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INTERVIEW

BURY TOMORROW

2020.08.25UPDATE

2020年09月号掲載

BURY TOMORROW

メンバー:Daniel “Dani” Winter-Bates(Vo)

インタビュアー:菅谷 透

-「The Grey (VIXI)」についてもうかがいます。"VIXI"というサブ・タイトルが付いていますね。

あれは曲の中ではV-I-X-Iと歌っているけど、"ヴィクシー"と発音するんだ。ラテン語で"I have lived(私は生きた)"を意味する。今際の言葉や、戦地に赴く兵士が使う言葉みたいな感じだね。世の中で精いっぱいやったという感じに使う。曲全体はメンタル・ヘルスに苦しんでいるときに、自分がもうこの世にいないような気分がすることを歌っているんだ。かなりダークな題材だけど、取り上げるのは大事なことだ。メンタル・ヘルスのダークな面から逃げちゃいけない。ここでは大丈夫な状態の話をしているわけじゃないんだ。そういうダークなところにいるときはどんな感じがするか、そしてそれでもどうしてやっていけるのか、について歌っている。そのほうが単に"俺は生きた。大丈夫"と言うより優美な気がするんだ。未来を構築することができなくたっていいし、自分の今の状況にハッピーでなくてもいい。

-この"VIXI"は"I have lived"の意味とのことですが、"I have survived(私は生き延びた)"という意味で使うことはあるんでしょうか。矛盾しつつもダブル・ミーニング的な感じといいますか。

うーん、あるとは思うよ。ポジティヴとネガティヴの間に位置する言葉ではあると思う。ものすごくポジティヴな意味で使うこともある気がする。"俺は生き延びた、乗り越えた"みたいなね。ただ、歴史的には常に"もう十分生きた"的なニュアンスがあるね。または"これからやってくること(=死)の覚悟ができている"みたいな感じだよ。

-「Better Below」では、まさに人生のどん底にいるような重々しい歌詞が綴られています。MVも水中のシーンが「Cannibal」との関連性を感じますが、この曲のテーマについても教えていただけますか?

(笑)ある意味どの曲も繋がっているような感じだからね。メンタル・ヘルスについて率直に語ることができないというのは息苦しい気分だったし。一番話しづらいのは水の中にいる時ということで、自分自身の感情が水の中に沈められている様子を表しているんだ。しゃべったり叫んだりできないことを一番わかりやすく表せるのが、水の中にいる状態だからね。地面に生き埋めだと、もっと残酷な図が画面で展開されてしまうし(笑)。「Better Below」はとてもあからさまで正直な曲なんだ。実はアルバムの中で最後に書いた曲でね。いろいろな感情を歌詞に乗せて......最後に録音した曲でもある。これの前に9曲――10曲だったかな――できていて、メンタル・ヘルスに関する自己卑下の曲をあれだけ作ったあとで、俺自身について、俺がメンタル・ヘルス上どんな経験をしてきたかについて書いた曲だったから、ものすごくダークになって。でもそのあからさまさが気に入っているよ。あの曲のおかげで本当にたくさんの人と繋がることができているわけだからね。

-あなたのダークな時期の集大成という感じですね。この集大成を作ることによってもとの自分に戻ることができたのかもしれません。

そうだね。アルバム全体がカタルシスをくれるものだったと思うよ。俺の回復テクニックはメンタル・ヘルスの話をすることだから、自分の書く歌詞もカタルシスを得る過程のひとつだったんだ。すべてが俺にとっては役立っているよ。

-「Gods & Machines」、「Voice & Truth」は現代の消費社会やSNSなどへの警鐘と言えるような歌詞が強烈です。どのような意図で楽曲を制作しましたか?

「Gods & Machines」は間違いなくそれだね(笑)。「Gods & Machines」はまさに消費者、消費主義、それが現実世界の生身の人間よりもスマホ、タブレットに繋がっていることについて歌っているんだ。オンラインやビデオの世界にハマってしまう最悪のスパイラルだね。俺たちは本来もっと自然や他人と繋がったりして、自分をサポートするメカニズムを築かないといけないのに。SNSを使うことが悪いんじゃない。俺だって毎日使っているしね。スマホを使うのだってなんら悪いことじゃない。ただそれが自分の人生のすべてになってしまうと、自分を難しい状況に陥らせることになるんだ。争いの時期や人との繋がりが欠けた時期に自分の感情が内に向いていると思ったとき、頼る相手がオンライン上にしかいないからね。そうすると難しい状況に陥るんだ。メンタル・ヘルス的に下がっているときに、必死でWEB上の誰かに繋がろうとしてしまうとか。でも、そういうときに必要なのはある程度の正常性やパーソナルな双方向性なんだよね。人に実際に会ったり友達と話をしたり......このご時世では難しいけどさ。自然に触れて世の中の美しいものを見ることも大切だ。世の中には美しいものが本当にたくさんあるから、それらに思いを馳せることは大切だしね。特に不安なときは自分の上に不安がのしかかってきてクレイジーな気分になるけど、森でウォーキングしたり、どこかの庭園に行ったりすることほどヒーリング効果があるものはないよ。瞑想の効果を信じていようといまいと、自然に触れることは生命体に一番有効なんだ。俺たちは自然に改めて触れる必要がある。――日本にも素晴らしい自然がたくさんあるだろう?

