LIVE REPORT
H.E.R.O.
2020.02.01 @代官山SPACE ODD
Writer 菅谷 透 Photo by Yoshika Horita
北欧デンマーク発のロック・バンド H.E.R.O.が、単独来日公演を東京と大阪で開催した。2018年11月に行われたショーケース・ライヴ"HOKUO LOUD NIGHT"への出演をきっかけに、2019年はSLASH(GUNS N' ROSES)のソロ来日公演のオープニング・アクトを務め、1stアルバム『Humanic』をリリースするなど、勢いを増していった彼ら。今回が日本での初単独ライヴということもあり、東京公演の舞台で、"HOKUO LOUD NIGHT"が行われた会場でもある代官山SPACE ODDには開演前から多くのファンが詰めかけていた。
SEとともにバンド・ロゴがスクリーンに映し出されると、メンバーがひとりずつ登場。Anders "Andi" Kirkegaardの力強いドラミングから「Avalanche」でライヴがスタートした。4月にリリース予定の2ndアルバムからの先行シングルで、公演の数週間前に配信が開始したばかりの同曲だが、フロントマンのChristoffer Stjerneがギター片手にフロアを煽ればサビで早くも合唱が。バンドも観客も高い熱量を持ってこのライヴに臨んでいることが感じられた。続く「Dangerous」では、重厚なベース・イントロから始まる骨太のビートを叩きつけ、フロアを揺らしていった。
"また日本に戻ってこれて嬉しいよ"というChrisのMCを挟み、「Break You Down」、「Human」へと続く。今回はサポート・ベーシストとして同郷デンマークからMEWのJohan Wohlertが参加しており、一音一音正確なドラミングを魅せるAndiと息の合ったグルーヴを生み出していた。その上でSøren Itenov(Gt)が感情豊かなギター・フレーズを奏で、Chrisがクリアで伸びやかな歌声を響かせる。前回のライヴよりも、バンドとしての強度が格段に増しているのが感じられた。そんな熱のこもった演奏にオーディエンスが大きな歓声と拍手で応えると、ChrisもMCで"アメイジングだよ! アリガトウ"と喜びを表していた。この日彼らはMCのたびに、日本に戻ってこれたこと、そしてバンドをサポートしてくれることへの感謝を口にしていたが、こうした姿勢もまた彼らが支持を集めるようになった要因なのかもしれない。
続いて、アルペジオと透き通ったヴォーカルが染みわたる「Fear」、スマホのライトを点灯させる演出で幻想的な光景が広がった「Fall Apart Together」とバラード曲を披露。H.E.R.O.の魅力のひとつである美しいメロディを存分に堪能できるセクションだったが、歌詞のところどころを"Tokyo"に変える遊び心も見せていたのもまた彼ららしい。「Fall Apart Together」の最後で"まだ曲を終わらせたくないよ"と観客と合唱をする姿も印象的だった。
後半は、うなりを上げるようなギター・リフのイントロが付け足された「This Means War」で再びロック・モードに突入。キャッチーなサビのフレーズに無数の拳が上がった「Higher」では、Chrisも"スゴーイ!"と大喜びだ。伸びやかな歌声が心地よい「Desire」、アッパーなビートの「Hope」でボルテージを高めていくと、本編最後の曲「Listen」をドロップ。会場にいるひとりひとりを見わたし、サビのシンガロングではステージ最前まで出向いてファンの声を受け止めるChrisの、堂々たるフロントマンぶりが実に頼もしかった。
アンコールの大歓声に応え、メンバーがビール片手で再びステージに登場すると、『Humanic』日本盤にボーナス・トラックとして収録されている「Fall And Fade」を披露。"古い曲だ"と語る通りアルバム収録曲とはカラーの異なるオルタナ/グランジ調のダウナーな楽曲だが、いい意味でアクセントになっていて、曲の終盤で見せたロングトーンの歌声も見事だった。ChrisがSøren、Andi、Johanをそれぞれ"世界一の◯◯(パート名)"と紹介したあと、"世界一の曲だ"という曲フリからタイトル・コールされたのはキラーチューンの「Superpowers」。大歓声を笑顔で受け止めながらバンドが演奏を始めると、フロアも手を挙げ、大合唱で返していく。まさにこのライヴのハイライトと言える光景だった。が、Chrisが"もう一度演奏していいかな?"と呼びかけると、なんと事前に用意されたセットリストにはなかった、この日2回目の「Avalanche」を披露。予期せぬ出来事に、フロアは1回目を超えるどころか、代表曲「Superpowers」にも迫ろうかという大盛り上がりを記録した。そして最後に、今回の来日公演がライヴ初披露だという「Disco Death」をプレイ。縦ノリのリズムでフロアを盛大にバウンスさせて、70分のライヴを締めくくった。
この日のライヴで、現時点でのバンドの集大成だけではなく、その未来像の片鱗も見せてくれた H.E.R.O.。確かな進化を遂げている2ndアルバムを引っ提げ、彼らが行うであろうライヴにも今から期待したい。
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