LIVE REPORT
BUZZ THE BEARS
2013.10.23 @渋谷O-WEST
Writer 山口 智男
桑原 智(Dr/Vo)が風疹にかかってしまったため、止むを得ず延期された2ndシングル『声』のリリースを記念するワンマン・ライヴの振替公演がついに実現した。
最初に予定されていた7月18日から3ヶ月。他の誰でもない、バンド自身がこの日が来ることを待ち望んでいたにちがいない。彼らのそんな想いは"2nd Single Release Oneman Show LIVECAGE 2013 -Revenge-"というタイトルやステージに現れるなり、越智健太(Gt/Vo)が開口一番に言った"リヴェンジさせてもらうぜ!"という言葉にもはっきりと表れていたはずだ。
オープニングは昨年リリースしたミニ・アルバム『燦燦』のトップを飾る「ブルースカイ」。オープニング・アクトを務めたRADICAL RADIOの熱演によってウォーミング・アップをすっかり済ませていた観客の反応は上々だ。この日を待ち焦がれる想いはファンも同じだったようだ。"踊れ!踊れ!"と越智が客席を煽りながらメロコア・ナンバーをたたみかけた序盤で、早くもこの日の流れは決まってしまったと言ってもいい。
本当に、いいライヴだったと思う。
エネルギッシュながらもタイトな演奏に裏打ちされたバンドの熱演と、それを受け止めた観客の熱狂的な盛り上がりに加え、この日のライヴには大きな感動があった。もちろん、バンドの熱演だけでも十分に楽しめたとは思う。"泣きの新世代メロディック・パンク・バンド"と謳われ、めきめきとロック・シーンで頭角を現してきたBUZZ THE BEARSの現在進行形の勢いを感じ取ることはできただろう。
しかし、振替公演という決して珍しくないシチュエーションを特別なものにしたのは、彼ら3人の1回1回のライヴに対する真摯な取り組み方とファンをはじめ、自分たちを支えてくれる人たちへの感謝の気持ちだ。
ミュージシャンなのだから、そういう気持ちは熱演で表現すればいいと思う。しかし、この日の彼らはそれだけでは足りなかったのだろう。何度も何度も"ありがとう"と自分たちの気持ちを言葉で表した。そして、越智は"いつまでもこの日を忘れない"と言った。
7月のライヴが10月に延期されたことで、思いがけず9月18日リリースの2ndフル・アルバム『GOLDCAGE』の収録曲も聴けたことは、ファンにとってはラッキーだったと言ってもいい。しかも、現在、バンドは"GOLDCAGE" RELEASE TOUR -GOLD RUSH TOUR-の真っ最中だ。リヴェンジを果たすという気合に加え、万全のコンディションで臨んだ最高のライヴだったことは言うまでもない。アンコールを含め、全24曲を演奏したセットリストは新旧の代表曲を網羅しながら、現在進行形のバンドの姿を印象づけるものだった。
「約束」他、人気曲をずらっと並べた終盤は、ほぼ全曲が観客のシンガロングで盛り上がった。シンガロングは曲の浸透度の表れと考えてもいい。ステージと客席が歌を介してひとつに繋がった光景から、BUZZ THE BEARSの歌――特に日本語で歌う曲がファンの心の深いところに突き刺さっていることは一目瞭然だった。なぜ、今、彼らが大きな注目を集めはじめているのかが理解できた。
この日、筆者が目の当たりにしたシンガロングの輪は、これからもっともっと大きなものになるにちがいない。ライヴ延期のリヴェンジを見事に果たしたこの日のライヴはそんなことを確信させたのだった。
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