-そういう意味でも、このアルバムがこのクレイジーな時期にリリースされて良かったのかもしれませんね。警鐘を鳴らしてもくれますし、あなたの内面に触れることもできて、こういう時代に付随しがちな鬱々した気分を乗り越えるヒントにもなるような気がします。

ほんと、クレイジーな時代だよね。たくさんの人に言われたよ。"こういうことになるって予期してたのか?"なんてね(笑)。あまりにタイムリーすぎて。思うに、コロナ禍がきっかけで、世界中の人たちが自分自身の感情に思いを馳せるようになったんじゃないかな。誰もが"自分はこのクレイジーな状況についてどう感じているのか?"と思うようになった。今は誰もが苦しんでいるから、歌詞がみんなに届いて心を開くきっかけになるといいね。何しろパンデミックという次元で人々が通じ合ってしまうクレイジーな時代だから。

-「Dark, Infinite」はアルバムの中でも特にメタリックで、ドラマチックなリード・ギターも入った、アルバムを締めくくるに相応しい楽曲です。この曲についてもうかがえますか?

「Dark, Infinite」はふたつの解釈ができる曲だと思う。ものすごくダークな形とものすごく明るい形と。意図的にそうしたんだけどね。というのも、ポジティヴとネガティヴは紙一重だと思うんだ。ハイパー・ポジティヴもハイパー・ネガティヴも。メンタル・ヘルスに苦しんでいるときは、OKな状態とノットOKな状態のきわどい境界線をあっという間に超えてしまうことがある。「Dark, Infinite」はそういう機会のことを歌っている。ネガティヴなときは奈落の底で、どこかから飛び降りてダウン・スパイラルに陥ってしまうような気がする。でも正直でオープンでいる状態でも"ハーイ、みんな。俺はノットOKなんだ"と宣言して未知の状態に飛び込んでいくような状態は存在するんだ。怖いしダークな話だけど。もしかしたら反応がないかもしれないし、ひどいことになるかもしれないけど、そうすることによって、自分をサポートしてくれるネットワークを作ることができるかもしれないから。"自分はノットOKなんだ、みんなの助けが必要だ"って言ってね。

-ノットOKと言うのはOKなんだということですね。

そのとおりだよ。そう宣言するのはものすごく怖いことだけどね。ブラックホールの中に飛び込んでいくようなものだ。「Dark, Infinite」はそのことについて歌っている。どうなるかわからないけど、頭から未知の状態に飛び込んでいかないと、一生崖っぷちで暮らすことになってしまうからね。

-なるほど、ありがとうございます。依然として困難な状況ではありますが、今後の活動予定について教えていただけますか? 来年の4月にはライヴがあるようですが、近々では何かありますか。

今年のライヴはすべてキャンセルされてしまったんだ。もちろん、この先機会ができたらやるけどね、ショーは俺たちが一番得意なことだから。でも現時点では非現実的だな。例えばツアーをするとしても、この国はロックダウンされているけどこの国はされていないとか、そういうことを考慮しないといけないし、いろいろな国を巡ってウイルスをまき散らすのも嫌だしね(苦笑)。だから今年ツアーに出るのは非現実的な気がするんだ。来年になったら世界中でプレイできるような状況になるだろうと希望を持っているよ。来年は長い間プレイできていないようなところにも行けるいい年になるはずだ。

-裏を返せば、バンドがツアーに出られない間にアルバムをじっくり聴いて覚えて、それぞれのつらい状況も乗り越えて、元気でポジティヴな状態でツアーに臨むことができると思います。

(笑)そうなったら最高だよね。

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

もちろん! バンドとしても俺自身も日本が大好きなんだ。日本の何もかもが好きだし、地球で一番好きな国のひとつだよ。もう今すぐにでも行きたいくらいだね。また行けることになったらファンのみんなと最高の時間が過ごせると思う。それまでこのアルバムをしっかり聴いて楽しんでほしい。激ロックで俺たちの情報もチェックしてくれ!