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INTERVIEW

EVANESCENCE

2023.11.17UPDATE

2023年12月号掲載

EVANESCENCE

Member:Amy Lee(Vo/Pf)

Interviewer:井上 光一 Translator:原口 美穂

"SUMMER SONIC 2023"での熱演も記憶に新しい、ゴシック・ロックのカリスマ的存在であるEVANESCENCEが2003年に世に送り出した、衝撃的なデビュー・アルバム『Fallen』。アメリカだけで1,000万枚もの売上を記録、後続のバンドたちに多大なる影響を与えたモンスター・アルバムの20周年記念盤が、このたびリリースされる運びとなった。本誌では唯一のオリジナル・メンバーであるAmy Leeにインタビューを実施。当時の心境やアルバムに対する彼女の想いなどを大いに語ってもらった。

-まずは今年の8月に開催された"SUMMER SONIC 2023"についてお聞かせください。バンドとしての来日は久々でしたよね?

本当に最高だった。日本は私たちにとって特別な場所だから、戻ってくるのがいつだって楽しみなの。今ベースを担当しているEmma(Anzai)は、実は日本人とオーストラリア人のハーフで、彼女は学生時代を日本で過ごしたのよ。でももう何年も日本に帰っていなかったから、Emmaを日本に連れてきて日本で演奏することは、彼女にとっても私たちにとってもすごくクールなことだった。だけど、今回は時間が短すぎて全然足りなくて。あと2日間くらいは欲しかったよね、なんて言いながら、みんな名残惜しそうに帰って行った。本当にあっという間だったわ。

-あなたは以前本誌のインタビュー(※2021年3月号掲載)で"日本は私たちにとってとてもスペシャルなご褒美みたいな場所"と言ってくれていましたが、今回も日本のファンとの強い絆を感じましたか?

もちろん。日本に帰ってくることができるのはいつだって嬉しいし、しばらく帰ってこれてなくてみんなに長い間会えていなかったから、新曲を何曲か演奏できたのはすごく興奮した。あと、今回はフェスのための来日だったから、私たちが知っているバンドや知らなかった新しいバンドにたくさん会えたのも楽しかったわね。

-改めて『Fallen』の20周年記念盤のリリースおめでとうございます! 今の率直な心境をお聞かせください。

何か試練を乗り越えたような気分。本当にたくさんの思い出があるし、今年はその節目となるような、何かを1周したような大きな年だったの。私たちの20周年記念でもあり、アメリカでは『Fallen』が1,000万枚の売上を達成した年でもあったから。あれは本当にクレイジーだった。あとサンパウロで、これまでのキャリアの中で一番大きな単独公演もやったの。20年後、『Fallen』がリリースされたときよりもさらに大きなショーで、さらに多くの人たちを前に演奏できるなんて、本当に素晴らしいことよね。振り返ることもたくさんあったし、過去と現在までの直線的ではない時間を感じることもできた。それを踏まえて、すごく美しい未来が待っているような感覚を得ることができているし、ここまで来れたことに心から感謝しているわ。そして、あの作品を作ったことをすごく誇りに思ってる。

-アルバムがリリースされた2003年のアメリカの音楽シーンは、ヒップホップやR&B、ポップスがチャートの上位を占めている時期で、自分たちの音楽がどれほどの人に受け入れられるのかといった不安などはあったのでしょうか。

不安はあったけど、それが理由ではなかった。私が苦労したのは、当時のロックやヘヴィ・ミュージックがとても男性的だったこと。あれは大変だったわね。不安とか恐怖を感じたわけじゃなくて、懐疑的だった。私という女性がいることで、私たちのバンドは他とは違っていたから。

-あなたの圧倒的に素晴らしい歌声と魅力的なメロディを軸として、ヘヴィなサウンドに映画音楽のような重厚で美しいオーケストレーションを融合させたあなた方の音楽性は非常にユニークで、当時似たような音を鳴らしているバンドはいなかったと記憶しています。結果的に『Fallen』は音楽史に残るモンスター・アルバムとなりましたが、これほどの反応があったことを改めてどのように受け止めていらっしゃいますか。

いろいろな要因が重なっていると思うから、どうしてそうなったのかという理由は私にはわからない。タイミングだったり、そのとき起こった偶然の組み合わせだったり。でもひとつ言えるのは、あのアルバムの何かが他とは違っていたということかもしれない。いいとか悪いとかは関係なく、私は自分のヴォーカルはユニークだと思っているの。そして、それがシンプルに目立ったんだと思う。それは今だから言えること。当時の私は、自分のことをいろいろと考えすぎて、自分のいい部分について発言するなんて絶対にできなかった。でも、私の声がユニークであったことは事実だし、私たちが大きな壁を突き破った最初のバンドのひとつであったことも事実。そして、それをメインストリームでやり遂げることができたのは、レーベルが私たちを見つけてくれたからであり、そのことにはすごく感謝しているの。いろいろなことを乗り越えるチャンスを与えてもらったのは、本当にありがたいと思ってる。それと、他のアルバムと比較してこのアルバムがクールなのは、あの再現できない無邪気さだと思う。当時の私たちはまだ子供で、演奏の仕方を学びながら自分の言葉を組み立て、心の絵を描く色彩を繋ぎ合わせていた。その過程で、様々な小さいことを初めて発見していったの。だからある意味、あのアルバムは他の作品と比べてまだ未熟なのよ。でも、その要素があのアルバムを特別な作品にしていると私は思う。

