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INTERVIEW

ヒッチコック

2023.12.26UPDATE

2023年12月号掲載

ヒッチコック

Member:八咫 烏(Vo) 月(Gt) 光 -kou-(Gt) 宵(Ba)

Interviewer:長澤 智典

最新ミニ・アルバム『deep under』を12月27日にリリースするヒッチコック。"愛"を題材にした楽曲を中心に収録した本作――ただし、病み/闇な心情を描くことの多い、精神的に歪んでいるヴォーカリストの八咫 烏の書く歌詞だもの、そこには普通の恋愛観は記されていない。むしろ、愛するがゆえに、どんな悲劇的な結末へと陥ったのか......そこに注目しながら聴いてほしい。12月12日からは東名阪を舞台にした"ヒッチコックワンマンツアー 『MORE DEEP UNDER』"がスタートし、ファイナル公演は2024年2月17日の新宿BLAZE。ここでは、最新ミニ・アルバム『deep under』に収録した曲たちの話を中心に、ヒッチコックというバンドの持つ魅力をお伝えしたい。

-配信を中心にとはいえ、めちゃめちゃ楽曲をリリースしていません?

八咫 烏:盤でのリリースは、今年7月に出したミニ・アルバム『シアターオブダークフィルム』が初。12月に発売するミニ・アルバムの『deep under』が2枚目だから、まだ全然数は多くないです。ただ、昨年は12ヶ月連続で1曲ずつリリースするなど、言われたように配信を通してはコンスタントに出しています。

-ヒッチコックが活動を始めたのが......。

光:2020年からになります。ただ、コロナ禍でのスタートだったので......。

八咫 烏:"始動します"と宣言した日が、ちょうど日本で最初の感染者が確認された日。

宵:始動しようにも動けなかったし、予定が一気に狂いました。

八咫 烏:始動から思い切りガーンと攻める計画を立てていたのに、内容の変更どころか、いきなりライヴができない状態からのスタートでしたからね。

-だからこそ、音源に力を入れていたわけだ。

八咫 烏:いや、そういうわけでもなく。始動へ向けて楽曲を多くストックすれば、会場限定盤として『未定』を作っていた程度。そのあと(2021年)に販売はしましたけど、会場限定盤の販売さえも最初は未定になってしまうという状態からのスタートでした。

-ということは、最近になって作品を重ねだしている?

八咫 烏:そうですね。

-それだけ、楽曲が次々と浮かんでくるわけだ。

八咫 烏:うちのバンドには八咫 烏、光、月と3人の作曲者がいるぶん、各自思いついた曲を作っては持ち寄ることも多かったり、"こういう楽曲が欲しいな"となったときに、その表情を得意とする人が作ってくる形で創作を進めたりしています。それと、動きを止めたくない意識から次々と曲を作り続けていることも、作品化へ繋がっている理由のひとつにはなっていますね。

-3人の作る楽曲の色にも興味があります。

八咫 烏:3人とも、色はだいぶ違いますね。"ザ・ヴィジュアル系"という楽曲は僕が担当。聴き心地のいい、ちょっとテクニカルな楽曲は光が、明るめでポップな感じや万人受けする楽曲は月が作ることが多いですね。

-曲調はそうでも、歌詞は八咫 烏さんがすべて書いています。どの楽曲の歌詞もトチ狂ってるというか、 かなりヤバい人(サイコパス)感が出ていますよね。

八咫 烏:そうですね(笑)。明るい曲ほど歌詞を暗くしたいというか、明るい曲の中でイカれたことを言っているのが面白いかなと思うので。基本、誰かを殺したい願望はありますね。1曲の中で、ひとりは殺しておかないと気が済まないので。

-約4年で、どれだけ曲の中で人を殺しました?

八咫 烏:新作に収録した曲も合わせて今のところ34曲ありますけど、30人は殺してます。4人くらいしか生きてないですけど、誰ひとり救われてはいないです。歌詞を書く以上は、登場人物の誰か(主に相手)は殺しておかないと。

光:ほとんどがバッド・エンド。ハッピー・エンドがない。

八咫 烏:そうっすね、気持ち良く死ぬか、気持ち悪く死ぬかなので......。

-ハッピー・エンドは望まない人?

