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INTERVIEW

Zemeth

2024.10.01UPDATE

2024年10月号掲載

Zemeth

Interviewer:山本 真由

北海道の地でただ1人、ひたすら至高のメロディを追い求め続ける孤高のメタル職人、Zemeth。ライヴや動画配信といった演奏活動に力を注ぐことなく、制作活動に没頭し、自身の音楽と向かい合ってきた彼が、4作目となるアルバムを完成させた。三部作として構成された1stから3rdまでのアルバムで自身が提唱してきた"哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタル"という独自ジャンルの枠を越え、大幅にアップデートした今作。今回のインタビューでは、その新作の内容や制作経緯、Zemeth=JUNYAの音楽観について、詳しく語ってもらった。

-昨年2023年7月にリリースした、初期作のセルフリメイク作品『絶世ノ哀歌ト黒紅ノ追憶』のとき(※2023年7月号掲載)以来のインタビューになりますね。完成度を高めて発表したそちらのリメイク作品については、その後どのような反響がありましたか?

実は去年のリリースから状況がかなり変わりまして、まさかのTikTokバズを経験して、Spotify等を通してリスナー数が体感で3倍くらいに増えました。TikTokに、「LUNATIC AND LOLITA」(2ndアルバム『MONOCHROME BLOOD』収録)という楽曲を使用した動画をアップロードした方がいらっしゃって、そこで海外から支持してくださる方が爆発的に増えました。去年までは"TikTokなんてやらん!"と言っておりましたが、結局TikTokアカウントまで作りました。音楽性以外に確固たる信念がないので本当にちょろいです。

-現在はSNSでの活動にも力を入れているんですね。また、海外での評価が高い姉妹プロジェクト、Bloody Cumshotの方は、昨年12月に2ndアルバム(『Deflorantism』)をリリースしていますね。こちらの内容についても紹介していただけますか?

Zemethの今作もそうなのですが、Bloody Cumshotも含め現在はワードレコーズ様にお世話になっておりまして、制作自体は自主制作なのですが、流通がソニー・ミュージックソリューションズからという形態になりました。裏で手助けをしてくださる方や多くのリスナーの方々のおかげで、少しずつ活動の幅が広がっております。Bloody Cumshotはリフが命でイエテボリ・スタイルからの影響が色濃いメロデスで、Zemethがハマらなかった人にも聴いていただいており、一定の評判をいただいています。Bloody Cumshotはピュアなメロデスの影響下にあり、Zemethはゲーム音楽からの影響下にあるので、似て非なる音楽性だと思います。ただ僕の個性はどちらも持ち合わせているのでどちらも楽しんでいただければ嬉しいですね。

-前回のインタビューでは、"空き時間で作り溜めているゲームの戦闘曲風インストを素材集として販売する"という構想も語られていましたが、そちらについてはどのような動きがありましたか?

実は空き時間自体が無なくなってしまい停滞しております。それどころかインスト用に作った楽曲がZemethの制作中のアルバムに吸収されたりで、溜めたはずのストックが少なくなっていくという不思議な現象も起きており、完成がいつになるのかは予想できない状況です。

-そんな多忙な状況のなかで制作された今回のリリース作品、4thアルバムである『MIREN』ですが、実際どれくらいの期間で制作されたのでしょうか。リメイク作品を制作中に、すでに着手されていたようですが......。

3rdアルバム(2019年の『NOSTALGISM』)をリリースした直後に作った曲もあるので、それを含めるとかなり長い期間になるのですが、本格的に着手してからだいたい4年程で完成したと思います。デモや特典として数曲公開はしていたのですが、どの曲もデモの段階よりも進化を遂げており、アルバムとしても素晴らしい出来になったと思います。リメイク作品の再録をしながらも曲を書きつつ、Bloody Cumshotの2ndアルバムを作りつつも曲を書きつつ......人生の中でこれ程時間を切り詰めて作業をしたことはなかったです。おかげでとんでもない程に心身を壊したので、これから病院通いになると思うととてもワクワクします。恐らくこういう体験もいずれ曲になると思います。止まることを知らないアーティストとは悲しい生き物ですね。

-今作は"MIREN(未練)"というタイトルとはいい意味で真逆というか、過去作、特に1st(2017年リリースのアルバム『ROUGE NOIR』)から3rdまでの三部作にキッパリと別れを告げるような、進歩的な内容になりましたね。今回のアルバムのテーマや音楽的な方向性はどのようにして決まったのでしょうか?

