LIVE REPORT
HAZUKI
2024.12.10 @Zepp Shinjuku (TOKYO)
Writer : 杉江 由紀 Photographer:入谷めぐみ
豊潤で、グラマラスで、なおかつ過剰な程に刺激的。ストイックにして男気溢れるロック・バンド、lynch.のヴォーカリストでもある彼が、ソロ・プロジェクトたる"HAZUKI"として見せる表情は、決して名称表記の違いだけにはとどまらない。
もともと2016年から"葉月"としてのソロ・ワークス自体はスタートしていたものの、主にそれはアコースティックな音像を軸としてカバー曲を多く歌う、というスタイルが定番となって来ていた印象が強くある。一方、2022年春から始動した"HAZUKI"を名乗ってのソロ・プロジェクトでは、彼がかねてから親交の深いミュージシャン等とともに、いい意味で好き放題に趣味性の高いサウンドや、実験的なアプローチをとった楽曲を具現化していくことによって、聴き手を楽しませながらも彼自身が音楽を存分に堪能している姿、というものが垣間見られるようになった気がするのだ。
無論それはライヴの現場にも言えることで、このたびZepp Shinjuku (TOKYO)にて開催された、[TOUR'24 "WAKE UP ØVERKILLER(S)"]の最終公演でも、そこにあったのはソロ・ヴォーカリスト+バックバンドといった類いのものではなく、もはやバンドに限りなく近しい音楽コミュニティの姿だと言えた。バンマスにしてギタリストであるPABLO(Pay money To my Pain/The Ravens/RED ORCA/POLPO)、HAZUKIとは名古屋で知り合ったというギタリスト TSUYOSHI(Unveil Raze)、鉄壁のリズム・ワークを誇る実力派ドラマー 響(摩天楼オペラ)、そしてベーシスト 明徳(lynch./VIVACE)の猛者揃いであると同時に、最新アルバム『MAKE UP ØVERKILL』もほぼこのメンツで制作していっただけあって、彼等から放たれる音はどれも音源さながらどころか音源以上の大迫力。
"このソロが発足したわりと当初の頃から、Zepp Shinjukuに関してはスタッフやメンバーとも「いつかやろうよ」っていう話をしてたんですけど、今日その夢がついに叶いました! しかも、ソールド・アウトです。ありがとうございます!"(HAZUKI)
ギター・ヴォーカルとしてもマイクの前に立った「東京彩景 -TOKYO PSYCHE-」や、2022年8月にリリースされた1stアルバム『EGØIST』からの楽曲たち、未リリースのレア曲「真月」等も交えつつ、ここまで3年弱の中で醸成してきた持てるものを最高のかたちで披露してくれたHAZUKI。時に試行錯誤があったのかもしれないが、結局は全てが彼の血肉となってきたのだろう。
"2021年の年末にlynch.が活動休止してから、約1ヶ月後にソロの発表をしたこともあって、当時はファンの方からいろいろ怒られたりもしました。(中略)そして、当初ソロは自分のためだけの音楽だったんですが、そこからツアーをやったりしていくうちに、HAZUKIバンドを好きになってくれる人も増えて、なんならソロから僕のことを好きになったという人も出てくるようになって、いろんな人たちを巻き込みながら今日Zepp Shinjukuでこの素晴らしい景色を作ることができて本当に嬉しいです!"(HAZUKI)
ちなみに、この日はHAZUKIの誕生日当日でもあったことから、アンコールでは舞台上にバースデー・ケーキが登場し、メンバーとファンに微笑ましく祝われる場面も生まれることに。また、完全に予定外だったWアンコールでは「9999」、「東京彩景 -TOKYO PSYCHE-」が"おかわり"として供され、場内は爆盛り上がりするに至った次第だ。葉月もいいが、HAZUKIもまた良し。人生は何しろ楽しむが勝ちである。
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