キズ 2024.06.01 ＠国立代々木競技場第二体育館

2024.06.01 ＠国立代々木競技場第二体育館

Writer : 杉江由紀　Photographer：小林弘輔( @style_k_ )

人ならざるものになるしかなかった、ということなのだろうか。キズの最新音源『鬼』に関する取材（※2024年5月号掲載）において、曲と詞を生み出した来夢（Vo/Gt）が語っていたのはこの言葉であった。 "前からちょいちょい歌詞で無意識的にではあるものの「鬼」という単語は使ってました"、"鬼に追っかけられる夢を見るようになっちゃったんですよ。それも、同じ夢を何度も見るんです。時期的に言うと、あれは「V系って知ってる？（V系って知ってる？powered by MAVERICK DC GROUP）」に出る前くらいからだったかなぁ"

ちなみに、夢占いの診断によると鬼＝己の中にある野性的で強烈なエネルギーの象徴になるのだとか。できあがった楽曲「鬼」はタイパだなんだと言われる時代にあって、なんと6分超えの堂々たる大作へと仕上がることに。
無論、それだけの念がこもった作品を世に出すことができたのであれば、来夢の夢に棲む鬼たちとて無事に成仏したはず......と思いきや、来夢によると、今もって鬼は夢に出て来ているそう。もしかしたら、その事実が浮き彫りになった時点......あるいは、このたび"キズ単独公演「星を踠く天邪鬼」"を国立代々木競技場第二体育館で開催すると決めた段階で、来夢は禍々しき鬼を単に滅するのではなく、自らが鬼以上の存在たる鬼神に化すことで凌駕しようと意識した可能性もありえる。なぜなら、今宵の来夢が舞台上で身につけていたのはまさに人ならざるものの証であり、呪力の象徴でもある仁王襷だったからだ。

仁王襷を舞台上で背負う、ということ。それが意味するのは、尋常ではないほどの覚悟そのものであったに違いない。実際、キズというバンドを端的に表したかのような「傷痕」から始められたこの単独公演では、終始どの場面にも鬼気迫る音と歌が跋扈していた。6月という時期を踏まえてなのか、あたかもジューン・ブライドのような出で立ちをしていながら、ドラム・プレイ自体としては来夢いわく"「VISUAL ROCK」だと珍しい、男くさくて泥くさいビートが満載"なスタイルも得意なきょうのすけ（Dr）。曲によって的確にピック弾きと指弾きを使い分けながら、時にはバチバチのスラップ・ベースも聴かせてくれるユエ（Ba）。決してギター・ソロを冗長にどの曲でも引き倒すような自己満足型ギタリストではない反面、楽曲に込められた想いや情景を表現することに掛けては超絶にエモいギター・ワークと、奔放なほどのステージングで観衆を圧倒するreiki（Gt）。キズというのは、ことあるごとにフロントマンである来夢にスポットが当たりがちではあるが、ライヴを観てみればバンド全体としてのポテンシャルが相当に高いことがよくわかる。

なお、そんなキズが国立代々木競技場第二体育館を制したあとにどこへ向かうのか......？その疑問に対する答えも、この夜のライヴの中には折り込まれていた。"この命もくれてやろう"という1節から始まったアンコール「鬼」で、来夢が合間に"俺を愛してくれてありがとう！俺を救ってくれてありがとう！"と叫んだあと、"君を連れて星を踠く死ぬことなく"と歌い出そうとするその瞬間、"キズ単独公演「焔」2025年1月6日（月）日本武道館"との文字が、ステージ奥のヴィジョンに映し出されたのである。魔除けの意を持つ擬宝珠を戴いた聖地日本武道館に、いよいよ人ならざるものにまで進化を遂げた鬼神たちが立つその日。新たなる神算鬼謀が繰り出される可能性は高い。

[Setlist]
1. 傷痕
2. 蛙-Kawazu-
3. ストーカー
4. 人間失格
5. 十八
6. ストロベリー・ブルー
7. リトルガールは病んでいる。
8. 平成
9. 眠らない街 10. 0
11. Bee-autiful days
12. 銃声
13. 豚
14. おしまい
15. 地獄
16. 鬼

LIVE INFORMATION

"キズ単独公演「Peace begins with...」"
8月6日（火）広島 LIVE VANQUISH
8月9日（金）長崎アストロホール
OPEN 17:00 / START 17:30
［チケット］
￥6,000（税込/D別）
一般発売：7月6日（土）～（TicketTown / イープラスにて）

"キズ単独公演「焔」"
2025年1月6日(月) 日本武道館
※詳細後日発表