-『Fallen』の収録曲はあなたが10代から20代前半にかけてBen Moody(Gt)と共に書いたものでしたね。痛みや苦しみ、葛藤といった心の叫びが書かれた歌詞に多くの人が共感したということも、EVANESCENCEの音楽が受け入れられた大きな理由のひとつではないでしょうか。

すべての歌詞は本当にリアルで、曲を書いていたときに感じていた気持ちがそのまま強く表現されているの。私にとって歌詞は、自分に何かが起こっているときに、それに対する自分の気持ちを表現できる場所だったから。それは今でも変わらない。歌詞は、すべてを吐き出すことができる私の居場所。当時の私はすごくつらい状況にいたけど、歌詞を書くことでその気持ちを表に出すことができた。私はその場所で嘘をつくことはできない。だからこそ、歌詞はすごく正直な内容になっているし、歌詞を書くことで私は浄化され、癒されていたの。そしてさらに素晴らしいのは、それが私自身だけではなく、他の誰かの人生や葛藤を癒す可能性を持っていることね。

-2022年には「Bring Me To Life」が突然アメリカのiTunesチャートで1位になったことも記憶に新しいですね。あなた方の音楽が流行に左右されない普遍性を持っていることの証明のような出来事だと感じましたが、いかがですか?

曲を普遍的にすることは、私にとって常に重要なことだった。最初から、自分たちの音楽が複数の意味を持っていること、あるいは他の国の人でも理解できる内容であることは、バンドにとって本当に重要だったの。理由はわからないけど、私はいつも世界中の音楽が好きだった。自分の周りにいる人たちが聴いている音楽とは少し違うところとか、そういうところに惹かれたのかもしれないわね。リスナーとして世界の音楽が好きだったから、自分たちの音楽でも国や年代にとらわれないものを作ることは大切だったの。だから1stアルバムでは、その当時の現代的な言葉は絶対に使わなかった。例えば"telephone"とかね。500年前に聴いても500年後に聴いても違和感のないような言葉を使うようにしていたの。当時はそれがルールだった。今では「Call Me When You're Sober」(2006年リリースの2ndアルバム『The Open Door』収録曲)みたいに、そのルールを破った曲もあるけど。でももともとは、それが常に核となるアイディアのひとつだったの。

-『Fallen』はデビュー・アルバムとは思えないほどの完成度の高さですし、オリジナル盤のサウンド・プロダクションは非常に質が高いものですよね。今回20周年記念として新たにリマスターが施されていますが、リマスターにはあなた自身も立ち会ったのでしょうか?

もちろん。私も大きく関わっているわ!

-個人的にはリマスター盤を聴いて、サウンド全体の奥行きや広がりがより感じ取れる音となった印象です。あなた自身はリマスターの際にどのような点を意識されましたか。

最初、『Fallen』のマスタリングを担当してくれたのはTed Jensenだった。彼は素晴らしいスキルの持ち主で、彼は私が望むたくさんのことを叶えてくれるの。あのアルバムの素晴らしさを私はキープしたかったし、ありのままの状態を維持したかった。でも、20年後のテクノロジーを使って、それ以上の何かがもしかしたら可能なんじゃないか? って思ったのよね。だからTedに連絡を取って、"他の人にお願いしたい気持ちもありはするんだけど、あなた自身は、20年経った今、以前できなかった何かができると思う?"って聞いてみたの。そしたら彼が、"そうだね。いくつか考えはあるよ"と答えた。だから、彼と他の人数名に頼んで「Bring Me To Life」をリマスターしてもらったものを、誰がどれを手掛けたかをあえて知らないまま全員の作品を聴いて、一番いいと思うものを選ぶことにしたの。そしたら、偶然にも私が選んだのがTedのものでビックリ! そのとき、やっぱりTedになる運命だったんだって思った。彼と同じ道を歩んでいる気がして、すごくクールだったわ。それに、最初の何枚かのアルバムでプロデューサーを務めてくれたDave Fortmanがリマスターの作業に参加してくれたのも良かった。彼が一緒にいてくれたことは、私たちふたりにとって大きなことだったの。マスタリングで変わるのはニュアンスだと思う。マスタリングって、リミックスとはまた違う。アルバムの内容は同じでも、いいスピーカーで聴くと、より広く、より大きく、ギターは少し太く、ヴォーカルはクリアに聴こえるの。それが一般的にわかるメインの違い。マスタリングによって生まれる小さな変化は他にもいろいろあるんだと思うけど、そのメインの部分が私が意識した部分よ。リマスターによって、ちょっと未来への広がりみたいなものを感じることができるようになったと思う。