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INTERVIEW

Zemeth

2022.08.10UPDATE

2022年08月号掲載

Zemeth

Interviewer:山本 真由

-今作も、Zemethの代名詞とも言える哀愁たっぷりのクサメロが、全編にわたり炸裂しまくっていますが、ストリングスを大胆に使用したり、楽曲の展開に緩急をつけたりして聴きやすくなっているのではないかと思います。全体のカロリーは落としていないので、ケーキ食べ放題の合間にカレーやパスタを食べるような感覚ですが、不思議といけてしまうんですよね(笑)。こういった方向性でいこう、というようなアイディアは意図的なものなのでしょうか、それとも作りたいものを追求して自然とそうなっていったのでしょうか。

僕の中では"アルバム=速くてかっこいい曲"で、ノンストップでぶん殴り続ければ最高みたいな馬鹿の塊を目指していたのですが、今作は少し挑戦的な部分もあったので表現の幅が広がったと思います。今作は特にヴァイオリンにスポットが当たることが多かったです。5曲目の「FLOR DE NIEVE」は3rdアルバムのボツ曲なのですが、サビで爆走するものの、3拍子且つしっとり泣きまくる比較的珍しいタイプの楽曲になっております。そして、「狂愛LONELINESS」で、ついにクリーン・ヴォイス・メインの楽曲が生まれたことにより、次作からは1stアルバム(2017年リリースの『ROUGE NOIR』)以来ですが、僕もクリーンで歌う場面もあるでしょうし、もっといろいろなシンガーの方に協力していただこうという考えもあります。

-先ほど名前が挙がりましたが、昨年リリースしたZemethとは別の新プロジェクト、Bloody Cumshotの作品では、Zemethよりもエクストリームな方向に振り切ったことで、むしろクサメロが消化されやすくなったようにも感じますが、そちらのプロジェクトとの相互作用みたいなものもあったのでしょうか。

Zemethは、甘々ハイカロリー・メロディやりすぎ詰め込みセットという感じですが、Bloody Cumshotは実はメロディを控えめにしているつもりではあります。ただ基本は同じメロディック・デス・メタルではあるので、違いがわからない方もいるとは思いますが、僕的にはそこで差別化を図っています。

-Zemethと別プロジェクトにした理由は、やはり音楽性の違いですか? 自由度の高いチャレンジはBloody Cumshotで、ライフワークとしての自分の音楽の追求はZemethで、というような位置づけなのでしょうか。

Zemethは完全に"最強のメロディを作る"という目標のもと動いていますが、Bloody Cumshotは単純な趣味です。なんでもありです。ゴアグラインドもオールドスクール・デス・メタルもメタルコアもやりたいくらい。音楽性的にはANAAL NATHRAKHみたいなものを目指そうと思っていたのですが、制作を進めるとデスラッシュ的な曲が多くなりました。自分自身普段聴くメタルの系統はエクストリーム系が多いため、スウェディッシュ・デス・メタルのリスペクトを込めた曲を多めに、純粋に今自分が聴きたい音楽を作っています。バンド名と曲名のヤバさがきっかけで海外受けもばっちりです。結構大きなレビュー・サイトで好評をいただいたり、去年のメロデス・トップ10的なものにランクインしたりと、趣味で作ったものが意外なところで評価をいただいたのですが、日本に様子のおかしいメロデス・バンドがいる的な感じで広まり、とても小っ恥ずかしいです。あとは形から入るという意味もあり、Bloody Cumshotをやるために筋トレによりいっそう力を入れたりもしました。というか筋トレにハマってしまいました。ダウンピッキング頑張っています。

-歌詞に関しては、今作も昼ドラのような世界観を描いていますが、JUNYAさんの書く詞は女性目線というか、女性主人公のストーリーが多いですね。女性的に描くことで、激しい感情を表す言葉が柔らかく湿っぽい表現になって、哀愁のあるメロディに合うのかなと思いました。そういったことは意識されていますか?

