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INTERVIEW

ゼリ→

2019.12.17UPDATE

2019年12月号掲載

ゼリ→

Member:YAFUMI(Vo)

Interviewer:杉江 由紀

"PUNK'S NOT DEAD"の言葉そのままに。20周年の節目を迎え、ゼリ→は先だって10月にマイナビBLITZ赤坂での[ゼリ→ 20th Anniversary Live "BAD PHILOSOPHY"]をもって奇跡の復活を果たしてみせた。ただし、このゼリ→はYAFUMIによる"単独反抗"であり、このたび発表される新作ミニ・アルバム『+×』(plus times)については親交のある各ミュージシャンたちを迎えて制作されたものであるという。年明けから始まるツアー[ゼリ→ 20th Anniversary Tour "+×" (plus times)]も含め、今このタイミングで2020年末までの期間限定であえてゼリ→を動かし始めた理由や、その意義について。ここはとくとYAFUMIに語ってもらおう。


20年後にゼリ→の看板を掲げた俺は何を歌うのか。そこを自分自身でも知りたくなった


-先日は、マイナビBLITZ赤坂にて行われた[ゼリ→ 20th Anniversary Live "BAD PHILOSOPHY"]にうかがわせていただきましたが。約11年ぶりであったと同時にこの20周年という節目を記念した復活ライヴは、実に鮮烈且つ感動的でした。

いやー。激ロックに載っていたレポート、良かったですね。なんか嬉しかったです。というか、俺としてはああいうのってすごくありがたかった。

-いえいえ、恐縮です。それだけあれが素晴らしいライヴであったということなのですよ。そして、あのライヴをご覧になった方たちは、何がどうなってこのたびYAFUMIさんが"単独反抗"という体制をとりゼリ→を2020年の年末までの期間限定にて復活させたのか、という理由がよく理解できたと思うのですけれど、例えばこの記事に触れてくださる方々の中には、そのあたりがまだよく伝わっていない可能性もございます。そこで、今回はまず初歩的なことからうかがわせてください。そもそも、ゼリ→は1999年にデビューしたときから非常にセンセーショナルな存在でした。当時のYAFUMIさんはその事実に対して、どのようなことを考えていらしたのでしょうか。

うーん......正直言うと、あの頃はよくわかんなかった。結果がいきなり出ちゃったから。例えば、歌詞も今と同じように自分が思っていることをそのまま書いていただけなんだけど、それに対してたくさんの"共感した!"みたいな人たちが出てきて。"オトナの言ってることは聞きたくないけど、YAFUMIの言ってることなら信用できる!"とか言われても、別に自分としては"そんなの知らねぇよ!"って思ってたし、よくそういうことを当時のインタビューとかでも言ってました(笑)。

-その点からして、ことごとくパンクですねぇ。

だって、ゼリ→を組んだのなんて10代のときですよ? そんな高い志なんてなかったし、あったのはいわゆる初期衝動くらいだったんじゃないかな。中学校3年生のとき、同じクラスの鈴木君に謎のカセットテープを渡されてね。そこに入ってたTHE MAD CAPSULE MARKETSとかD'ERLANGERを聴いたときに、とんでもなくダークで刺激的な空気に強い衝撃を覚えたのが僕にとってはロックの原体験だったんです。"こんなものが世の中にあっていいんだ!?"っていうね(笑)。だから、俺の中ではロックの魅力って"共感できること"じゃないんですよ。それよりも圧倒的な視点がそこにあるのかどうか、っていうことが大事なんです。結局、あの頃ゼリ→でやりたかったのもそういうことであって、その方法論としてパンク・ロックであるというのも必然だったんじゃないかな。

-かくして、初期のゼリ→はあの時代にあってあえて70年代的な王道のパンク・スタイルを呈示してみせました。しかしながら、2000年代に入ってからのゼリ→は突如としてステレオタイプなパンク・スタイルを捨て去り、独自の進化を続けていくことになります。今思えば、あの変化の過程はあとのLAID BACK OCEANにも受け継がれていくことになったとも言えそうですよね。

うん、それはある。ゼリ→として活動していったなかで、自分たちなりにいろいろな方法を試していったのは確かですよ。

-そうした一方、やはり初期ゼリ→の打ち出した攻撃的なイメージは未だに強烈で、ゼリ→があの時期に"伝説のパンク・ロック・バンド"としての金字塔を日本ロック史に打ち立てたことは間違いない事実でしょう。また、先日行われたマイナビBLITZ赤坂での復活ライヴも意図してオーディエンス側の求める初期ゼリ→像をこの時代に具現化させるような内容であったと感じました。YAFUMIさんからすると、今このタイミングで復活させるにあたってのゼリ→がどうあるべきだとお考えなのかも教えてください。

