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INTERVIEW

Paul Gilbert

2023.04.06UPDATE

2023年04月号掲載

Paul Gilbert

Interviewer:井上 光一 Translator:安江 幸子

-そうするとオリジナリティは結果の音よりもそこまでのプロセスに現れていることが多いのかもしれませんね。

僕が思うに、スタイルを持つには、流暢でないといけないんじゃないかな。言語みたいにね。ずーっと(そのスタイルを)使うためには。時々立ち止まって"これってなんて言うんだっけ?"と言うんじゃなくて、自然なフロウが必要なんだ。それを広げていくには多くの場合、ベストなのはシンプルにしておくことだけど(笑)、自分がとても親しみのあるごく少ないボキャブラリーで話すとかね。そうすればうまくいくし、安全だ。でもやがて"うーん、でももっと言いたいことがあるなぁ"なんて思うようになる。じゃあどうやってそれを覚えるのか。インスパイアしてくれる、大好きな素晴らしいミュージシャンたちから学ぶこともできるんだ。Ronnie James Dioのあのフィーリングを表現したいと思ったら、推測ではやりたくない。ちゃんと深いところまで入り込んでいって、彼がどんな音を表現しているのか"リサーチ"をしたいんだ。もしかしたらすべての要素を引っ張り出すことはできないかもしれないし、全部覚えておくこともできないかもしれないけど、何かを得ることはできる。それで自分自身の音楽的な魂をほんの少し大きく育てることができるんだ。それには時間がかかるし、一朝一夕にできるもんじゃない。もちろんもし僕が自分のスタイルでプレイしてもコミュニケートできるかもしれないし、いい感情表現ができるかもしれない。でもそれじゃ成長できないんだ。成長したかったらちゃんと音を聴かないとね。自分にないものを持っていそうな人の音を聴くのはとても大事なことだよ。まぁ、たまに"俺は誰の音も聴かない。自分のヴィジョンだけを音にする"なんて言っている人もいるけど、そういう人は視野が狭くなる傾向があるよね。その代わりすごくユニークなスタイルを持っているだろうけど、そこから特に成長するわけじゃない。僕は食べ放題のビュッフェに行ってなんでも試してみたいタイプなんだ(笑)。でもそうできるようになるには時間がかかるよ。"今日はここまでしか食べられなかった。また明日行くか"みたいな感じ(笑)。

-あなたほどギターでいろいろ極めた人が今も成長し続けて学び続けているというのはとても感銘を受けます。大尊敬です。

ありがとう!

-ところでひとつ気になっていた箇所があるんですが、「Kill The King」です。ライヴ・バージョンをスタジオ録音したみたいなところが興味深いなと。

あれが僕の好きなバージョンなんだ。

-『On Stage』の?

そう、『On Stage』の。僕が初めて聴いたのがそのバージョンだったんだ。さっき話した15歳くらいのときにやっていたバンドで、これを聴いて覚えてくれなんて言われて渡されたのが『On Stage』でさ。スタジオ・バージョンを聴いたのは何年もあとだよ。スタジオ・バージョンを聴いてみたらそれはそれで良かったけど、ライヴ・バージョンのほうがエネルギーに満ち溢れているから、それにできるだけ近いものを作ってみたかったんだ。

-それでライヴ・バージョンをカバーしたんですね。スタジオ・バージョンじゃなくて。

そうだね。初めて聴いたやつだし、今もお気に入りだから。

-ちなみにオーディエンスが"Dio! Dio!"と叫んでいるところはどうやって?

あれは、YouTubeでDioのライヴ映像をたくさん観たんだ。オーディエンスが叫んでいる箇所を見つけて、その音声を引っ張ってきて作ったんだよ(笑)。

-ご自分で"Dio! Dio!"と叫んだものをオーバー・ダブしたわけじゃないんですね(笑)。

(笑)いや、本物のDioのコンサートの音声だよ。他のオーディエンスの声は自分のショウーら引っ張ってきた。"G3"ツアーの高音質の録音がたくさんあるからね。最後のほうで聞こえてくるのは僕のコンサートのオーディエンスだよ。

-あなたのコンサートとDioのコンサートの音声なのですね。面白いコラボで(笑)。ちなみに本作の中で特に気に入っているトラックはありますか。また、最も演奏に苦労したトラックがあれば教えてください。