これは完全に村下孝蔵さんの影響ですね。彼ほど女心を理解しているとは言い難いですが、女性が醸し出す哀愁が僕のメロディには合うのではないかと思っています。あと女性目線且つ闇のある歌詞が多いのはデッドボールPさんからの影響です。歌詞で影響を受けたアーティストはこの2名以外にいません。メタルによくあるファンタジーやホラー、SFなどの世界観に興味がなくて、ゲームをやる時間がなくサントラしか聴かず、そもそも本も読まず映画やドラマもあまり観ないので、インスピレーションは常に自分の人生から得て、それをヒントに歌詞に反映しています。

-女性と言えば、ジャケット・アートワークに関しても、基本的には女性をモチーフにしていますね。今回は、3部作のアルバムとは少しテイストが変わって、皐月 恵さんがイラストを手掛けています。これまでの作品は、海外のメタル・バンドっぽいアートワークだと感じていたので、もしかしたら今回のようなイラストのほうが、日本のアーティストっぽくて逆に海外受けはするかもしれません。今回のアートワークの変化には、そういった狙いもあったのでしょうか。それを抜きにしても、耽美でダークな雰囲気はZemethの世界観にぴったりですし、個人的にも好きな絵師さんなので、単純に皐月 恵さんの描く女性が素晴らしいと言われても納得なのですが......。

今までは過去作のようなスタイルのジャケットこそ理想だったのですが、「狂愛LONELINESS」という曲は、リメイクを決めた当初から、サブスクを通した海外のリスナーをメイン・ターゲットにしていたため、イラストが一番合うと思いイラストレーターさんを探しました。皐月 恵さんのイラストは、リアルな女性の美しさとイラストとしての美しさどちらも兼ね備えており、イラストならばこの方以外にお願いできる人は見つからないと思うほど、理想的なイラストレーター様だったためお願いしました。本当に唯一無二の天才だと思います。楽曲の雰囲気を汲み取っていただき、耽美且つ繊細で、驚くほど美しいジャケットを仕上げていただきました。こういった変化もZemethには必要な要素だと思います。

-今回のEPの資料には、"1st&2ndのリメイク"と"4thアルバム"に向けた懸け橋、とも書かれていますが、今後の活動の予定や作品の展望について教えていただけますか。

現在1st&2ndアルバムの再録と4thアルバムの新曲制作に並行して取り組んでおり、来年中に再録アルバム、来年冬~再来年中には4thアルバムをリリースできるかと思います。1st&2ndは自分自身サウンドに納得がいっていないのと、楽曲の持つポテンシャルをもっと引き出せると感じたため再録をしています。4thアルバムは、今までの自分の我儘で作った3部作と比べ、聴いていただくことを念頭に置き、メロディも濃くなりつつ、より洗練され構成美を意識した作品を目指しております。なんなら最早メタルじゃない楽曲も収録されているので、いつまで哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタルを自称していいのかわかりませんが、字面が面白いので一生このジャンルを自称するつもりです。

-また、先述のBloody CumshotなどZemeth以外での活動もいろいろ進んでいるようですが、他の活動についても、今後はさらに活発になりそうですか?

基本はこのふたつのプロジェクトがメインなのですが、実は裏で、大衆向けの音楽に挑戦をしては上手くいかなくてやめるということもしていたりします。ただ、すべての活動をひとりで回しているので、これ以上活動の幅が広がってしまうと、ゴーストライターを雇うか忍者になるしかないという、よくわからない未来しか見えないため、ふたつのプロジェクトを伸ばすこと最優先で動いていこうと考えています。自分ひとりで自由に活動ができることがとても気楽なのですが、事務作業や動画編集なんかもすべてセルフで、そろそろしんどいところもあるので、外注を増やしたりレーベルへの所属なんかも考えたりすることがあります。アーティスト写真だって未だにスマホの自撮りを編集したものですからね、とんでもないことですよ。あと、Bloody Cumshotも余裕のあるタイミングで2ndアルバムを出そうかと思っています。

-最後に、激ロックの読者へメッセージをお願いします。

激ロックをご覧のみなさま、ZemethのJUNYAと申します! みなさまはメロディが強い音楽は好きですよね? そうですよね! そんなみなさまのために哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタルのZemethが、最高最強のメロディをお届けいたします!!! メロディが美味い! かっこいい! 速い! つまり素敵! 未聴の方はまず今回リリースの『LONELINESS』をお試しにどうぞ! メロディ沼にはめてみせますので、ぜひよろしくお願いいたします!