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INTERVIEW

Zemeth

2024.10.01UPDATE

2024年10月号掲載

Zemeth

Interviewer:山本 真由

-また、「LLOVIZNA DE TRISTEZA」に関しては歌詞もスペイン語になっていますが、こちらの作詞もJUNYAさんが手掛けているのでしょうか?

僕は、スペイン語は全く分からないので完全に外注です。女性目線の悲恋の歌詞を書いてほしいとリクエストしたのですが、僕のメロディはスペイン語だと歌いづらいようで譜割りの調整が大変でした。

-こちらは楽曲自体もヨーロッパのパワー・メタルっぽい雰囲気があって、新鮮に感じました。これまでのZemethらしさが、ラテン系の民族歌謡のような哀愁だとすると、「LLOVIZNA DE TRISTEZA」は、北欧神話的な壮大なドラマ性を帯びたノスタルジアになるんじゃないかと。これまでありそうでなかった、ベクトルの違う楽曲の誕生には何かの影響があったのでしょうか?

まずこの曲を生み出した動機が"最強のスパニッシュ・メタルを作りたいから"で、その目標しか見えていなかったです。以前も激ロック様のインタビューで話しておりますが(※2023年7月号掲載)、僕はメタラーになりたての頃からスパニッシュ・メタル狂の辺境メタル・マニアで、ずっと聴いてきた音楽ですし、何よりスペイン語のメタルを作りたいと思っておりました。そして最高のパワー・メタル・ヴォーカリストのElisaに絶対歌ってもらうと、最初から決めていました。スパニッシュ・メタルって他のメタルにはない独特な雰囲気があるのですが、それを醸し出しつつも、今後のパワー・メタル史に残せるような楽曲に仕上がったと自負しております。FURIA ANIMAL、AVALANCH、RED WINE等のパワー・メタル・バンドからの影響が強く、さらに間奏には大好きなMÄGO DE OZ的なフォーク・メタル要素もあります。最高のジャパニーズ・スパニッシュ・メタルを生み出せてとても満足です。

-さらに今作では、Synthesizer Vの歌声合成ソフトを利用したヴォーカルも使っていて。JUNYAさんはボカロPの経験があるので、こういった技術を使用した曲作りも違和感ないのではないかと思いますが、かつてボカロで制作していた頃より、格段にテクノロジーが進化しているのを感じたのではないでしょうか?

僕は正直者なので、ぶっちゃけ言うと最初は経費削減のつもりで便利だから使おう的なノリだったんですよ。でもSynthesizer Vを立ち上げて数分で度肝を抜かれてしまって、なんならこちらが土下座をしてでも歌ってほしいくらいでした。もちろん生身の人間が出すニュアンスが完全表現できるわけではないですが、僕の楽曲では逆に無機質なほうが合っていることもあるので、この素晴らしい技術に本当に感謝しております。「ナキガヲ」という楽曲は特にあまり人間に歌わせたくないような歌詞を書いたので、この楽曲は特にSynthesizer Vの恩恵を受けております。

-Track.8「HIBISKUS」は特にチャレンジングな楽曲になっていますね。楽曲的には完全に今風のJ-POPないしK-POPといっていいような曲調ですが、GIPSY KINGSのようなフラメンコ・ギターのソロがある等、細かいところでこだわりのある部分がやはりZemethの楽曲だなと思いました。しかし、ここまで振り切ったポップ路線の曲が生まれた背景には、何かきっかけがあったのでしょうか?

もともと「HIBISKUS」という楽曲は僕の意味不明な反骨精神から生まれた楽曲で、BTSの「Dynamite」が流行った頃、四度進行の楽曲が世間で爆流行りしているのを見て、"俺もこういう楽曲作ったるわい!"となぜかプンプンしながら1日で作った曲でした。結局最初から最後まで同じコード進行で進むってところしか共通点はないのですが、"勇者30"ってゲームの「カサブランカ」という楽曲を意識したリフレインがあり、最初はフラメンコ・ポップスをイメージしていました。しかし僕がJ-POPでトップ3に入ると思っているちゃんみなの「Never Grow Up」からの影響やRepezen Foxxが去年リリースした「Cowboy」という楽曲の影響により、僕の中で空前のレゲトン・ブームが来てしまったのでレゲトンへと変貌を遂げました。アルバムの中でも浮いている存在ですが、逆に異質すぎていいと思ってます。僕自身めちゃくちゃ気に入っている楽曲で、ギャルの車から流れてほしい楽曲ナンバー1です。

-また、Track.6「PURE IGNORANCE」に関しては、全体の方向性的にはZemethらしい哀愁たっぷりのメロディック・デス・メタルなのですが、かなりエレクトロ・アレンジの効いた楽曲で、これまた新しさを感じる1曲です。全体的に、制作環境にもかなりアップデートがあったのではないかと感じたのですが、実際はいかがですか?

