MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

BURY TOMORROW

2020.08.25UPDATE

2020年09月号掲載

BURY TOMORROW

メンバー:Daniel “Dani” Winter-Bates(Vo)

インタビュアー:菅谷 透

みんなが自分の感情についてもっと語ることができれば、世の中はもっといい場所になると思うって心から信じているんだ


-資料によると、今作はご自身がメンタル・ヘルスに苦しんだ経験が反映されているようですね。アルバム全体のテーマや、差し支えなければ過去にどのような経験をされたのか教えていただけますか?

もちろん! ノー・プロブレムだよ。アルバム全体のテーマがメンタル・ヘルスに関するものだね。アルバムを出したときはみんな"メンタル・ヘルスのアルバムだね"と言っていたけど、どちらかというと"俺の"メンタル・ヘルスについてのアルバムなんだ。この曲は不安について、この曲は鬱について、と説明するのは俺的には不自然だね。そういう感じよりも、"俺は"こう感じた、という内容なんだ。それを他の人が聴いたら、"俺もそう感じた"と思ってくれるような。俺が各曲の"診断"について語るというよりも、メンタル・ヘルスに苦しんでいるときに感じていることそのものについて書いている。全曲そんな感じで、歌詞はJason(Cameron/Vo/Gt)にも手伝ってもらった。あいつに俺の心理状況を全部説明したら、それを持ち帰ってあいつの言葉で歌詞にしてくれたんだ。

-あなたがメンタル・ヘルスに苦しんでいた当時、メンバーはそのことを知っていましたか。それとも自分の中だけに留めていたのでしょうか。

いや、知っていたよ。でも俺が感情を歌詞にして初めてリアルに感じたところがあったみたいだね。文字にするとちょっとハイパーっぽくなるというか、クレイジーな状態がまざまざと伝わるものだから。歌詞の中には調子の悪いやつがとりとめもなく延々と語っているようなものもあるから、時にはリアル以上に表現されてしまうこともあるしね。兄貴(Davyd Winter-Bates/Ba)は同じバンドにいるしわかってくれていたけど、同じ部屋にいない限りは、その人の頭の中で何が起こっているかなんて正確にはわからないものだよ。長年連れ添ったパートナーだって、相手が本当は何を感じているなんてわかりようがない。もちろん鋭い推測はできるけど、その推測は会話の中でどう語っていたかに基づいているものだしね。俺にとってはバンドにいてショーをやっている間が"Safe Space"なんだ。他の4人、特に兄貴以外のJason、Jacko(Adam Jackson/Dr)、Daws(Kristan Dawson/Gt)はショーでプレイするときの俺しか見ていないから、俺のベストな状態しか見る機会がない。俺がメンタルを病んでいたときには会っていないから気づきづらいんだ。だから俺が歌詞を書いたときには、かなりショックを受けていたよ。

-そうですよね......。

みんなすごく感情移入してくれたよ。

-"気づかなくてごめん"みたいなことを言われたりとかは。

わざわざは言われなかったよ(笑)。困ったときはいつでも頼っていいというのが前からあったしね。みんなブラザーだし、もう長年の付き合いだから。ただ、ここまでひどい状態だったとは知らなかったからショックだったみたいだね。あいつらにとっては歌詞に耳を傾けるのもかなりヘヴィなことだったんだ。

-ファンとしても驚いた部分があると思いますよ。歌詞の中で自分を吐露するのは以前からやっていたことかもしれませんが、ファンの見るあなたはいつもエネルギッシュで勤勉で......という感じですから。でも、このアルバムを聴いたことで、あなたをより身近に感じるのではないでしょうか。

大事なことだと思うよ。音楽のファンというのはその音楽をやる人のファンでもあるから、ありのままの俺を見てもらえることはとても大事なんだ。弱さを見せることができるというのはね。みんなが自分の感情についてもっと語ることができれば、世の中はもっといい場所になると思うって俺は心から信じているんだ。そういう感情はとかく隠してしまいがちだし、石像みたいな、等身大より大きなもので塗りつぶしてしまいがちだけど、そうすると本当に人に手を差し伸べなければいけない大変なときに、そうできなくなってしまう。嘘の期待で自分を塗りつぶしてしまって、バンドとしてもひとりの人間としても身動きが取れなくなってしまうんだ。オフィスで働いていても音楽業界で働いていても同じだと思うけど、例えば今自分が、気分が悪いとする。それは判断されるのが怖いんだ。その判断は本物じゃなくて、自分が自分で描いた絵に過ぎないかもしれないのにね。

-一連のお話を聴いていると、あなたが"Safe Space Sessions"をやっている理由がわかる気がします。そのうえでこのアルバムを聴くと、"ああ、だからDaniはあんなに人に手を差し伸べているんだ"と気づくといいますか。もちろん、あなたは以前からそういう人だったとは思いますが......。

君の言っていることはわかるよ。まったくそのとおりで、人が自分に正直になれる機会作りをしたかったんだ。俺は"Safe Space Sessions"を始める2年前が最悪の状態だったから、始めたときにはいろいろ知識ができていた。メンタル・ヘルスとかマインドフルネス、瞑想、あとイギリスだったらどこに助けを求めに行けばいいのかとか、そういう知識だね。"俺はもう大丈夫だ。こういうふうに回復した。もしかしたら君もその方法でうまくいくかもしれない"と言えるようになって、それを実践するいい機会を"Safe Space Sessions"で作ることができた。回復するにはその人も俺みたいな感じの過程を通る必要があると知ってもらうのは、大切なことだと思うんだ。

-本当に素晴らしい行動ですね。今度は音楽的な話ですが、前作『Black Flame』に比べると、今作はどこかポジティヴな雰囲気を思わせるような曲調も感じました。これは意図したものなのでしょうか?

