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激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

Zemeth

2022.08.10UPDATE

2022年08月号掲載

Zemeth

Interviewer:山本 真由

激情と哀愁溢れる世界観で、国内外の泣きメロ・ハイカロリー系メロデス・マニアから一目置かれる、孤高のメロディ職人 Zemeth。作詞作曲から演奏、ヴォーカルまですべてひとりでこなす彼のこだわりが、技術的な面でも満足のいくかたちで表現されたのではないかというEPが今回の新作だ。これまでのアルバム3部作のような形式上のまとまりがないことで、発展的な表現となり、これからの活動の足掛かりにもなっているという今作。そんな新作や今後の展望について、Zemethをひとりきりで切り盛りしつつ、サイド・プロジェクトも手掛けているJUNYAに訊いてみた。

-激ロックでは、前3rdアルバム『NOSTALGISM』(2019年)リリース時以来、約2年半ぶりのインタビューになります。"1stから3rdまでの3部作で音楽活動にいったん区切りをつける"とのお話もありましたが、そんな前作の反響や、それまでの活動を振り返って、当時はどのような心境だったのでしょうか。

3rdアルバムが完成した当時は本当に区切りをつけるつもりだったのですが、"最強のメロディを目指し作り続けなければ、僕がふらっといなくなってしまいそう"という感覚を覚え、存在意義そのものがZemethということに気がつき、何事もなかったかのように活動を続けています。男に二言はないとか、潔さとかまったくなしに単純に適当なだけなんです。

-前作リリース後はパンデミック下で世界全体が大きな変化を求められ、多くのバンド、アーティストがその活動を模索してきた時期でもありました。JUNYAさんは、活動がもともとオンラインということもあって、音楽の楽しみ方に広がりができたことは、むしろプラスになったのではないかとも思ったのですが、実際はどうでしょうか?

僕の活動的にはリリースを重ねるだけなので特に変化はなかったのですが、フィジカルの売上が落ちたのを顕著に感じます。それと引き換えにデジタルのDL数が増えたり、サブスクで聴いていただける機会が増えたりした影響か、海外からのリスナー様が増えました。対価を得ることも活動を継続するために大切ですが、何より聴いてもらえることが嬉しいので、どういう形であれリスナー様の数が増えるのはモチベーション的にプラスになりました。

-また、オンラインでの自由度が高まったことは多くの人々にとっても有益ですが、一方で閉塞的な世の中やネガティヴなニュースが溢れる状況に、精神的に困難を抱える人も増えています。JUNYAさんご自身は、どのように過ごされてきたのでしょうか。

正直とても影響されやすい人間なので、世の中のなんとも言えない雰囲気に潰されそうになったことも多々ありました。音楽的にはサウンドメイクや作曲の研究を重ねつつ裏でいろいろやっていましたが、とにかく精神状態は良くはなかったですね。そのなかでモヤモヤを解消するためにも勢いのある音楽をやりたいと思い始めたのが、Zemethの姉妹プロジェクトのBloody Cumshotでした。

-今年は、THE BLACK DAHLIA MURDERのヴォーカリスト、Trevor Strnadが亡くなるという悲しいニュースもありました。フェイヴァリット・バンドとしてたびたび名前が挙がっていたので、ショックは大きかったと思います。2018年の彼らのライヴに行った際のことも語ってくれました(※2018年11月号掲載)が、そのことを思い出すと、ライヴへ行くことの価値についても考えさせられました。Zemethはソロ・プロジェクトなので、ライヴでの再現が難しいというハードルがあるのですが、新作のリリースにあたり、何かファンとの時間を共有するようなアイディアなどは考えられているのでしょうか。

最も好きなヴォーカリストだったのでショックは大きかったですね、加えてちょうどTrevorが亡くなったころあたり2ヶ月くらいが、僕の人生でも上位に入るほどつらかった時期でした。僕自身人生が大きく変わるほどの出来事や、別れ、死などを経験したのがここ半年くらいでした。ライヴや、ファンの方々との交流の機会は、本当に作りたい気持ちは山々なのですが、いかんせん経験がなかったり、需要がどれだけあるものなのかという予想がつかなかったりするため保留中です。Zemethの音楽自体再現が難しいので、実現するかはかなり怪しいです。また、個人的には制作に100パーセントの力を費やしたいので、中途半端な気持ちでライヴに臨むことになるよりは、まずやりたいことをやって、そのうえでいつかは......という気持ちでいます。

-では、今回の新作『LONELINESS』についてうかがっていきます。まずは、EPの制作を始めた経緯や時期について教えてください。こういった内容で、これくらいのボリューム感で......というようなことは、初めから想定されていたのでしょうか?

今年の1月に制作を始め、2曲入りシングルをデジタル・リリースしようと考えていたのですが、油断していたら6曲収録になっていて、"これはもうフィジカルもいっときますか"というノリで出すことが決まりました。アルバムに入ることが想定されてなかったデモ曲が数曲あったため、いわゆるボツ曲集みたいな感じなのですが、僕が思っているアルバム像から外れていただけで楽曲自体は最高だと思います。個性的な楽曲が揃いました。

-表題曲ということになるのでしょうか、「狂愛LONELINESS」は、17歳のときに作ったボカロ曲(「狂愛ロンリネス」)のリメイクですね。もともと耽美的で完成度の高い楽曲ですが、各楽器のサウンドの調整などバンド感が上がっていて、10年の時を経た進化を感じました。あとは、ゲスト・ヴォーカルとしてnayutaさんが参加されたことも大きいですね。以前に"VOCALOIDの声が苦手"という理由でボカロ界隈の活動はフェードアウトしてしまったというお話もありましたので、これが本来作りたかった形なのかな、とも思ったのですが、実際はどうなのでしょう?

記憶は曖昧なのですが、プロトタイプの原曲はさらに昔の15~16歳のときに作ってたりします。お得意のリメイク商法ですが、"どれだけ昔の曲擦るねん!"と突っ込まれそうです。もともとリメイクの需要は高かった楽曲ですし、人に聴いてもらうことを意識して活動を始めてから10年という記念の意味も込めてリメイクをしました。当時は高校生だったので、自分の曲を誰かに歌ってもらうにはどうしたらいいのかなどまったくわからず、VOCALOIDというものに頼っていましたが、これでついに完成系になったと感じています。ただ最近知ったのですが、最新のVOCALOIDはかなり自然な音を出せるようになっていて驚きました。実は2ndアルバム(2018年リリースの『MONOCHROME BLOOD』)の時点で僕が歌ったものを収録する予定もあったのですが、この楽曲は間違いなくメロディック・デス・メタルという形は似つかわしくなく、女性クリーン・ヴォイスの楽曲であるべきと思い世に出すのを保留にしていました。ただ、音数やメロディの動き方が、人間が歌うことを想定して作っていないため、ヴォーカルのnayutaさんはご苦労をされたかと思います......。実際に歌っていただいたnayutaさんの声が、期待以上にこの楽曲にぴったり当てはまり感動しました。本当に素晴らしいシンガーさんですし、今後また僕の楽曲の中で彼女の歌を聴いてみたいと感じました。