INTERVIEW
THE SLUT BANKS
2022.12.14UPDATE
Member:TUSK(Vo) 参代目ACE DRIVER(Gt) DUCK-LEE(Ba) GOD後藤(Dr)
Interviewer:杉江 由紀
-ちなみに、この"いびつな飛行船"という不思議なタイトルは、どこから湧いて出てきたものだったのでしょう。
TUSK:曲を聴いてのイメージから生まれたものですけど、俺の中では"いびつな飛行船"っていう名前のラヴホテルとかあったらいいなぁと思って。
-昨今はこ洒落た横文字だらけですけれど、昭和の時代は"やんちゃな子猫"だの"気まぐれポニーテール"だの、謎の名前が付いたラヴホがありましたものねぇ。
TUSK:うん、そういう昭和な感じが"いびつな飛行船"にもあるでしょ? これはそんな雰囲気の曲ですね(笑)。
-そこから一転して、今作中では唯一と言っていいハード・ロック的なサウンドを堪能できるのが、「JUMPIN' TRIPPIN'」です。
DUCK-LEE:知ってる人は知ってると思うけど、RITCHIE BLACKMORE'S RAINBOW(RAINBOW)というバンドがありまして、ネタバラシするとこの曲に入ってるのは「Kill The King」のイントロなんですよ。
-オマージュをされているのですね。
DUCK-LEE:昔、来日公演に行ったときに1曲目でやったのが当時未発表だった「Kill The King」でさ。なんてカッコいいんだ! って子供心に血が騒いだんですよ。だけど、今の時代だと昔のハード・ロックとかってダサく感じるところもあるじゃん? 音楽としてはカッコいいんだけど、なんか総じて昔からのハード・ロック・ファンってパッとしないのよ。だから、俺としては今までRAINBOWが好きだとかRitchie Blackmore(RAINBOW/ex-DEEP PURPLE/Gt)が好きだって堂々とは言えないところがあって、それよりはNEW YORK DOLLSが好きとか、AEROSMITHが好きって言っておきたいところがあったわけ。そっちのほうがカッコいいから!
-なんとなく、そのお気持ちはわかります(笑)。
DUCK-LEE:だから、俺はずっとRAINBOWやRitchie Blackmoreが好きっていうのは隠してたんだけど(笑)、TUSKなんかは"IRON MAIDENが好き"とか平気で言うんだよね。それを見ててもっと自分に素直になろうかなとも思ったし、今回のアルバムには自分が昔から好きなものをいろいろ要素として入れてるから、ここはハード・ロックも解禁しようとなりました。あくまでもハード・ロックで、ヘヴィ・メタルではありません。
-そのハード・ロック感を醸し出していくうえでは、ドラマーとしての役割も相当に大きかったのではないですか?
GOD後藤:醸し出す以前にこれは実を言うと自分が本来的に最も得意とする分野だったので、特に何かを意識することもなく自由に叩かせてもらいました。
DUCK-LEE:世代的にはCozy Powell(ex-RAINBOW/BLACK SABBATH etc.)とか知らないんだろうけどね。でも、Cozyっぽく叩いているなと思った(笑)。
GOD後藤:聴きかじりくらいの知識でだったら知ってるのと、あとはCozy PowellとかBonzo(John Bonham/ex-LED ZEPPELIN)とかに影響を受けたドラマーからの影響は受けてると思うんで、そこで必然的に繋がってるっていうのはあると思います。
-そうして脈々と受け継がれていくものがある、というのは素晴らしいことですね。
ACE DRIVER:ギターもこれはオマージュという意味で、シングルコイルのギターを使ってそれっぽくデケデケ弾いてます。
-様々なアーティストに対する敬愛がそこここに溢れるだけでなく、このアルバムでは、DUCK-LEEさんならではの作曲センスが存分に生かされた楽曲「カミカゼドローン」を聴くこともできます。これはファンの方々の間での愛称でもある"おいちゃん"節的なポップ・センスが全開な雰囲気ではありませんか。
TUSK:あははは、たしかに(笑)!
DUCK-LEE:でもね、ここだけの話でサビの部分はOlivia Newton-Johnの「Xanadu」だったりもするんですよ?-追悼(※Olivia Newton-Johnは2022年8月に逝去)の意思を込められたのですか?
DUCK-LEE:いやいや、そんなんじゃなくて。曲を作ったのは彼女が亡くなるより全然前だったんだけど、亡くなったときに"好きだったんだよなぁ"ってYouTubeで懐かしい映像を観てたときに、初めて気づいたの。「カミカゼドローン」の最後のとこだけ、なんか「Xanadu」に似てるって!
