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LIVE REPORT

ゼリ→

2019.10.13 @マイナビBLITZ赤坂

Writer 杉江 由紀 Photo by Yusuke Satou

かのJohnny Rotten(Vo/SEX PISTOLS)が1978年にSEX PISTOLSを脱退する際"ロックは死んだ"とのたまったその言葉は、ある種の名言として現世にまで伝えられることとなった。しかし、果たしてロックは本当に死んでしまったのだろうか。

事実として、それから40年以上が経った今も世界中にはロック・サウンドがまだまだ溢れている。たしかに、70年代のパンク・ムーヴメント華やかなりし頃と比べて、ロック・シーンが衰退している傾向がまったくないのかと言えば......それは否だと認めるしかない。さりとて、それでもロックが完全に死んでしまったとまで断言するのは暴論に過ぎないはずだ。

例えば、日本においては先だって"あの伝説的パンク・バンド"であるところのゼリ→が、奇跡的且つ変則的な復活を果たしている。もはや若い読者層は知らないかもしれないが、とにかくゼリ→と言えば1999年11月に、メンバー全員がほぼ全裸でジャケット写真を飾ったシングル『おもちゃのピストル』でメジャー・デビューを果たして以降、何かとシーンを騒がせる悪童として定評のあったバンドにほかならない。

また、それでいて2000年代に入ってからのゼリ→は、突如としてステレオタイプなパンク・スタイルを捨て去り、独自の進化を続けていくことになるのだが......それはそれで、彼らならではの革新的な攻めの姿勢を印象づけることになっていたと記憶している。ただ、そんな彼らは2008年には紆余曲折を経て、惜しまれながらも解散が決定。

あれから11年の月日が経ち、その間にゼリ→のフロントマン、YAFUMIは当時のギタリスト、KAZUKIと共に新バンド、LAID BACK OCEANを起ち上げ現在に至っているのだが、なんと今夏に青天の霹靂とはこのことか!? というくらいに衝撃のニュースが飛び込んで来ることとなったのだ。なんでもYAFUMIの"単独反抗"として、ゼリ→が2020年の年末までの期間限定で復活を果たすことになったのだという。

当然このニュースに触れ我々が感じたのは、"ついにそんなときがやってきたのか!"という歓びと同時に"単独反抗って何!?"、"他のオリジナル・メンバーは?"という当惑の気持ちであったのは言うまでもない。ただし、これらの疑問に対する回答は、すべてこのたびマイナビBLITZ赤坂にて行われた、[ゼリ→ 20th Anniversary Live "BAD PHILOSOPHY"]の中に用意されていたのである。

"待たせたな、赤坂! 行こうかROCKERS!!"

ギラギラとスタッズの光るライダースを纏い、イカついサングラスをかけたYAFUMIが、檄を飛ばしながら食い掛かるような勢いで歌い始めたのは、ゼリ→の1stアルバム『RODEO★GANG』の1曲目に収録されていた「RODEO RADIO」。前日には関東地方で台風19号が猛威を振るったことにより、このライヴ当日は各交通機関に乱れが諸々残っていたなかだけあって、なんとか万障繰り合わせながら会場へと辿りついた"ROCKERS"にとって、これほど胸熱なオープニング曲もなかったに違いない。

以降今回のライヴでは、夏にWEB限定販売が始まったオール・タイム・ベスト盤『BAD PHILOSOPHY』からの曲たちを軸に、進行していくこととなった。場内は終始、モッシュやクラウド・サーフの光景が幾度となく生み出されるほど過熱していくばかり。たとえメロウな「体温計」のような曲であっても、オーディエンスは微妙に身体をそれぞれ心地よさそうに揺らしながら、繰り出されてくる音たちをあますところなく全身で受け止めようとしていた。その様子からは彼ら/彼女らのゼリ→に対する愛を強く感じた次第である。

"解散から約10年間ほんとにお待たせしました。10年前に止まってしまったときは、申し訳なかったなという気持ちがすごく強くあって......そうだな。うん、今回も4人のゼリ→として帰ってきたい気持ちは強かったし。ほんとはね、去年この話が最初に出た頃は4人でやろうと思ってたのよ。リハーサルでスタジオにも4人で入ったし、準備はしてたんだ。だけど、ある出来事が起きて......それは社会のルール的なものが関係していることだから、どうしても4人ではできなくなってしまって、そこからはメンバーとも事務所のスタッフとも何度も話し合いました。なんとかできないのか、ロック・バンドってなんなんだ! ってたくさん悩んだし。そのなかで俺は、最後のギリギリのところで言いました。「この20周年はひとりでやるわ」って。そうしたらメンバーは「あぁ、それも俺たちらしいかもしれないな」っていう話になって。まぁ、未だにこうして俺がひとりでステージに立ってることが正しいことなのか、間違ってることなのかは全然わかりません。もちろん最高のサポートしてくれるメンバーがいて、みんなは本気でやってくれてます。......そういうなかで、今の俺に何が歌えるのか。それを俺自身が知りたくなったのもまた事実で、それで俺はこうしてひとりでやることを決めて今日この場に立ちました"

本編の後半においてはYAFUMIがこのように時折言葉を詰まらせながらも、その心中を率直に吐露する場面も。

"やっぱりね。止まってたみんなの時を動かしてぇなっていう気持ちもあったし、一番はコーヘイ(ex-Dr)の気持ちも大きくて。アイツは一般人になって今は一生懸命働いてんだけど、話をしたらあの頃のまんまだったんだよ。それがすげぇなと思って。俺はあれからも音楽をやり続けていて浄化されてきたところもあったかもしれないけど、ほんとにアイツは変わってなくてさ。まず話をしたら、すぐ「やる!」って言ったんだよ。だからこそ、俺はアイツの気持ちをちゃんと終わらせてやりたかったんだよな。......ここに立ってるのは俺ひとりだけど、俺は生半可な気持ちでやってないんだよ。正しいのか間違ってるのかは、みんなが決めてくれりゃいい。俺はこれが人生だ、これがロック・バンドなんだ、これがリアルなんだ、本気でこの20年間ずっと嘘ひとつなくやってきてるんだ、っていうことをみんなに届けたいと思ってここに立ってます"

こうしたYAFUMIの言葉のあとに歌われたのは、新曲「キミのヒビ」。そのあとにデビュー曲「おもちゃのピストル」と、これまた1stアルバムからの「LONDON NIGHT MOVIE」を持ってきて、本編を締めくくったのも素晴らしい流れであったと言っていいだろう。アンコールとダブル・アンコールでは、「NITRO GANG」を含む計3曲がさらに追加されることにより、すべての"ROCKERS"たちにとってこの夜が忘れ得ぬ一夜になったことは、疑う余地もない。

なお、来たる12月18日には、現在WEB上にてMVが先行公開されている新曲「STAY DREAM」を含む、ゼリ→としてのミニ・アルバム『+×』が発表されるとのことで、それに伴い来年1月からは2月9日の新宿BLAZE公演まで続く、[ゼリ→ 20th Anniversary Tour "+×" (plus times)]も開催が決定しているのだとか。

"お前ら、最高でした! 俺はまだ死んでねぇからな!!"

極上の笑顔を残して今宵この場を去ったYAFUMIの"単独反抗"が、ここからいかなる展開を見せていくのか。ここはとくとお手並み拝見といこうではないか。

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