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INTERVIEW

Zemeth

2023.07.18UPDATE

2023年07月号掲載

Zemeth

Interviewer:山本 真由

自身の音楽性を"哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタル"と称し、ひたすら作品作りに没頭する孤高のメタル職人 Zemethが、1stアルバム『ROUGE NOIR』(2017年)と2ndアルバム『MONOCHROME BLOOD』(2018年)をセルフリメイクした、初期作の完全盤とも言える2枚組のアルバムをリリースする。今回は、理想のメロディを追い求め、勢いのままに制作されたというデビューからの2作品を見つめ直し、音質面でも演奏/演出面でもアップデートされた作品『絶世ノ哀歌ト黒紅ノ追憶』についてをメインに、Zemethとしての活動指針や、海外で高く評価されたサイド・プロジェクトについてなど、詳しく訊いてみた。


なんと言っても一番大きいのは知識による影響だと思っています。海外のフォーラムやサウンド・エンジニアのメンバーシップなどで寝る暇も惜しんで勉強しました


-昨年夏にリリースされた1st EP『LONELINESS』(※2022年8月号掲載)から、約1年ぶりのインタビューになります。この1年はどのように過ごされていましたか? Zemethとしてはもともとライヴ活動はしていませんが、世の中にイベントが復活してきたことで、JUNYAさん個人的にはライヴ会場へ足を運んだりして刺激を得ることもあったのでしょうか?

制作に励む日々でした。個人的な将来の見通し的に"ここまで制作に注力できるのはあと1~2年ほどかな"と考えていたので、曲を書き溜めたり、レコーディングをしたり、サウンドメイクの勉強をしたりと、できることを片っ端からやっていました。いろいろなバンドが来日したりと、これからまたライヴ文化が盛んになっていくのだとは思いますが、制作のためにそれとは真逆な生活を送っているので、最近はライヴに赴くこともなく本当に制作詰めの日々です。その影響もあり、この1年で急激に心身をボロボロに壊していたりもするのですが、絶対形に残さなければならない作品が完成しつつあるので毎日必死です。 ただ、いつか観たいと思っていたMÄGO DE OZ の古株メンバーが抜けてしまったり、ANAAL NATHRAKHの活動休止騒動なんかがあり、観ておきたいものは絶対に機会を作ってでも観ておくべきだったなとは感じています。

前回のインタビューで語られた予定通り、今年は1st&2ndアルバムのリメイク作品『絶世ノ哀歌ト黒紅ノ追憶』が完成しました。前作EP(2022年リリースの『LONELINESS』)の制作時から、こちらの作品にも着手されていたようですが、かなりこだわったリメイクになっているようですね?

今作のメインの目的は全体的な音質改善でした。メイン・メロディはなるべく変化を少なくしていますが、アレンジなど細部にこだわりを散りばめているのでリスナーの方々にはそこに注目しつつ聴き込んでいただきたいです。とは言いつつ、まったくの別曲に進化した楽曲もあり、新曲のように楽しむこともできると思います。結構余計と感じたパートを削ったため、曲の長さは短くなっていたりします。実は1stはかなり勢いで出した作品で、その勢いがなければZemethは始まることすらなかったんじゃないかと言えるほどなのですが、当時人生に大きな問題がありサウンドメイク面が疎かになっていたため、いつか完璧な形で作り直したいと思っていました。2ndもまた勢いでリリースした作品で、1stが予想外に反響が大きかったので勢いが衰えないうちに1年という短いスパンで出さなければいけないという考えでリリースしたので、煮詰めが足りない部分が多くありました。不完全なものを世に出すということはあまり良く思わない方もいらっしゃるとは思いますが、この2作品がなければ絶対にZemethはここまで続きませんでした。 まだ始まって数年しか経ってないプロジェクトですし、リリースからもさほど年月は経っていませんが、改めて自分にとって理想の音楽を世に提示し、まだ自分の音楽を知らない方々にも届いてほしいという思いで今作を完成させました。実はこのリメイク制作自体は2020年頃から始めていて、3年の月日を経てようやく日の目を見ることになります。

-"1st&2ndは自分自身サウンドに納得がいっていない"と語っていましたが、音質改善以外では、再録の際に演奏やヴォーカルなど、どのあたりに注力して変化を持たせたのでしょうか?