TUSK:本人いわく偶然の一致らしいです(笑)。
DUCK-LEE:好きだったから染み込んでたんだろうねぇ(笑)。
TUSK:それなのに、歌詞とかタイトルとかOlivia Newton-Johnみたいにならなくてすみません。爽やかにはしたけどシリアスな感じになっちゃった。
-この「カミカゼドローン」の詞は現在の世界情勢とも重なる内容に感じられます。
TUSK:今回のアルバムは全体的に時事ネタが多いんだけど、たしかにこれもそうだね。
-だとすると、今作における時事ネタの極みは「ガイライヤマイ」でしょうか。
TUSK:この曲は今回のアルバムの中で一番古い曲だから、ちょうどコロナが流行った初期の頃の曲で、作り手側としてそれを今さら世に出すっていうのはこっ恥ずかしいところもあるんだけど、これは約2年ぶりのアルバムだし、なかったものにするわけにはいかないし、記録として残しておきたいので、やっぱり入れておこうとなりました。
-アルバムの構成としては、そこからの「ワンカップ」がシュールでいいですね。聴こえ方としては、これもリード・チューンでもあるせいか、THE SLUT BANKS流の極上パーティー・チューンとして感じられました。
ACE DRIVER:パーティー・チューン! そのワード、ヤバいですね。響きが懐かしい(笑)。
TUSK:いいなぁ。そのパーティー・チューンっていう表現、すごくいいですよ(笑)。
DUCK-LEE:俺はこの"ワンカップ"っていうタイトルが大好きだね。TUSKから初めて聴いたとき、最高じゃん! って思ったもん。何年か前には"缶BEER"っていう曲(2014年リリースのフル・アルバム『ロマンス』収録)もあったけど、いよいよワンカップの領域かよって(笑)。
-ビールにはまだ爽快感がありますけれど、なんともいえない庶民感、大衆感が出てきたところが粋ですね。
DUCK-LEE:お洒落感はなくなったよね(笑)。そういえば、これMVをこれから撮るんですよ。劇画風というか映画調の感じになると思うんで、完成したらぜひ観てください。
TUSK:このところ東映じゃなくて"骨映"としてMVがシリーズ化してて、その最新作ですね。イメージ的には良く言えば高倉 健とか昭和仁侠モノな世界を繰り広げてます。
-かくして、このアルバムの最後を実質的に飾るのは「血流あげろ」になりますが、これはフィナーレとして華やかなものになっておりますね。
DUCK-LEE:これもわりと前面にポップさを出したかった曲で、あの女性コーラスを入れたことでより華やかさを出せたんじゃないかと思います。
GOD後藤:ドラムに関しては、GREEN DAYのTre' Coolが叩いてる「Holiday」とか「Minority」みたいな、3連の曲をちょっと意識しました。
ACE DRIVER:ギターはもう、意図的にざっくりとシンプルにしました。そして、個人的にはこの"血流あげろ"っていうタイトルがいいなと思ってます。健康の源はやっぱりそこからですからね。
TUSK:この詞の中で描いているのは江戸っ子の祭ですよ。女の人が、男の人に火打ち石を打って"行ってらっしゃい! 好きにしてきていいけど、そのかわりウチんとこに帰ってきな"って言ってるようなイメージです。
-なお、配信などではここまでとなるものの、CDではこのあとに「どうにもならねぇよ」と「殺るのか殺られるのか」の2曲が続きます。まず、前者はTHE SLUT BANKS流のブルースと言っていいでしょうか。
ACE DRIVER:だいぶ聴き応えのある曲になってますね、これは。
DUCK-LEE:あのイントロのベースとギターのカッティング、カッコいいでしょ?
TUSK:そこもいいけど、エンディングのメロは変わらずコードは変わっていくあの流れも最高じゃない?
GOD後藤:他の曲にはない良さがありますよね。
DUCK-LEE:でも、サブスクでは聴けないんだよなぁ(笑)。今の時代、CDを買ってくれる人の存在って貴重だからさ。その人たちへの感謝も込めた2曲が、「どうにもならねぇよ」と「殺るのか殺られるのか」なんですよ。
-「殺るのか殺られるのか」は今作中で最も殺伐とした暴走ぶりが秀逸ですし、これら2曲が加わることで、作品の奥行きやボリューム感がさらに増しているのは間違いないと感じますので、ファンの方にはぜひCDを入手していただきたいところですね。それぞれ両極端なTHE SLUT BANKSの真髄な部分が込められている2曲だとも思いますし。
TUSK:真髄ときますか! でも、結構そういうところあるかもなぁ。
DUCK-LEE:そうね。もちろんサブスクでも楽しんでもらえるようには作ってるけど、買って聴いてくれた人にしかわからない楽しみっていうのは実際あるかもしれないです。
-では最後に、このアルバムに"Lucky & Rock"というタイトルを付けられた理由もぜひ教えてください。
DUCK-LEE:今回はこれまでからすると結構ポップな要素も入った作品だし、アルバムのタイトルもキャッチーな感じにしたかったんですよ。俺、ギャンブル好きだからラッキーっていう言葉も好きだしさ。でも、ポップなところはあるにしてもロックなアルバムであることには間違いないんで、だったら"Lucky & Rock"がいいかなと。なんかこんな名前の犬とかいそうだけど(笑)。
TUSK:ラッキーとロックの2匹ってこと? そういうご家庭があったら、ぜひ遊びにお邪魔したいね(笑)。