LIVE REPORT
アルルカン
2022.02.13 @渋谷REX
Writer 杉江 由紀 Photo by 川島彩水
この難局を生き延びていくために、彼らは怪物へと進化することを選択したのかもしれない。革新性と貫録に満ちた最新アルバム『MONSTER』を発表することにより、いちロック・バンドとしての頼もしい存在感を改めてシーンに示したアルルカンという名の怪物は、今まさに進行中の"live tour 2022「MONSTER」"で超進化を日々繰り返している最中ということになろう。ツアー開幕後2本目となった今宵のライヴにおける彼らは、『MONSTER』収録曲であると同時に先日YouTubeにてライヴMVが公開されたばかりの「bash 脳 down」から激烈な先制攻撃を開始し、まずは5曲ぶっ続けでそれぞれにカラーこそ違えど一様にアッパー且つアグレッシヴな楽曲たちをオーディエンスに向けて放ちながら、場内の空気を早々から高い熱を帯びたものへと変えていったのだった。
以前にも増して、動力機関であるドラマーとしてのタフさを増した堕門。鮮やかな指さばきで、時に激しく時にしなやかに5弦ベースを操る祥平。作曲/作詞に始まりエンジニアリングまで手掛けつつ、このところはアルルカンのツアーと並行しながら逹瑯(MUCC/Vo)ソロにもサポート参加している奈緒(Gt)。堅実なプレイとワイルドなステージ・アクトを両立させつつ、観衆を魅了する來堵(Gt)。そんな猛者揃いの楽器陣を従えながら前線に立つフロントマン 暁は、この夜いよいよ本編中盤へと突入するタイミングでアルバム表題曲「MONSTER」を渾身のヴォイス・パフォーマンスで披露し、ここで聴けたポエトリー・リーディングの域を超えた圧倒のアジテーション的アプローチには、愚直なほど真摯に今を生きているアルルカンというバンドのリアルなスタンスが凝縮されていたと言えるだろう。
ちなみに、この「MONSTER」は"居場所のない 僕ら"という歌詞から始まるのであるが、思えば彼らはこれまでにもいくつかの楽曲たちの中で"居場所"というフレーズを使ってきているほか、今回のアルバム『MONSTER』においては「証」の中にもこの言葉を確認することができる。では、そもそもアルルカンにとっての"居場所"とは何を意味するものなのか。おそらく「MONSTER」の中で歌われている"居場所のない 僕ら/あの場所を求めても/抱いた 幻想はそっと/煙に巻かれて消えてった"という表現から見るに、これは居場所がないことを嘆いているものではなく、自らが目指すのはあくまで"あの場所"であり、本当の居場所はそこにあるはずだ、という意味で"居場所"という言葉が使われているように察する。昨年あたりから暁が野望と決意を託すかたちで"5年以内に武道館に立ちます!"とステージや取材の場で公言するようになったことを踏まえても、これは単なる推測ではない気がするのだ。だとすれば、アルルカンにとっての最新アルバム『MONSTER』と5月4日のLIQUIDROOM ebisuまで続く今回の"live tour 2022「MONSTER」"が、そこに向けた重要な布石となるのは間違いない。
"今日はありがとうございました。冬にはデカ箱打つんで、もっとデカいところでやろう。まぁ、今はいろいろあるよね。例えばチケット代、どう思う? 俺らは変えてないけど。上げたくなかったんだよ。だって、お前らには関係ないもん。あくまでも俺らの都合でしょ。(中略)とにかく、俺たちは全部ひっくるめて進もうと決めたんで! このツアーも全部ソールドにしていきながら次に進んでいきます!!"
この難局を生き延びていくために、すべてを受け容れながら腹を括って覚悟を決めた怪物たちの快進撃。それはもちろん、ここからが本番だ。
[Setlist]
1. bash 脳 down
2. 墓穴
3. will
4. 影法師
5. いばら姫
6. MONSTER
7. サイレン
8. 胸の内側に宿る息
9. 証
10. エレジー11. blind bud
12. TARANTULA
13. 手の鳴る方へ
14. ブルーキャンディ
15. 価値観の違いは唯一の救いだった
16. わかれうた
17. 暁
18. ダメ人間
19. 旗のもとに
20. 世界の終わりと夜明け前
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