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INTERVIEW

ヒッチコック

2023.12.26UPDATE

2023年12月号掲載

ヒッチコック

Member:八咫 烏(Vo) 月(Gt) 光 -kou-(Gt) 宵(Ba)

Interviewer:長澤 智典

-最新作『deep under』に入っている楽曲はラヴ・ソングが中心ですよね。

八咫 烏:そうですね。僕は妄想が大好きなので、妄想から歌が生まれることが結構多いんですけど、そのときの妄想の主人公が男か女かで、歌詞の主人公も変わる感じで書いています。

-今回収録した曲たちには、男性目線と女性目線を通して、それぞれの心情を書いていますよね。もしや、どの曲も関連性を持っています?

八咫 烏:無意識の中でストーリー性ははあるのかもしれないけど、意識的に考えたことはないですね。

-特に、テーマ性を持って作ったわけではないと。

八咫 烏:1曲ごとにストーリーはありますけど、すべてを連動させているわけではなく、同じ監督や作者が作っている、一曲一曲の異なる話が詰まっている短編集と思ってもらえればいいのかもしれない。「タヒ」以外、今回はどの曲も愛について書いています。

-「タヒ」とは、"死"のことですよね。

八咫 烏:それをまんま書くと、コンプライアンス的に引っ掛かってしまいそうなので(笑)。

宵:今の時代、そういう表現を表に出していくのが難しくなってきている感じがするんで。

光:だから、なんか言われる前に抑えられるところは自分たちで抑えておこうという、ちょっとだけ気にした結果がそうなった形でした。

八咫 烏:そうっすね。とりあえず気にしてみた......。

-今は、表現する言葉もいろいろと選ぶ必要性が出ている時代なんですね。

八咫 烏:歌詞は聴かないとわかんないからいいかなと思っていますけど、タイトルはね。

月:そう。タイトルは曲を聴かなくても一発でわかっちゃうから。

八咫 烏:自分の場合は歯止めというか、止めてくれる人がいないと、とんでもない歌詞や曲名にしてしまうことが多いので。事実、"このタイトルはどうですか?"と社長やメンバーに聞くと、"さすがにそれはやめたほうがいいんじゃない?"、"言いたいことはわかるんだけど、聴ける人が少なくなっちゃうから"と言われると、そこは聴いてほしいから嫌なので、直すこともあります。ちなみに「タヒ」は、歌詞の内容だけを言ったら、コンプラにひっかかるような言葉しか言ってないです。

-「タヒ」はいろんな意味で過激な楽曲ですからね。

八咫 烏:人間の欲望を叶えてあげる曲です。昔からそうですけど、SNSだろうと現実だろうと、人に"死ね"と言うのはダメじゃないですか。でも、人間誰しもムカついたときに、"こいつ鬱陶しいなぁ、死ねよ"とか言いたくなるじゃないですか。でも言っちゃダメだから、みんな言わないで心の中で止めている。それを合法的に、ライヴ会場で思い切り感情を吐き出せる曲にしようと思って。だから、"死ね"しか言ってないです(笑)。とにかく、お客さんらに"死ね"と叫べる空間を作ってあげようと思って作ったのが「タヒ」になります。

光:合法的に中指を立てれる場所を提供するよと。

八咫 烏:そう。ライヴハウスという合法的な場で、中指を立てて"死ね"と叫べる楽曲です。

-最新作の『deep under』では"愛"を題材に据えた楽曲を詰め込んでいますが、前作の『シアターオブダークフィルム』はそこまで"愛"を題材にはしていなかったのではという記憶もあるのですが......。

八咫 烏:いや、僕はほとんどの曲で愛について歌っているつもりですけど。でも、ちょっと歪みすぎてあまり伝わらないことはたしかにありますね。一応、僕なりにですけど、全部愛について歌っています。

-それは失礼しました。『シアターオブダークフィルム』を出したのが今年の7月。『deep under』が12月ですから、立て続けのリリースになりますよね。

光:ほぼ間は空けてないですが、決して流れを持ってではなく、区切りを持って1枚1枚の制作には向かっています。

八咫 烏:僕自身が突発的なタイプの人間なので、止まっちゃうと楽しくなくなっちゃうというか。常に何かを作って、何かを発信し続けたい欲があるからなのかもしれないですね。

-ここからは、ミニ・アルバム『deep under』に収録した曲たちの魅力を探りたいなと思います。冒頭を飾ったのが、インスト曲の「delete」です。

八咫 烏:僕らはお客さんのことをサイコと呼んでいるんですけど、今までのヒッチコックにはだいぶ静かめなSEが多かったことから、そうではない、サイコたちのテンションが上がるような、しかもひと昔前のヴィジュアル系バンドが好んでいたような感じのSEにあえて仕上げました。

光:今回の作品全体やヴィジュアル面もそうですけど、ひと世代前のヴィジュアル系バンドを意識しています。

-続いてが、MVも制作した「DEEP UNDER」ですね。

光:この曲も、ひと昔前のヴィジュアル系バンドを意識しています。耳馴染みのいいというか、スッと耳に入ってくる王道な感じの曲になっています。言ってしまえば、昔からヴィジュアル系という音楽が好きな人にこそ、特に刺さる曲を意識して作りました。

月:この曲では、昔のヴィジュアル系バンドがよく弾いていたであろうフレーズも匂わせているから、刺さる人には刺さる曲。この曲はかなりイケるなと、僕は思っています。

宵:「DEEP UNDER」は、かなり男心をくすぐる曲調。歌詞も男性目線からの愛を書いているから、共感する男性は多いのかなと思う。僕にとっても、愛は一番大事なもの。僕の中で、何よりも一番大事にしているのが愛。僕は愛によって全部が形成されています。

月:おいおいおい、いったい何を言ってるんだ(笑)。

八咫 烏:どの曲もそうだけど、この曲にも、ただの愛を書いているわけじゃない。歌詞に書いた"愛"というひと言に対して、どれだけの意味や想いが詰め込まれているのか。この愛は何を指しているのか。それを、それぞれの解釈で歌詞を読んで考えてくれたらなと思ってる。歌詞の中の"愛"を全部"「愛」"と表記したのも、愛について何かを考えてもらえたらなという思いから、そうしています。

-3曲目が「恋のチャンス」になります。この曲の最後が衝撃的というか......。

八咫 烏:これは女性目線で書いています。この曲では最後に結ばれるので、そんな不安にならなくても大丈夫です。

-でも、だいぶ歪んだ愛の形ですよね。

八咫 烏:いや、純愛ですよ。

宵:僕は、こんな女性にこそ愛されたいなという感じですね。僕はこの終わり方、いいなと思います。これだけ愛してくれるのなら。この曲に書いてある結ばれる意味もわかるので。

八咫 烏:AKB48顔負けだからね、この歌詞は。

宵:この曲なら、"(NHK)紅白歌合戦"に出れるんじゃないかな。

光:「恋のチャンス」は僕が曲を作ったんですけど、この曲、タイトル先行なんですよ。タイトルを読んだとき、めちゃめちゃポップな曲にしてやろうと。なので、これだけちょっと曲調やサウンド感が違います。だけどそれが逆にいい味を出している。最初は"これ本当にいけるか?"という不安もあったけど、レコーディングのときに八咫 烏が歌入れをしているのを聴いてたら、逆に"めちゃめちゃいいんじゃないか"と思って。僕的にはいち押しの楽曲です。