僕たちの物語は、ここからまだ先へ続いていく

－どこか死を連想させるという意味では、シャラクさんの作られた「孤独氏」も相当ハッとさせらせるような楽曲です。

フクスケ：この曲並び、ちょうどいいですよね（笑）。

シャラク：なんでしょう。改めて考えると、自分ってひとりだなぁと感じてしまって。かといって、それがいいとか悪いとかそういうことでもないんですけど、結局は自分が動かないと自分が求めている答えは得られない、というか。"孤独氏"というタイトルにもそこまで深い意味を持たせたわけではなくて、言葉遊びなところもありつつですね。

－なおかつ、ここには"三人揃えばランララン"というメトロノームのことそのものを思わせる表現もありますね。"楽しく生きている"という言葉で締めくくられてもいるので、救いは間違いなくあると感じますが。

シャラク：そうですね。3人で楽しくやっています、ということではあるんですけど......それでも結果、死ぬときはひとりなんだよなぁって（笑）。

－そううかがってしまうと寂しい感じもしますが、曲調的に言えばこの曲はアルバムの中で最もアグレッシヴであり、かなり"激ロック"的ですよね。

シャラク：それがですね。再起動をしてからというもの、"その路線"をやりたいという気持ちが大きくなってきているんです。例えば、Fear, and Loathing in Las Vegasとか、FACTとか。この曲は、そのあたりのヘヴィさを取り入れながらピコピコさせつつ、オート・チューンがかかってるみたいな音にしたかったんです。でも、自分の中にはメタルという素養がまったくないので、これまではなかなかそういう曲を"これ"っていうかたちでは提示できなかったんですけど、意外と打ち込みでもかっこ良さげなギター・リフを作れることに気づいたんです。その結果、こういう曲ができました。

フクスケ：打ち込みで作っているだけあって、それを実際のギターで弾こうと思うとかなり人間離れしたフレーズになっているんですけどね（笑）。それでも、しっかりそこに寄せて弾いていきました。

－対して、そこからの「おやすみ世界」では、曲タイトルどおりに静かで柔らかな世界がじんわりと広がっていきます。曲を作られたリウさんとしては、ここにどのような想いを込められたのでしょうか？

リウ：僕らのライヴでは、シャラク君がキーボードを弾いたり、ドラムの方にエレドラを使ってもらったりする"テクノ・コーナー"というものがあるんですよ。この曲は、そこで映えるようなものにしたいと思って作りました。歌詞に関しては、こうやって長く音楽を続けてきたなかで、途中でやめていった方や、続けたくても続けられなかった方たちの姿を見てきているので、自分たちはとても恵まれているなとも思いますし、そういう人たちのぶんもさらに全力でやっていかなきゃな、という気持ちで書いたものです。

－この歌詞に漂うメッセージにも胸を打たれますが、ここでのギター・ソロも極めて胸アツです。ほとばしるエモさが素敵ですね。

フクスケ：ありがとうございます。このソロは何回か弾きながら、一番感情の高まった状態で弾けたテイクを選びました。

－かくして、今作を最後に締めくくるのは先行シングルの表題曲であった「弊帚トリムルティ」です。もしや、この曲が生まれた時点でこのアルバムの美しいオチとしての役割までをすでに考えていらっしゃったのでしょうか？

フクスケ：いやいや、そういうわけではなかったです（笑）。でも、「弊帚トリムルティ」から始まった今回のアルバム『廿奇譚AHEAD』は、"20周年を経た僕たちの物語はここからまだ先へ続いていくよ"という気持ちの入ったアルバムになりました。

－ちなみに、"初回生産限定廿メト"については『廿奇譚AHEAD』と"2018年再録ベスト・アルバム"との2枚組になるそうですね。できれば、リスナーの方には両方を聴いていただきたいところです。

リウ：『廿奇譚AHEAD』と並行しながら、昔の15曲を新録したんですよ。同時期にやっていたせいなのか、不思議な統一感が出て予想以上にいいものになりました（笑）。

フクスケ：1ヶ月くらいで、計26曲を録ったことになるんですよ。信じられないくらい忙しかったです（笑）。

シャラク：しかも、1曲あたり3回、4回と歌っているので僕は歌録りの1週間で100回以上歌ったことになります。終わったときは声がカスカスになっちゃってました。

－リアルに渾身の作品制作だったのですね。こうなってくると、今作を携えてのツアー"メトロノーム結成20周年全国巡礼 ヤプー三神・巡礼[ 05→98→18迄-7=20 ]"も、俄然楽しみです。猛暑に負けず、どうか良い旅を。

フクスケ：今回のツアー・タイトルは、メトロノームがツアーを初めてやったときと同じものなんですよ。20年経ってその先へと向かっているのはもちろんですけど、昔の気持ちもちゃんと忘れずにやっていこうと思ってます！