INTERVIEW
CHTHONIC
2013.05.21UPDATE
2013年05月号掲載
Member:Freddy Lim (Vo)
Interviewer:米沢 彰
-ニュー・アルバム『Bu-Tik/武徳』の完成おめでとうございます。完成してみての手応えはいかがですか?
俺たちは『Takasago Army』の曲は凄く気に入っていて、あれ以上良いものができるかどうか分からなかったんだ。でも結果的に『Bu-Tik/武徳』のために書いた曲は全く想像を超えて素晴らしいものが完成したんだ!今回、自分たちの限界を超える術を見つけたって感じだね。だから俺たちは今回の作品の出来栄えに凄く満足している。今はファンの皆がどれだけ今回の俺たちの新曲を気に入ってくれるか、とてもエキサイトしているよ。
-前作『Takasago Army』のリリースから今作のリリースまではどういった活動をしていたのでしょうか?
北アメリカ、ヨーロッパ、イギリス、それからもちろん日本でツアーをしたよ。前回のツアーでは今まで行ったことない国にも行ったんだ。例えばインドネシア、韓国、ポルトガルとかね。日本からツアーを始めて、また最後に日本に行ってツアーを終えたんだ。これは高砂義勇隊にとっても俺たちにとっても凄く意味があることだったと思う。これがただのコンセプト・アルバムであっただけでなく、このツアーがコンセプト・ツアーになったんだ。そして2012年夏のヨーロッパ・ツアー中から『Bu-Tik/武徳』のための曲を書き始めた。
-今作もまた台湾の歴史を扱ったコンセプト・アルバムということですが、簡単にストーリーなどを教えて頂けますか?
『Bu-Tik/武徳』では台湾の歴史にある数々の暴動の様子を見る旅をすることになる。そして皆の心の奥深くにある反乱の力を駆り立て、深く隠された答えを掘り起こす。物語の終わりまで聴く者を探究の旅を体験してもらうことになるんだ。暴動のシーンは刑務所を乗っ取った暴動、シップ・ジャックの後の酒盛り、暴君に向けて撃たれた弾丸、政権を建てた名声、絶望的な脱出などだ。そしてこのアルバムが強調しているのは“正義のための暴動と正当な防衛”なんだ。
-アートワークは過去というよりも未来志向のようにも感じましたが、このコンセプトはどのようなものだったのでしょうか?
アートワークは前作と同じオインク・チェン(陳仰德)で、彼は“武装すること”をテーマに老人とアルビノの女性と子供を1人ずつモデルとして選んだ。老人、アルビノの女性、子供ですらも武装すべきだ、というのがコンセプトだ。
-あなた方は台湾という地政学的にも微妙な地域出身でありながら、そのコンセプトに自らの民族の歴史を多く扱うという姿勢に対して尊敬と共に危うさも感じてしまうのですが、そういった重いテーマを扱おうという意思はどのようにして持たれたのでしょうか?
俺たちは台湾に住んでいるから、台湾の歴史や物語、神話に対してとても強い感情を持っているんだ。だから俺たちにとってそれらのことについて書くというのはとても自然なことなんだよ。既に俺たちの心の中に深く根付いているものだからね。
-前作までと比べて、CHTHONICらしいオリエンタルなサウンドは一貫しながらも、複雑なリフが減って、シンプルなフレーズが増え、純粋なCHTHONICのサウンドがより浮き彫りになっているように感じました。ご自身ではそういった意図はありましたか?
最初は『Bu-Tik/武徳』の曲も『Takasago Army』の曲のように複雑だったんだよ。でもデモの音源を作っている段階で編集を進めていったら結果的にシンプルに仕上がったんだ。全体的に前作よりシンプルにしようという意図が自分たちの中にあったかどうかは確かじゃないんだけど、自分たちの音楽をアップグレードしようと日々試行錯誤して作り直していって、結果出てきたものがこれだったんだ。
-今までにも増してバックに参加している楽器が更に増えていますね。Track.8「Set Fire To The Island」では金管楽器までバックで使われているようですが、今回のレコーディングで使われた楽器をすべて教えて頂けますか?
ヘナ・バイオリン(胡琴)や箏(コト)以外ではチベタン・ベル、シャンハイ・オーボエ(Rage of my Sword)、ムーン・ギター(Supreme Pain to the Tyrant)だね。最後の2つは今回初めて使った楽器だよ。
-これまではオリエンタルな響きに哀愁が強く感じられていましたが、今作ではむしろ明るさや清々しさすら感じられました。今作の制作上で何かこれまでと変わったところや変えようと思ったことはありますか?
『Takasago Army』より前のアルバムまではリフと構成を最初に作って、その後に台湾/アジアン・テイストを加えていたんだけど、『Takasago Army』の制作途中からこれを変えて台湾/アジアン・メロディを最初に書いて、そのマテリアルをヘヴィにしていく作り方にしたんだ。そしてその過程でその方法をどんどん習得していったんだよね。だから今回『Bu-Tik/武徳』もその新しい方法でやったんだけど、前回やり方を習得した分だけ、より上手くできたということなんだと思う。もっと善悪に対してナチュラルにセンシティブになれたんだ。