを弾いてくれてました。
DUCK-LEE:簡単なフレーズで説明するのがめんどくさいときはたまに自分で弾いちゃうんですよ。これもそのパターンでしたね(笑)。
GOD後藤:リズム的には、ライヴでやってたときよりもゴリゴリなだけじゃない緩急がついた気がします。1曲の中で抑揚をつけていくように叩きましたね。