去年たまたま聴いたt+pazoliteさんの楽曲にめちゃくちゃ衝撃を受けて、スピードコアしか聴けなくなった時期がありまして、そのときにうっすらメロデスとスピードコアを合わせた楽曲の案が浮かびました。この楽曲が一番制作は大変で、スピードコアをはじめとしたハードコア・テクノやEDMのならわしに疎かったので、どう音を構成していくかでかなり試行錯誤しました。こういったジャンルではよくヴォーカル・チョップという手法も取り入れられるのですが、センスが絶望的で歌詞とごっちゃになる懸念があり使いませんでした。結果的にはめちゃくちゃいい出来になったと思います。この楽曲のためにいろんなサンプル・パックや音源も導入したので、今後も要素として取り入れていきたいです。

-EP『LONELINESS』に引き続き、アートワーク・デザインはイラストレーターの皐月 恵さんによるものですね。このヴィジュアル・イメージからも、今作は1stから3rdまでの三部作とは切り離され、クリーン・ヴォーカルやストリングスを大胆に使用した前EPをさらに進化させたものであると理解できます。収録曲の内容とも通じるフラメンコのイメージが表現されたイラストですが、オーダーの際にはどのようなリクエストやイメージの共有をされたのでしょうか?

EPの段階ですでに皐月 恵様に今作のデザインをしていただくことを決めていました。時間があるときに、Zemethの世界観と合致するセンスを持ってる方を探すために、いろんなアーティストの方の作品を拝見させていただくのですが、僕はアニメ調すぎるイラストはあまり世界観にマッチしないなと考えておりまして。ここまで2次元感とリアル感がいいバランスで融合している作品を生み出されている方は、他に類を見ないと思います。唯一無二だと思います。僕は、基本的にデザイン関係は制作者様の個性や感性を存分に出していただきたいので、ざっくりなオーダーになってしまいます。『MIREN』のデモ版と歌詞をお渡しして、色の指定や人物像は僕自身がある程度はするのですが、後はアーティスト様のセンスにお任せしています。Zemethに関わってくださるアーティスト様は、毎度のことながら驚く程に美しい作品を提供してくださって、本当に頭が上がらない思いです。

-前のインタビューでは、自身の制作が忙しすぎて楽曲提供等の依頼は断っているものもあるというお話でしたが、今作が完成したことで少し制作については落ち着いて、他の活動に手を出す余裕も出てきたりするのでしょうか?

実は不思議なことに、アルバムの完成が近付くたびに次から次へと次作の案が浮かんでしまうんですよ。なので結局安息の時間もないままに次の制作に移ることになりそうです。そもそもプロジェクトが大きくなってきてその維持だけでもてんてこ舞いなので、なるべくスロー・ペースで制作は進めていきたいとは思っております。ただ、もし依頼をいただけるならばできる限りお力添えしたいですし、自分自身聴いてくださる方々に提供ができるもののことや、マネタイズについて考えていることはあるので、できる限り動いていきたい気持ちはありますね。

-今後の予定や目標について教えてください。Zemethとしての活動はもちろん、姉妹プロジェクトのBloody Cumshotやその他の活動についても。

予定については正直今のところ何も決まっていないですが、Zemethのほうは勢力的に動かしていきたい気持ちはあります。4thアルバムの音楽性がどれだけウケるかによって、今後の動き方は変わってくると思いますが、次作も求める方がいらっしゃるのならばただただやるのみです。そのときによってやりたい音楽って変わるので"次こんなアルバムにしたいです!"みたいな提示はまだできないですが、次も今までやったことのない音楽に挑戦していきたい気持ちはあります。Bloody Cumshotは、自分がイエテボリ・スタイルに飢えたときにまた何か動きがあると思います。どちらのプロジェクトにも言えることですが、自分が好きな音楽を表現してそれで感動してもらうことが何よりの喜びですし、目標は変わらず最強のメロディを作り出すことです。

-最後に、激ロック読者へのメッセージをお願いします。

激ロックをご覧の皆様! 改めましてZemethのJUNYAです! 今作はかなり自由に音楽を作った結果あまりにも狂った内容になっていますが、これを新時代の音楽の1つとして受け入れていただければ嬉しいです! 相変わらずライヴをやったりってことはないのですが、いろんなシーンで僕の音楽を聴いていただき、あなたの人生の場面場面に感動を添えることができればいいなと思っております。つらいときや悲しいときもそうですが、ちょっとしたお出かけのときもZemethを聴いていただければ嬉しいです! 泣きメロが人類の必須栄養素として認められるようにこれからも音楽を作り続けるので、今作もよろしくお願いいたします!!