すごくうまくいった箇所がいくつかあるな。「Kill The King」のソロは1回目のテイクで決まったんだ。今までの人生でやった中でも指折りに最高のソロだったね。プレイしたあとでエンジニアの顔を見て"もう何回かやってみよう"と言って何回かやってみたけど、結局最初のやつがベストだった。かと思えばオープニングの「Neon Knights」、あのソロは難しかったな。100テイクくらい録ったよ! やっと決まったときは本当にハッピーだったけど、長い道だったね。自分がどう弾きたいのかを考えながら、Tony Iommiのプレイを思い出したり、自分の持ち味も出そうとしたり、そのバランスを考えたり本当に時間がかかった。でも最終的には心から気に入ったよ。どっちのソロもとても気に入っているけど、プロセスは全然違ったんだ。「The Last In Line」では静かなイントロのあとで大きくて長く伸びる高音がある。"We are coming~"(※実際に歌う)のところだね。あの音はうまくやらないと、と思っていた。僕はサスティナーのついたギターを持っていて、電池で動くやつなんだけど、スイッチを入れるといつまでもその音を伸ばし続けてくれるんだ。そのギターを使って、スライド・バーでビブラートを作った。最終的にはスライドをオフしても鳴り続けている。パーフェクトな出来栄えだったよ! とてもハッピーになったね。アルバム全体に、そういうすごくいい感じに仕上がった箇所がたくさんあるんだ。ミキシング中はひとりでに身体が動いたよ。ずっとヘッドバンギングしっぱなしだった(笑)。これ以上望むことがないくらいの結果になったよ。

-ほとんど自分が演奏した音源でヘッドバンギングできるなんて最高ですね。あなたのようなマルチ・インストゥルメンタリストだからこそですね。羨ましいです。今年の7月にはMR. BIGの"MR.BIG The BIG Finish FAREWELL TOUR"での来日が決まっていますね。

そうなんだよ! きっと素晴らしいものになるよ。

-すごく楽しみですが、同時に(これで終わりということで)複雑な気持ちにもなります。

僕にとっては、僕たちが全身全霊を注いで、最後の素晴らしいツアーにするというのが正しいやり方だと思うね。アルバム『Lean Into It』(1991年リリース)を全曲やれるのが楽しみなんだ。今までそうしたことがなかったからね。僕たちの最高傑作だと思っているし。それから、ドラムスにNick D'Virgilioが入ってくれるのが本当にハッピーなんだ。あいつとは、1年くらい前にアメリカの大きなミュージック・ストアでジャムってね。Pat Torpey(ex-MR. BIG/Dr)を思い出したよ。すごくソリッドなグルーヴで、複雑なことをやるためのテクニックも持ち合わせているし、それでいてリード・シンガー向きの声の持ち主でもあるんだ。PatがMR. BIGにもたらしたのもそれだった。グルーヴだけじゃなくてハーモニーも。Nickもエネルギーをいい感じに爆発させてくれると思うよ。

-Nickを選んだのは簡単でしたか? 他にも候補がいたりなどは......?

僕にとっては一目瞭然というか、ベスト・チョイスだったね。今話したコンビネーションを持っていたから。僕は共演経験があるけどBilly(Sheehan/Ba)とEric(Martin/Vo)はなかった。それで『Lean Into It』の曲をいくつか弾いて新しいトラックを作って、それをNickに送って"ギターとベースは僕がやったからドラムスをやってくれ。なおかつリードも歌ってくれ"と言った。あいつは歌とドラムスの両方をやって、それをビデオに録った。それをBillyとEricに見せたら"こいつに決まりだ"という話になったよ(※親指を立てる)。

-ある意味オーディションだったんですね(笑)。あなたの推薦が役立ったのでは。

役立ったのは、あいつがすごくうまいって点だと思うよ(笑)? そりゃ1日中推薦の言葉を並べ続けることもできるけど、一番大切なのはあいつがその任務を果たせるってことだからね(笑)。

-ご自身のツアーはどうですか? 『Werewolves Of Portland』も『'Twas』もありますし、今度は『The Dio Album』もあります。

そうなんだよ。最後にやったビッグなツアーは、ロックダウンやコロナ禍の前だったからね。去年はイタリアのミュージシャンとちょっとイタリアを回ったけど、あれは楽しかったな。たしか10~15回くらいショーがあったと思う。ただ、まずはMR. BIGに集中しないとね。ちゃんと準備して臨みたいから、自分の仕事は少し保留しておくつもりだよ。でもソロ・ツアーをすることになったら、君も言っていたようにアルバム3枚分のネタがあるんだ。

-ぜひMR. BIGだけでなくソロでも来てください。

きっと行くよ!

-最後に、日本のファンへメッセージをお願いします。

僕のソロやMR. BIGの作品を聴いてくれてありがとう。『The Dio Album』を楽しんでもらえることを願っているよ。もしRonnie James Dioをまだ聴いたことがなかったら、オリジナル・バージョンも聴いてほしいね。ギタリストの君はぜひ僕のオンライン・スクールもチェックしてほしい。僕が君のプレイに耳を傾けることのできる場で、カスタマイズされたレッスンをすることができるんだ。すでに日本人の教え子たちもいるし、いつも楽しいよ。スクールはArtistWorksというプラットフォームにあるんだ。また近いうちに会おう! ジャアネ!