DISC REVIEW
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冒頭を飾ったインスト曲を除く5曲中、4曲が"愛"をテーマにしている。ただし、何事においても天の邪鬼なヒッチコック。まして、サイコパスな傾向も見える八咫 烏(Vo)が書く歌詞だもの、通り一遍の"愛"のあり方などひとつとして記されていない。「恋のチャンス」や「メサイア」と、女性の目線で記した、愛するがゆえの感情が辿り着いた凄惨な悲劇。「涙終哥」には、愛した人に涙する男性の姿が記されているが、そこにもバッド・エンドゆえの涙の物語が語られている。歪んだ愛の姿を書いた「DEEP UNDER」。「タヒ」では、公共の場では憚られる言葉を叫び続けるなど、"好き"を突き詰めたがゆえの悲劇の物語がいろいろと詰め込まれている。2010年代のヴィジュアル系音楽の曲調が多いところも、当時のV系音楽好きの心を刺激する嬉しい要素だ。 長澤 智典