あのね。そこを話すには当然、この復活の経緯についても触れる必要があると思うんですよ。なぜやることになったのかと言えば、これはBLITZのステージでも話したけど、最初はとにかく、20周年の節目にオリジナル・メンバー4人での復活をするつもりでいたわけです。でもまぁ、その中でとある問題と直面することになってしまい......どうしても4人ではできなくなってしまった。そうなったときに、復活自体をさせないっていう考え方もありはしたんだけどね。俺は今回、それでもひとりでやるって決めました。

-なるほど。今回のゼリ→復活について、YAFUMIさんによる"単独反抗"と銘打たれているのはそのためだったのですね。

最も大きな原動力になったのは、コーヘイ(ゼリ→のオリジナル・メンバーであるDr)と話をしたときにアイツの気持ちを知ったことだったんですよ。俺とKAZUKI(Gt)は2008年に解散してからの10年とか11年とか、ここまでLAID BACK OCEANでの活動を続けてきたわけだし、やっぱりずっと進んできている感はあるんですけどね。コーヘイに関しては、ほんと驚くほどにあのときのままだったんです。今は音楽から離れて一般人として真面目に働いているなかで、俺が"やるか?"って聞いたらなんの迷いもなく"やる!"って言い切りましたから。それってすげぇなって俺は思って。約10年間、きっとコイツはそういう日がやってくるときのためにその答えを準備してたんだろうって感じたんですよ。それと同時に、コーヘイのその思いはここで終わらせてやらないとな、とも思ったんです。

-マイナビBLITZ赤坂でも、YAFUMIさんは"俺はアイツの気持ちをちゃんと終わらせてやりたかった"とおっしゃっていましたね。バンドの20周年を祝う奇跡的な復活であると同時に、この復活がゼリ→としての終わりを迎えるためのものであるというのは......そこに複雑にして深い愛の存在を感じてしまいます。

そういうことになるのかなぁ。いずれにしても、アイツのことがあったからこそ心が動かされて単独反抗に踏み切ったというのはあります。もっとも、このことを必要以上の美談にするつもりはないんですよ。実際、あの当時に突然の解散というかたちで気持ちが宙ぶらりんなままになっちゃったファンの人たちだってたくさんいただろうしね。そういう面でもここでしっかりと終わらせることに意味があると思うし、自分にとってもここでどうケジメをつけていくのか? っていうのは、こんなふうに20年もロック・バンドをやるような人生になった以上、無視できない大事なことだったんです。そして、やるからには(デビューから)20年後にゼリ→の看板を掲げた俺は何を歌うのか。そこを自分自身でも知りたくなった、っていうのもまた紛れもない事実ですね。

-なお、今年の夏からはゼリ→の復活に向けてオール・タイム・ベスト盤『BAD PHILOSOPHY』がWEB通販限定販売となっておりましたが、それに次いでこのたびは新しいミニ・アルバム『+×』も発表されることになりました。今作には、コーヘイさんのことを思いながら作られたという「キミのヒビ」や、あのマイナビBLITZ赤坂公演の直後に歌詞を書かれたことが窺える「悪魔の証明」、赤裸々すぎるほどにドキュメンタリティの高い「STAY DREAM」など、それこそ圧倒的な視点から描かれた楽曲たちが満載となっておりますね。

単独反抗=ひとりでやることになった、という事実が今回のアルバムにおいてはかなり影響したと思います。当初4人で復活させようとなったときには、作品を出すのであればゼリ→が2008年に出した7枚目のアルバム『FIRE ARROW』の延長線上で出すものとして作ろう、というプロットも実はあったんですよ。だけど、ひとりでやるとなればそこを追求する必然性はないわけで。むしろ、"なぜ、俺はひとりでもゼリ→という看板を掲げるのか"という点を掘り下げていく必要が出てくるわけですよ。

-たしかにそうですね。

普通に新しいことをやりたいだけなら、わざわざゼリ→という看板は要らないし、そんなのはソロでやればいいことなわけでしょ。今こうして俺がひとりでゼリ→をやるならパンク・ロックだろうなと思ったし、結局のところパンク・ロックってなんなんだ? っていうことにも、改めて向き合いたかったんです。なんだかんだで、俺が今までやってきたことも、そことの距離感を常に考えたきたところがあるんですよ。