アルバム・タイトルの"MIREN"は、僕自身がこの世に未練を残さないようなアルバムにしたい思いがあり名付けました。なのでメロデスに限らずやりたかった音楽をやりました。リメイク・アルバムまでで、僕のやりたかったメロディック・デス・メタルというものをやり尽くした感覚があり、じゃあ次はもっと幅広い音楽性に着手していこうと考えた後、このような構成のアルバム案が浮かびました。もともとZemethはメロデスが好きで聴いてる方というよりも、メロディアスな音楽が好きで聴いている方が多く、クリーン・ヴォイスの楽曲も聴いてみたいとおっしゃる方も多かったので、スタイルを変えることにあまり抵抗はありませんでした。トレーラー動画で初めて楽曲を公開したときある程度の批判も覚悟していましたが、皆様が僕の方向性を受け入れて気に入ってくださってとても嬉しいです。海外でウケることも狙って、このような方向性にシフト・チェンジしたという側面もありますが、単純に音楽性が変わった一番の理由は僕自身の探究心だと思います。ジャンルの表現が難しくなってきたので、もうこれからの音楽ジャンルは"Zemeth"です。

-2022年リリースのEP『LONELINESS』にも参加されている、ヴォーカリストのnayutaさんはじめ、今回はクリーン・ヴォーカルをフィーチャーした楽曲が多く、メロディック・デス・メタルからの脱皮とも言えるような新しさを感じました。全体的には、Zemethの代名詞である"哀愁歌謡ノスタルジック・メロディック・デス・メタル"に加え、パワー・メタルやメロスピっぽいアプローチの楽曲に、さらに、JUNYAさんのルーツの1つでもあるゲーム音楽の要素が、大いに取り入れられているようですね。

今作は特に僕のルーツである"イース"ミュージックからの影響が強いです。ほぼ全ての楽曲がゲーム音楽の影響下にあります。ゲーム音楽のサウンドトラックっていろんなジャンルの音楽が含まれているんですよ、ゲームの音楽だから当たり前なんですけど、音楽作品として改めて聴くとめちゃくちゃ変態だなと思って。特定のジャンルをやりたくて音楽をやる人もいますが、僕はどちらかというと自由にいろいろ作ってみたかったので、今作でいろんなことができて本当に楽しかったです。ただ、メロディック・デス・メタルから完全に脱したわけではなく、クリーン・ヴォイスの楽曲からハマった人はグロウルの楽曲も聴いてほしいし、メロデスも好きになってほしいですね。僕も最初はグロウルが苦手でしたが、良さに気付いてからのメロデスやヴァイキング・メタルの中毒性はえげつなかったので、僕が感じてきたそういう体験をもっと幅広い方々にも経験してほしいです。

-中でも冒頭を飾る表題曲「MIREN」は、持ち味を十分に活かした哀愁たっぷりのクサメロ全開でファン垂涎の楽曲ですが、ポップ寄りのアッパーなリズムも相まって、ヘヴィさは残しつつも、かなり幅広いリスナーに響く楽曲になっているんじゃないかと思います。楽曲アレンジの変化に関してはそういった意識もあったのでしょうか?

SMILE-UP.や女性のアイドルさんたちがやっているフラメンコ楽曲が、めちゃくちゃかっこいいなと思ってて、特につんく♂さん作の楽曲とかってメロディの尖り方が異常で、いつか自分もやってみたかったんです。ただZemethらしさも失わないようにギターもガッツリ主張してます。哀愁フラメンコ・ポップス+ゴシック+メタルという濃い味付けで、タイトル・トラックにはあつらえ向きな楽曲だと思います。実は以前の作品である「狂愛LONELINESS」(『LONELINESS』収録曲)の続編として、「MIREN」という楽曲を出そうと思っていたのですが、しっくりこずにその楽曲はお蔵入りになりました。いつかそれも日の目を浴びると良いのですが......。

-Track.7「LLOVIZNA DE TRISTEZA」には、DARK MOOR等複数のメタル・バンドでキャリアのある女性ヴォーカリスト、Elisa C. Martinが参加されていますが、彼女とは以前から交流があったのでしょうか? 今回彼女がゲスト参加することになった経緯を教えてください。

以前から関わりがあったわけではなく、僕からのアプローチで今回参加していただきました。メタルにハマったきっかけの楽曲の1つがDARK MOORの「The Night Of The Age」で、いつかこの人に自分の楽曲を歌ってほしいと考えていてついに実現しました。ツアーで忙しいなかでも調整して、めちゃくちゃ丁寧にやりとりもしていただいて、さすがプロフェッショナルだと感じました。