INTERVIEW
SERRA
2025.10.21UPDATE
2025年10月号掲載
Interviewer:サイトウ マサヒロ
その歌声は闇夜を切り裂く一筋の閃光となって、迷える僕たちを未来へ導く。2018年から約3年間、ラウドロック・バンド SALTY DOGの2代目ヴォーカリストとして活躍し、現在はソロ・シンガーとしてアニメ・タイアップを含む幅広い活動を展開しているSERRA。今年8月にリリースされた待望の1stアルバム『Dawn Light』は、得意とするアグレッシヴなロック・チューンを中心に多方面から彼女の歌声にスポットライトを当て、その反射光がこの先に歩む道を明るく照らしている。
私の歌で喜んでくれる人のためになるなら、痛みを抱えても歌い続けたい
-SERRAさんは激ロック読者にとって、SALTY DOGのヴォーカリストとしてもお馴染みなのではないかと。改めて、ソロ・デビューの経緯について聞かせてください。
2021年10月にSALTY DOGとしてのラスト・ライヴ([SALTY DOG LAST ONEMAN LIVE "ラグナロク"])を行うまで、約3年間活動していたんですけど、そこで何かを為せた実感がなかったんです。バンドがコロナ禍で動きにくかったっていうのもあったんですけど、結果を出せなかったことがすごく心残りでした。目標としていたZeppのステージに立てなかったですし。だからZeppに立てるくらい大きな存在になって、そこでSALTY DOGをもう一度復活させるために、まずはソロ・デビューしようと思いました。
-他のバンドではなく、あくまでソロでのキャリアにこだわったのは?
SERRA(※バンド加入時は"SERA")はそもそもSALTY DOGが生んだ存在なので、どこか別のバンドに所属するということはハナから考えてませんでした。バンドはもうSALTY DOGでお腹いっぱいです(笑)。
-2022年のソロ・デビュー以来幅広い活動を展開してきましたが、SERRAさん自身はこの約3年間をどう振り返りますか?
とにかく目まぐるしくて、いろいろなことがあったなと(笑)。その中で自分ができることを選択して、ガムシャラに走ってきて。そうして試行錯誤しながら、1つの目標だったアルバムのリリースに辿り着けたのは嬉しかったです。
-バンドからソロへと形態が変わったことで、個性を確立するための苦労があったと思います。SERRAさんらしさはどう見つけていったのでしょう?
時間がかかりましたね。自分の魅せ方についてはすごく考えてきましたし。結局はもう歌うことしかできないというか。そこでSNSに投稿し始めたアカペラ動画が伸びたおかげで、自分の歌声だけでも勝負できると思えたのは大きかったです。
-アカペラが評価されたことで、声こそが最大の個性だという自信が付いた?
はい。
-活動の中でターニング・ポイントになった出来事はありますか?
長年の夢だったアニメ・タイアップ(※TVアニメ"彼女が公爵邸に行った理由"エンディング・テーマ「Always and Forever」)をいただけたことですね。私は水樹奈々さんを尊敬しているので、アニソンの世界には強い憧れがありました。そして、テレビで歌声が流れて、私の名前が載って、それがきっかけでたくさんの方に知ってもらえて。次なる目標はオープニング・テーマを歌わせていただくことですね。
-水樹奈々さんへの憧れは、先程話していた大きな舞台で結果を出すことへのこだわりにも繋がるものなのでしょうか?
そうですね。初めてライヴを観たのが水樹奈々さんの東京ドーム公演で、大きなステージで歌う姿に惹かれました。すごい大きい乗り物に乗ってたり、空を飛んでたり、とにかく派手なパフォーマンスがカッコ良くて。あんなふうにみんなを感動させて、夢を与えられるような存在になりたいなと思っています。
-では、SERRAさんのライヴ・パフォーマンスにも水樹さんからの影響が?
SALTY DOG時代の初期は派手派手なドレスを衣装にすることが多くて、奈々さんみたいになりたい欲が出てたのかもしれないですね(笑)。"世界観!"っていう感じで。
-ラウドなバンドのヴォーカリストにしては珍しいかも。
当時はTOMOYA(Ba/Scream)さんが煽りを担当してくれていたので、ライヴの盛り上がりと世界観を両立できてたのかなと思います。
-となると、やはりバンド時代からソロにかけてライヴのやり方にも変化がありましたか?
変わりましたね。自ら煽ることに慣れるまで時間がかかりましたし、今もどういうライヴ作りをするかについては試行錯誤しています。楽曲のどこで盛り上げて、どこで世界観を作るかっていう。
-そこは決め込んだ上でステージに臨むと。
はい。がなって煽るカッコいいやり方に憧れるんですけど、それがなかなかできなくて(笑)。徐々に、カッコいい煽りを身に付けられたらいいなと思ってます。
-近年では香港とタイでの海外公演も行っていますが、手応えはいかがでしたか?
