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INTERVIEW

THE STARBEMS

2023.11.29UPDATE

2023年12月号掲載

THE STARBEMS

Member:ヒダカ トオル(Vo/Gt/Prog) 落葉(Support Gt)

Interviewer:フジジュン

ヒダカトオルを中心に2013年始動、今年結成10周年を迎えたTHE STARBEMSが5thアルバム『Gazillion』をリリースする。2018年にメンバー3人が脱退し、現在はライヴやレコーディングにサポート・メンバーを迎えて活動している同バンドの約6年ぶりとなる最新アルバムは、ヴォーカル、ギター、プログラミングを務めるヒダカの抜群のポップ・センスと変わらぬパンク・アティテュード、そして広く深い音楽知識が存分に反映された濃密濃厚な1枚だ。ポップとハードコアを同時に体現した、キャリア最高傑作と言える今作。前作(2018年リリースのフル・アルバム『STAY PUNK FOREVER』)以降の約6年間に起こったこと、そしてアルバム収録曲について、ヒダカとサポート・メンバーの落葉に訊いた。


みんなとユナイトしやすくなった現在だからこそ、ジャンルを超えてクロスオーバーしていきたい


-THE STARBEMSとしては、『STAY PUNK FOREVER』以来約6年ぶりのアルバムの完成です。現在、正規メンバーがヒダカさんひとりで、サポート・メンバーを入れての作品となって。抜群のポップ・センスと変わらぬパンク・アティテュードと広く深い音楽知識を持ったヒダカさんの色が、より濃く出たアルバムになりましたね。

ヒダカ:2018年にテイチク(エンタテインメント)から『STAY PUNK FOREVER』を出して全国ツアー([THE STARBEMS releasing party "STAY STREET FOREVER"])をやったんだけど、その頃はスタッフも少なかったんで、俺がライヴハウスに電話してブッキングするという、手作りツアーな感じで。それはそれで楽しかったけど、そのツアーでメンバーが3人脱退して、ベースの潤(山下潤一郎)だけ残ってくれたんだけど、潤は腰痛が酷くて活動休止状態になって。2019年の夏くらいにドラムのミンゾク(安部川"ミンゾク"右亮)とベースの(中野)功一を紹介してもらって、3人でやり始めたらコロナが流行り始めて。前作以降はメンバーが入れ替わり立ち替わりして、パンデミックになったり、いい思い出や記憶はあまりないですね(笑)。

-今作で一番古い曲が、2020年6月にデジタル・リリースした「Communist Girl」です。

ヒダカ:コロナ禍だから、曲作らないとやってられないなと思って。どんな暗い曲ができるかな? と思ったら一番明るい曲ができたから、やっぱり俺、頭おかしいか、天邪鬼なんだろうなと(笑)。あの頃はとにかく外に出たいから、そんな気持ちが出たのかな? と思ったり。無理矢理配信でアコースティック・ライヴとかスタジオ・ライヴをやったけど、やるほうも観るほうもすぐ飽きちゃうんだよね。だからそのあとに出した「All Falls Down」は配信ライヴ疲れもあって、いっそ逆サイドに振って盛り上がれない曲を作ってやろうと思って、得意のギター・ポップでしっとりした曲にしたんです。もう、半分あの状況に対する嫌みですよね。天国から地獄に落とされたって感じで、歌詞もとことん暗いし。コロナ禍真っ最中で、一番落ちてる時期に書いた曲だったからね。

-そういった部分も含めて、ヒダカさんの個の部分がはっきり出た曲も多いです。

ヒダカ:実質ソロ作品みたいなもんだってTwitterでも言われたし、たしかにそうっちゃそうだけど。俺の作った曲に、落葉も頑張ってギター・アレンジしたよね? そうでもないっけ(笑)?

落葉:そうでもないですね(笑)。

ヒダカ:言う通りに弾けないところは、自分の味でやるみたいな。

落葉:そうですね、弾けないところは誤魔化しながらやって。

-誤魔化しながらは言い方が悪いです(笑)。

ヒダカ:ベースの功一は以前から弾いてくれてたから、勝手をわかってくれて。デモにもベースを入れないで渡したら、いい感じにアレンジしてくれたからすごく助かったね。

-今作を聴いて、ヒダカさんを突き動かす原動力は変わらず"音楽愛"とパンクな"怒り"にあるなと思って。それを直情的に表現するだけでなく、ポップに昇華して様々なアプローチで表現できてるのが素晴らしいと思いました。

ヒダカ:たしかにずっと怒ってるよね。笑いながら怒ってます、竹中直人ばりに(笑)。

-「u & i」も世界情勢に対する怒り、憂いがあって。すごく優しくてエモい曲ですけど、根っこにあるのは怒りです。

ヒダカ:そうですね。一見優しくはあるけど、その奥には怒りがあって。どの曲もパンク・ロック的な、怒りがベースですね。世界ではどこも戦争が続いてることを考えると、この国はまだ恵まれてるほうなんでしょうけど。今ややこしいのはそこに陰謀論やフェイク・ニュースもあって、何が正解か、何が正義かわからないことで。"右も左もいいから、みんなでやろうよ"っていう気持ちのアルバムかもしれないなって、自分で聴いても思います。

-歌詞にもそんなメッセージが込められてますし、今作を通じて、自分の正義や自分の好きなものを信じて貫くっていう姿勢も見せられていると思います。

ヒダカ:あと、今は共存したいと強く思ってて。アイドル事務所に所属しているパンク・ロッカーの自分がいて、事務所の人は優しくしてくれるし、アイドルとの関係もすごく良好だし、ツアーに行けば各地にいろんな人、いろんなバンドがいて、若いバンドにも同じヴァイブスを感じるやつらがいて。コロナ禍を乗り越えて、ジャンルを越えたみんなとユナイトしやすくなった現在だからこそ、そういうやつらと共存していきたいんです。

落葉:それは感じますね。同じ難局を乗り越えたやつらが"今音楽をやれてることがありがたい"という気持ちでやれてるから。もはやジャンルとか関係ないって思います。

ヒダカ:だからこそ、アルバムも全曲メロコアとか、ハードコアとかにしたくなくて。聴く人によっては何がしたいかわからないかもしれないけど、作り手としてはめちゃくちゃ筋が通ってて。それを説明するのは難しいけど、対バンやイベントの雰囲気で説明することはできるし、何よりそのほうが楽しいんで。今は落葉の仲間のラッパーとも対バンしたり、いろいろクロスオーバーしていきたいなと思ってます。我々が通ってた90年代のライヴハウスってそうだったじゃないですか。Hi-STANDARDがいて、BEYONDSがいて、COKEHEAD HIPSTERSもいて。全然ジャンルが違ったけど、それが交わることで化学変化が生まれたし、それが面白かったし。

-たしかに。今こそユナイトして、そういったことをやりたいと。アルバムの話に戻すと、これまでリリースした曲に加えて、アルバム用の新曲も収録されています。

ヒダカ:一応アルバム全体のバランスは考えました、"デジタルな曲欲しいな"とか"もっとハーコーな曲が欲しいな"とか。そういうのを計算できるようになったっていうのが、大人になりましたよね(笑)。