このアルバムはかなりユニークな作品だからちょっと解釈が難しいかもしれないね。歌詞的にはものすごくあからさまで、俺の言いたいことが率直に表れている。メタファーも使っていないし隠れているメッセージもない。人によっては前よりダークなアルバムと思うだろうし、前より明るいアルバムだと思う人もいる。その人の状況次第で受け取り方が違ってくるんじゃないかな。音楽的には特にJasonのメロディで、今までになかったくらいものすごくダークになる箇所がある。通常あいつはコーラスなんかでももっとハッピーな響きのある音を担当するけどね。でも、少しムードを上げる必要のある箇所もあったんだ。ものすごくダークなことを題材にしたアルバムだからね。日常的なことじゃない、ものすごくシリアスなトピックだから、音から何から全部ダークだとリスナーも聴くに堪えなくなってしまうと思ったんだ。

-音で明るい要素を取り入れようとしたんですね。

そう、そのとおりだね。

-今作では、グロウルだけではなく高音/低音のスクリームや、地声を混ぜたシャウトなど、表現の幅も広がっているように感じました。ヴォーカリストとしてどのようなことを意識しましたか?

今回いつもと違ったのは、手でマイクを持って歌ったことなんだ。というのも、俺はアルバムよりライヴのほうがうまく歌えているような気がするんだよね(笑)。それはいいことなんだけどさ、ライヴでうまいほうがいいから。逆よりはマシだ(笑)。マイクを持って歌うのは、特に感情を出すという意味でとても役立ったと思う。自分が歌うべきことをプッシュして出したという感じだったからね。高音のスクリームも、ライヴではアルバムのときよりよく出せるのはなんでだろうとずっと思っていたんだ。ライヴでは気分良くテクニックが使えるとか、そういうのもあるけど、自分に対する怒りなどの感情をぶつけるとき、こんなにブルータルな題材の歌を歌ったことがなかったから、手でマイクを握ると歌いやすかったね。それとは別に、俺は今までの自分を超えたい、もっとうまくなりたいといつも思っているんだ。それがスクリームでも、フロントマンとしてでも、歌詞を書くことであってもね。絶えず自身をアップグレードさせて、それまでよりいいものになっていこうとするのはバンドにとってとても大切なことだと思う。俺たちはサウンドを一新したいタイプのバンドじゃないし、完全に様変わりしたいタイプのバンドでもない。長い間これでやってきているから、今サウンドを変えようとするのはファンに対してひどい仕打ちになってしまう。だから今のスタンスのままで最高のメタルコア・バンドになりたいんだ(笑)。そのためにはそれぞれのパートがもっとうまくならないといけない。常にプッシュし続けることが大事なんだと思う。

-メンタル的にいろいろなことがあったのに、それを乗り越えたときに人間としてだけでなく、シンガーとしてもさらに進化していたとは素晴らしいですし、ファンにとっても勇気づけられることだと思います。

間違いなく大変な道のりだったね。でもその最悪の嵐のおかげで、こういういいアルバムができたんだと思う。俺たちとしても心からクールに思えるアルバムだからね。

-ここからは楽曲についてうかがいます。タイトル・トラック「Cannibal」は、繰り返しの日々の中で消耗されていくようなMVが印象的です。この楽曲について詳しく教えていただけますか?

あのMVは曲の内容をうまく擬人化していると思うね。人が落ち込む理由というのは誰かとケンカしたとか、失業したとか、結婚生活が破綻したとかそういうあからさまなものばかりじゃなくて、日常のありふれたことが鬱に通じることがあるものなんだ。未来を構築したり、向こう1時間、残りの人生で何をするのか見極めたりするのはものすごく難しいことだし、未来がないと思ってしまうとすごく危険な状態に陥ってしまう。そう思ってしまいそうな環境にいる人は世界中にたくさんいるんだ。俺にとっては、あのMVは仕事に行くとか友達と遊びに行くとか、飲みに行くとか、何でも鬱のきっかけになりうることをとてもうまく表していると思う。そこがすごく気に入っているんだ。あの曲はとても内省的で、世界がいかに人の心を蝕んでいるか、そして人がいかに自分自身を蝕んでいるかを表しているんだ。間違いなくタイトル・トラックに一番相応しい曲だね。アルバムの他の曲がどんな感じになるかを音楽的にも歌詞的にも示唆している曲なんだ。