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FEATURE

THE INTEGRAL POULTRY

2014.04.10UPDATE

2014年04月号掲載

紙お面、狼、能面、天狗の次は"紙袋"!? 松隈ケンタがサウンド・プロデュースを手掛ける3ピースが全国デビュー!!

Writer 沖 さやこ

2013年4月1日、エイプリルフールに生まれた3ピース・バンド、THE INTEGRAL POULTRY。通称インポー。そのヴィジュアルは、頭にかぶった紙袋からクチバシと角を生やすという......近年は今までも紙お面、狼、能面、天狗など数々の覆面バンドが登場してきたが、パッと見"なんなんですか? 皆さんは何者なんですか?"と首を傾げてしまうという、存在そのものが謎である。先の覆面バンドたちが明快でキャッチーだったのに比べ、インポーはこの正体不明感がちょっぴり不気味だ。だが見慣れてくると、紙袋に空いた円らな瞳がちょっと可愛らしく思えてくる。このような妙な中毒性は、彼らの見た目だけではなく音楽性にも通ずるのかもしれない。メロコア、デジタル・パンク、ラウドロック、ダンス・ロック、ギター・ロックなどなど、ロック・サウンドを軸にしながら幅広いジャンルの音楽でリスナーを突き動かし奮わす。耳が早いロック・キッズには"インポー"の名はじわじわと広まり、昨年4月に始動以来、配信限定音源を40曲発表。10月にはMINAMI WHEEL 2013に出演し、渋谷で行ったゲリラ路上ライヴでは300人もの観衆を集める。都内ワンマンを4回開催し、今年に入り東名阪ツアーを完走。6月にも中野heavysickZEROにてワンマン・ライヴが予定されている。

そんな彼らが満を持して全国デビューを果たす。タイトルは『WILD RIOT』。配信限定音源のなかの選りすぐりの楽曲である12曲が収録され、デビュー盤でありながらもベスト・アルバムとも言える内容だ。この謎のバンドを支えるサウンド・プロデューサーは、BiS、中川翔子、柴咲コウなどの楽曲も手掛ける、音楽制作集団SCRAMBLESの代表、松隈ケンタ。2013年に設立されたSCRAMBLESプロデュースによる"ジャンルの壁にとらわれない自由な感性を持ったバンド"がコンセプトのレーベル"SCRAMBLE RECORDS"からのリリースである。そして、2014年から"揺るぎないデザイン"をコンセプトにアイテムを展開している国内ブランド"Subciety"を衣装協力に迎えているとのこと。普遍的なスタイル、素材感、ディテールを重視し、流行に流されないシンプルでタフな素材感の強いアルローズ・アイテムを提案している同ブランドは、彼らの打ち出す世界に合致している。

アルバムはまずデジタル・パンク・テイストの「PARTY HARD」で幕を開ける。続いてメロディック・パンク「SAY ANYTHING」、エモいギター・ロックとメロディが駆け抜ける「George」、様々な日本のバンドの名前が織り込まれた歌詞も耳を引く「ODORASETAIDAKE」はthe telephonesがラウドに変貌したような生々しく痛快なダンス・ナンバー。J-ROCKテイストのギター・リフと和風メロディが痛烈な「Fight Fight Fight for...」と、前半5曲でもかなりバラエティに富みつつもライヴ・キッズの心を揺さぶる楽曲の応酬。アグレッシヴなヴォーカルが乗るつんのめるようなギター・ロック「DANCER IN THE DARK」は刹那的に響き、ドラマティックに展開。同じフレーズが何度も繰り返される「BOYZ ON LIMIT」など、メンバーの素性は明らかにされていないが、楽曲を聴いていると洋楽と邦楽などの境や、時代などの隔たりも関係なく、広い意味での"ロック"と分類されるバンド・サウンドに精通していると推察できる。そんな音楽愛が滲んだ楽曲群は、聴き手の心臓に一筋の強い光を点す。幅広い音楽性と日本人でしか出せない繊細で不安定なニュアンスのメロディが、彼らの大きな魅力だ。バンド結成1周年を迎え、とうとう全国デビュー。紙袋のなかの目が見つめる先はどこなのか? THE INTEGRAL POULTRY、本格始動である。

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