ギターの演奏面は特に改善されたと思います。特にバッキングなんかはかなり変化を感じることができると思います。ギター・フレーズを追加したり重ねたりと、アレンジ的な面でもかなり練りました。ヴォーカルはフライ・スクリーム感のあった従来のスタイルもありつつ、メロデス的なグロウルも取り入れ、単調なシンギング・スタイルからの脱却を図りました。ただ、鼻炎の影響なのか扁桃腺に問題があるのか、ここ数年エグめのピッグスクイールが以前より出せなくなってきていて、少しだけ原作の音声を今作でも流用し重ねた部分もあります。

-全体的には当時の作品と比べると、パッと聴いただけでも"聴きやすくなったな"と感じるくらい、音質が良くなった印象を受けました。1stアルバム『ROUGE NOIR』からは約6年、2ndアルバム『MONOCHROME BLOOD』からは約5年の歳月を経ていますが、使用機材や環境がグレードアップしたということもあるのでしょうか?

機材や環境はかなりグレードアップされたと思います。それも今までのZemethでの収益をかなり投資した結果だと思います。デジタル・プラグインだけでなんとかなると思っていた過去がありましたが、マイク・プリアンプを導入したことでより良い音で録音ができるようになったり、ギター・サウンドメイクのためにKemperを導入したのも音質改善に繋がったと思います。また、ヴォーカルのレコーディングはダイナミック・マイクからコンデンサー・マイクに替えました。スクリームにはダイナミック・マイクが一番いいと各所で目にし、個人的にもそう感じていたのですが、再度見直した結果、僕にはコンデンサー・マイクのほうが合っているみたいです。ただ、なんと言っても一番大きいのは知識による影響だと思っています。間違った知識で音を扱っていた部分がかなりあったので、海外のフォーラムやサウンド・エンジニアのメンバーシップなどで寝る暇も惜しんで勉強をしました。勉強するの大嫌いなんですけど、今作のためにかなり努力しました。

-1stでGYZEのRyoji(Gt/Vo)さんがゲスト参加していた「SCARLET NIGHTMARE」は、ギター・ソロだけでなくアレンジもガラリと変わって、生まれ変わったサウンドになりましたね。これはRyojiさんのギターが入る前のオリジナルな形を生かしたのでしょうか、それとも1stをあとから客観的に聴いてみて、イメージを膨らませたのでしょうか?

「SCARLET NIGHTMARE」という曲はZemeth最初期の楽曲のひとつで、結構何度も作り直していたりするのですが、特にサビは一番最初に作ったデモに寄せた形で作り直しています。1stアルバム版のギター・ソロは、こちらの注文もなく"自由に弾いてください!"という言葉だけで納品していただいたものでした。今作は自分だったらこのバッキングにどういうソロを乗せるかという想像のもと弾いたソロになります。Ryojiさんに弾いていただいたソロの名残も少しありつつ、シンセ・ソロも加えたりと僕なりのソロを加えることができたと思っています。

-前作『LONELINESS』でヴァイオリンの音をかなり大胆に使用していることも、今作に影響しているように感じました。ストリングスが効果的に使用されていることでも、サウンドが洗練された印象に繋がっていると思うのですが、EPとの繋がりは意識されていますか?

従来の作品でもヴァイオリンはかなり取り入れていたのですが、ソフトウェア音源の技術の進化の結果、ある程度本物のように聴こえるようになったので、もっと積極的に前に出していこうと思い、前作でもギター並みに使用したので今作でもその流れが続きました。レトロ・ゲーム音楽が好きなので、ベタ打ちだったり安っぽい音色は逆に大好物だったりするのですが、現代の作品としてはやっぱり生音に近いほうが親しみやすいと思います。ただ、すべてを生音で収録するのはさすがに無理があるので、最新のソフトウェアに頼っています。一番影響を受けているFalcom Sound Team jdkの楽曲もギター+ヴァイオリンの楽曲が多く、それを聴きながら育ったので、特に意識はしていないのですが、潜在的にそのようなサウンドを求めているのだと思います。

-2枚組全26曲収録ということで、かなりお得感のある内容ですが、初期の楽曲を網羅しつつ最新のサウンドに磨きがかけられているということで、Zemethのもともとのファンはもちろん、新規のリスナーにもぜひ聴いてもらいたい作品ですね。そういったファン層を広げる"Zemeth入門編"的なツールになることも、リメイクの狙いだったりするのでしょうか。

正しくその狙いがあります。従来のリスナーの方からは"リメイクする必要はあるのか?"という質問をいただいたりもしたのですが、今後自分の音楽に興味を持っていただける方々にもっと良さを感じていただくために、今作をリリースしたという目的もあります。ありがたいことに、前作から海外からのリスナーの方が今まで以上に増えたので、その流れで今作でより深くまでZemethの音楽性をアピールしていきたい気持ちが強く、今作のようなまとまったリメイク・アルバムは結構需要がありそうだと思いました。本当は厳選した楽曲でベスト・アルバムを出すのもありなのかなと思いましたが、全曲リメイクを施したい気持ちが強すぎました。結果、26曲というサウンドトラックのような曲数になりましたが、これはこれで面白いと思います。