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LIVE REPORT

KISHOW

2024.08.15 @KT Zepp Yokohama

Writer : フジジュン Photographer:キセキミチコ

"短いようでやっぱり短かったツアー。今日はファイナルということを念頭に置いて、心行くまで騒いでいただきたいと思います" 最初のMCで冗談めかしながらも、名残惜しそうに告げたKISHOW。GRANRODEOのデビュー20周年プロジェクト"Road to G20th"第2弾としてリリースした、ソロ・アルバム『深夜零時』を掲げて行ったツアー"KISHOW LIVE TOUR 2024「MIDNIGHT CIRCUS」"。大阪、名古屋を経て、ファイナル公演がKT Zepp Yokohamaにて行われた。

ソロ・ツアーゆえ、そこにe-ZUKA(GRANRODEO)の姿はなく、"MIDNIGHT LOVERS"と名付けられたバック・バンドを従えたKISHOWがたった1人でステージに立つ姿は実に貴重だったし、GRANRODEOとは異なるKISHOWの変幻自在の歌声や表現はこの日で見納めになることが本当に惜しまれる、実に素晴らしいライヴだった。

開演時間となり、ジャジーなSEに乗せてひらりと軽やかに登場したKISHOW。オープニング・ナンバーはアルバム『深夜零時』の1曲目であり、ツアー・タイトルでもある「Midnight circus」。軽快なサウンドにサックスが響き、KISHOWのパワフルで艷やかな歌声でパーティーの幕開けを宣言。GRANRODEOとは異なるミステリアスな世界へと誘うと、短い挨拶から「Fifty-Fifty」、「純度」とアルバム楽曲が続き、多彩且つ表現力豊かな歌声でオーディエンスの心をギュッと掴む。

MCでは"GRANRODEOとして、シンガーとして、そして声優として、これまで培ってきたスキルや経験を活かした、バラエティに富んだ作品になった"とアルバム『深夜零時』を改めて振り返り、「百年の孤独」や「Warrior」といった、彼の原点と言える谷山紀章名義で歌手デビューした頃の楽曲を披露。さらにGRANRODEOのプロトタイプだったという「Fly Away」とロック・ナンバーが続き、激しい歌と演奏に客席から熱気が上がる。

美しいピアノのイントロが会場の空気を変え、KISHOWの切ない歌声で始まったHANSONの「I Will Come To You」、七尾旅人の「サーカスナイト」とカバー曲が続いたブロックは、温かい歌声とアコースティック・サウンドやフルートの音色が抜群にマッチする、ソロ・ライヴならではの嬉しい試み。"正真正銘、谷山紀章名義で一番最初にこの世に出た曲"と説明したデビュー曲「Daydreamin'」を現在のスキルをもって堂々と歌い上げると、ライヴは再び『深夜零時』の世界へ。

壮大なバラード・ソング「let me dream of you」の美しく伸びやかな歌声で魅了すると、いよいよライヴは終盤戦。グルーヴィな演奏にバンド・メンバーとステップを合わせ、身体を揺らすオーディエンスとのコール&レスポンスで一体感を生んだ「Lucky for you」で再び会場を熱くすると、「Cyborg No.61298」、「Flower Tambourine Dance」と続き、ソウルフルにロックに様々な表情を見せるKISHOW。

自信や誇りに満ちた堂々とした歌声やステージングと、その裏付けとなるヴォーカリストとしてのスキルの高さやシンガーとしての振り幅の広さには舌を巻くばかりだが、そんなKISHOWに"難しい曲"と言わしめ、"シンガーとしてのキャリアにおいても特殊な曲。今後、歌う活動を続けていくにあたって大切にしていかなきゃいけない曲になった"と語る曲が、本編ラストで披露した「Every Single Night」だった。だが、シティ・ポップ調のグルーヴィな演奏に乗せた難易度の高いメロディを軽やかに乗りこなし、自身の解釈でしっかりKISHOWの色を出したヴォーカルは、GRANRODEOデビュー20周年を目前にまた新たな個性や魅力を生み出していた。

バンド・メンバーと歌う、アカペラの美しいハーモニーで魅了した「Game」で始まったアンコールでは、"シンガーとして矜持を持ってやってきて、ソロ・ライヴという1つ結実したものを披露できて幸せ"と想いを語り、"これからも歌い続けていきたい"と宣言。ラストを"いまが次の未来のはじまり"と歌う「Run for run」で前向きに締めくくった。まだまだ続く"Road to G20th"に、どんな未来が待っているのか!? 心底、楽しみになるソロ・ライヴだった。

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