すごかったです。香港では、70名のオーケストラとともに歌わせていただきました。カバーやオリジナルを歌ったんですけど、とにかくリアクションが大きくて。曲が終わるたびにお客さんが足をバタバタさせて"SERRAー!"みたいな(笑)。私の存在が国境を越えて受け入れられているっていうことに現実感がなかったんですけど、その声を聴いたときにようやく音楽が届いているっていう実感を得られて感動しました。タイではアニメ・フェス("AniEx Rainbow 2024")に出演させていただいたんですけど、デビュー曲の「EYERIS」(2022年リリースの配信限定シングル)で知ってくださったっていうリスナーの方もいて、徐々にSERRAの音楽が広がっているんだなと思いました。
-サブスクやSNSの力を感じますね。
私にとって数字というのはだいぶ強敵なんですけど、積み重ねることで大きな結果になるんだということをそのときに学んだので、やって良かったと思いますね。
-ちなみに、例えばアカペラの動画においては、数字を伸ばすためにどんな工夫を?
すぐスワイプされないように、歌い出しを動画開始のギリギリまで詰めること。スワイプする前の1秒に滑り込んで、"ちょっと待って!"って手を止めてもらえるように意識してました。
-さて、8月27日にリリースされた1stアルバム『Dawn Light』について、改めて作品のコンセプトをご説明いただけますか?
タイトルは"夜明けの光"という意味です。これまで、自己嫌悪を抱いたり、自信を失ったりする瞬間がよくあって。結果が出せなくて、もうやめちゃおうかなと思うこともあったんですけど、それでも夢を諦められなかった。そんなときに、私にとっては歌うということが光で、希望のようなものだったんです。暗闇の中にいる状態から救ってくれた歌が揃っているアルバムだから、この名前を付けました。
-アカペラ動画でもランタンを手に持ってましたし、"光"や"灯り"はSERRAさんにとって一貫して重要なモチーフですよね。
ランタンを持ったのは、SNSでの発信をするにあたって、ただ歌うだけじゃなくて目を引く小道具を用意してみようっていうのがきっかけだったんですけど(笑)、たまたまではありつつも必然だったように感じます。自分がずっと求めているものが光なんだっていうことを、可視化してくれているようで。
-SERRAさんが表現するのはいつも、眩しい太陽のような光じゃなくて、暗いところに差し込むような一筋の光ですよね。
まさにそうですね。私の視界もそうで、普段は暗いけど光が差し込むと前が見える(笑)。蝋燭の炎のような、人の温もりのような光をもっと身近に感じたい、聴いていると熱量を感じられるような楽曲を作っていきたいっていう思いがあるのかなぁ。ネガティヴなことも歌詞にするんですけど、最終的には救われたいし、希望を求めて歌ってるのかなと思います。
-その光は暗いところにいたからきれいに感じられるものだし、温もりも冷たいところにいたからこそありがたみが分かるものです。
影がないと光はないっていう表裏一体なところがありますし、私自身そういう経験がなかったらこの作品を作れてなかったので。人生の一部を切り取りつつ、諦め切れないなりたい自分の姿を描いたら、それが光になったのかなと思っています。
-この作品も、ネガティヴな気持ちを抱えている人に届けたいという思いが強いのでしょうか?
自分と同じような気持ちになってしまう人を"大丈夫だよ"って支えられる作品になったらいいなと思っています。『Dawn Light』には、"あなたの夜が明けますように"という意味も込められてますね。
-では、せっかくの激ロックですので、ヘヴィでラウドな楽曲について聞かせてください。オープニング・トラックの「EYERIS」はメジャー・デビュー曲ですが、どういった思いで制作されたのでしょう?
責任重大なデビュー曲なので、どんな楽曲にしたらいいかをすごく考えながら作りました。とにかく自分の歌声を届けたいという気持ちが強かったので、そこから"僕の声よ導いて"というフレーズが浮かんで、これで行こうと。SERRAの活動のプロローグのような楽曲になりました。速いテンポとラウドなサウンドはSALTY DOGの名残でもあるというか、最初の1曲目はかつての活動も引き継ぎたくて、こういった曲調になっています。
-SERRAさんの覚悟が刻まれた一曲ですよね。個人的には"誰かの為に痛がりたいんだ"という一節が印象的で。信頼して身を委ねられるシンガーだなと思える言葉です。
SERRAは自分だけのものじゃなくて、応援してくれる方、私の歌で喜んでくれるお客さんがいてくれるのだから、そういう人のためになるなら痛みを抱えても歌い続けたい、という強い思いがありました。
-アルバムには"Re:Mix"としてシングルと異なったミックスのバージョンが収録されていますが?
シングルはより歌を押し出したアニソン・テイストのミックスだったんですけど、今回はよりバンド・サウンドを強調したロック・テイストになっています。私の軸にあるものをより引き立たせて、楽曲に新しい味が出ましたね。アルバムの1曲目として、すごく印象的な音になったのかなと思います。リミックスをお願いした中谷浩平さんはMY FIRST STORYさんの楽曲を担当されていて、ぜひ激ロック読者の皆様にはこちらの"Re:Mix"バージョンを聴いてほしいです。