八咫 烏:自分自身がハッピー・エンドな人生を送りたくはないからか、ハッピー・エンドには興味ないですね。別にハッピー・エンドでもいいんですけど、面白くない人生を生きながら、なんとなくハッピー・エンドで人生を終えるくらいなら、バッド・エンドのほうがいいなと思います。大切なのは、生きてゆくその過程の中での激動さなので。それに自分では人を殺すことを体感できないからこそ、歌詞の中ですぐに人を殺しちゃうんですよね。今はSNSの時代なんで、どうせ死ぬんだったら、バズって死にたいです。

-宵さんも、八咫 烏さんの書き記す世界観に共感している人?

宵:むしろこうでないと嫌っすね。僕は彼に惚れ込んでこのバンドに入ったので、八咫 烏の描き出す世界観はすべて好きです。特に歌詞は、今まで見てきたヴォーカリストの書く歌詞の中でダントツにヤバい。彼の歌詞はわけわからんから好きです(笑)。

-光さんや月さんも、そこは一緒?

光:僕の場合、共感できるか? と聞かれたら、共感できないところもある。共感できないのは、自分からは絶対に出てこないし、出せない内容だから。だからといって、それを否定はしない。むしろ、自分が生み出せないものを生み出してくれるのが嬉しい。八咫 烏も月も、僕には絶対に生み出せない曲を作ってくるからこそ一緒にやっているわけだし。八咫 烏の書く歌詞については、普通に"すげぇな"と思ってしまいます。だから今、このメンバーらと一緒に活動することで、すごく充実した毎日を送れていますね。

月:僕も、自分で歌詞を書けるタイプじゃないので、聴いてて自分では思いつかない言葉や比喩を八咫 烏が使っているからすごいなと思います。

-八咫 烏さんのことを何も知らない人の場合、楽曲を聴いたりMVを観たら、絶対に触れてはいけない人だと思ってしまうんじゃない?

八咫 烏:えっ、こんなに持ち上げてもらえるんですか?? それは嬉しいです!!

宵:いやいや、みんなそう思ってるよ。

-八咫 烏さん、お客さんには迎合しないタイプでしょ。

八咫 烏:そうっすね。僕は、自分のことを嫌いな人は本当に嫌いなので。自分のことが嫌いな人にはライヴも観てほしくなければ、曲も聴いてほしくない。自分のことを好きな人にしか興味はないから、別に媚びるようなことはしたくないなと思います。でないと、楽しくやれないなと。

-ヒッチコックにとっての譲れないものも知りたいです。

宵:僕ら、ヒッチコック=八咫 烏だと思っているからこそ、彼の存在は決して譲れない。だから、そこじゃないですかね。

-楽曲を作る際にも、八咫 烏さんの世界観をどう生かすかを考えながら作る形ですか?

光:考えるんですけど、たとえめちゃめちゃアイドルのようなポップな曲を持っていっても、ちゃんとヒッチコックの世界観へ落とし込んでゆく彼の才能はすごいなと思ってる。つまり、八咫 烏という存在さえいれば、どんな楽曲を作ってもヒッチコックの世界観に染め上げてくれる。そこへ信頼を置いているからこそ、無理矢理考えたり意識することはほとんどないです。

月:そこは僕も一緒です。作っているときに"明るくしすぎたかな"と思う曲でも、いざレコーディングを行い、歌を入れたら、ヒッチコックの世界観にしっかりと染まっている。そこは八咫 烏にしかできないことだなと思っています。

八咫 烏:それこそ、月の作った楽曲が明るすぎたから、月が社長に"作った曲、明るすぎますよね"と聞いたら、社長が"大丈夫だよ、八咫 烏が歌うから"と言われたこともあったように、みんなすごく嬉しいことを言ってくれるんですけど、"本当に大丈夫かな?"と思うときはありますよ。そう言いつつも、僕の感じたままに表現するだけだから、どんな楽曲が来ようと別にいいんですけど(笑)。

月:結果、大丈夫になるからね。

宵:どんな曲調だろうと、最後に八咫 烏がヒッチコック色に染め上げてくれる安心感がありますからね。

八咫 烏:最新作『deep under』に入っている「恋のチャンス」で僕はストレートに純愛を書いて伝えたつもりでしたけど、メンバーにはそういうふうに伝わらなかったように、そういうときもありますけどね。僕からしたら「恋のチャンス」は、すごく素敵で前向きな、新しい恋をして駆け抜けようという気持ちのラヴ・ソング。最初の歌詞の時点では、相手を殺していなかったんですよ。だけど書き終えたあとに"納得いかんなぁ"と思えて、"殺すか......"、"やっぱ、殺してないとちゃうなぁ"と思って殺したのも、伝わりにくかった理由としてあるかもしれないけど......。