MENU

激ロック | ラウドロック ポータルサイト

INTERVIEW

Haint

2023.02.27UPDATE

Haint

Member:YU-TO(Dr) Kaz Niita(Gt)

Interviewer:清家 咲乃


制作にフォーカスした、新しいメタルの形――世界中と繋がれる新時代に新たな可能性を模索する


-その次の「Dying Wish」にはピアノやアコギ、あとオルガンも入っていて北欧メタルっぽさを感じたんですが。

Kaz:母体となる部分が実は中学2、3年生ぐらいのときに作ったんです。当時僕はアメリカに住んでたんですけど、教会に行く機会があって。あの荘厳な感じがすごく好きだったんですね。あと当時"ロード・オブ・ザ・リング"って映画が流行ってて、(劇伴の)音楽とかもすごく聴いてたし、中世の世界観がもうすごい好きになって、どっぷりハマって。それでああいう世界観を追及してましたね。でもあんまりファンタジーになるとメタル感が薄まっちゃうから嫌だなと思って、ファンタジーなんだけどリフはしっかりあるしアグレッシヴ。今の2023年のメタルとしても強さがあるっていう、そのふたつを意識しました。

-「Rotten Anthem」では一転してニューメタルというか、パーカッシヴな感じになりますね。TORAJiROさんはラッパーの方なんでしょうか?

YU-TO:ラッパーですね。俺の兄が曲とかトラックを提供している子で、結構いいラップというか、独特なラップをする感じの子だったんで、"ちょっとやってみない?"って声掛けた感じです。

-ヴォーカルで参加しているfact nobleさんはまだお若いんですよね。メタル・シーンで活動している方ではない?

YU-TO:まったく違いますね。今年二十歳になったばっかかな? まだ全然レコーディング経験もなくて、兄が教えている専門学校の生徒が集まるパーティーみたいなのがあって、俺もその学校出身なんで、そこでなんとなく喋って。すごくうまいって話を聞いてたんで、ちょこちょこ音源送ってもらったら、"あぁ、うまいな"と。「Rotten Anthem」は最初に出したシングル(2021年9月)なんですけど、最初からいきなり(ゲストが)DOUGENさんとかで"新しいバンド始めたの?"みたいに思われちゃうのも嫌だから、最初は名前が知られてない人たちとやりたいなと。Billyは日本ではまだ知名度がないし、TORAJiRO君もfact nobleもメタル・シーンでは知られてないから、こっちもいい意味でどういうものができるか想像できないので、やってみるのが面白いなと思って(笑)。

-歌詞はコロナ禍に対する憤りを反映しているそうですが。

YU-TO:あのときに書く歌詞なんてそうなっちゃうよね、みたいな部分があったと思うんですよ、日本の音楽シーンって。それがちょっと嫌だったんですよね。それで"いつまでこんな曲やんなきゃいけねーんだよ"っていうのを込めて"腐った国歌"なんです(笑)。歌詞にもありますけど、これを笑える日がくるといいねっていう。そろそろくるかもしれないですけど。TORAJiRO君には好きに書いてもらって、ふたりでカラオケとかで詰めていって。

-「Blood Lunar Cult」は荘厳な要素と電子音とが入っていて物語性があります。

Kaz:この曲は、YU-TOさんから"SPITEっぽいのを作りたい"って言われて、試したんだけどできなくて。あぁ~無理だ......って思ったんですけど、その半年後くらいに改めてもう1回やってみて、できたのがイントロのリフなんです。SPITEってデスコアですかね?

YU-TO:まぁデスコアだよね。WHITECHAPELがもっと極悪みを増した感じ。ただ「Blood Lunar Cult」は違うと思うよ(笑)。

Kaz:あのリフだけですよね(笑)。凶暴なリフをずっと続けていくのはちょっと僕の趣向と合わないというか、やろうと思っても無理なんで、自分らしくしようと思って。

YU-TO:メロディックなのしか作れないよね。

Kaz:うん、そうなんですよ。だからイントロはSPITEっぽいので、そこからはメロディックにしていって。でもサビがメロディックじゃない曲も欲しかったので、サビはイントロのリフにしました。そして間奏の部分はめちゃくちゃ壮大にしたかったんです。僕の中で、ドラムがなくなるところがあると結構壮大になるっていう法則があるんですよ。わかります?

YU-TO:わかる、わかる。

Kaz:ずっとドラム鳴ってるのってテンションがキープされますけど、ドラムがなくなると相当落ちるじゃないですか。落差が激しいっていうか。だからドラムもなくしたし、ピアノのソロも入れたし。たぶんライヴするバンドだったらああいうパートは避けると思うんですよね。ライヴで誰も弾いてないピアノ・ソロが流れたらしらけるんで。

-Haintだからこそ自分の趣向も詰め込んで。「Misery」はがっつりポップ・パンクで清涼剤みたいなところがあるんですけど、どうなんでしょう、メタルのリスナーってポップ・パンクは聴かないって人も多いのかなというイメージがあります。

YU-TO:出会ったことはほぼないですね。自分も日本のポップ・パンクは正直そんなでもないですよ。でも海外のBLINK-182とか、さっきも言ったYELLOWCARDとかAS IT ISとかそのへんのバンドがすごく好きなんで。「Closure」の次はもっとポップ・パンクっぽいのどうだ、みたいな(笑)。味を占めたっていうか。

Kaz:Billyもいるしね。

YU-TO:うん。でもそんなに"このバンド"っていうのは「Misery」では意識してなかったような。"A DAY TO REMEMBERっぽいの"とか言ってたけど。もうBillyの大得意分野じゃないですかね。歌のテクニックもそうだし、メロディも考えてもらってるんですけど"いや~絶対俺たちじゃ思いつかないよなぁ"って。生粋のって感じです。

-そこから今度はDeath I Amチームの「Forsaken Citadel」。緩急がありつつも極悪なテイストにまた戻って。

Kaz:この曲も"ロード・オブ・ザ・リング"路線ですね。間奏部分といい、中世好きだった頃の名残というか。あと、この曲のポイントは最後です。ひたすらリピートしてフェード・アウトしていくところ。YU-TOさんに最後のドラムは"超情熱を込めてやってください"って言って。あれはアドリブなんですか?

YU-TO:いや、ちょっと考えた。

Kaz:あ、そうですか。シンバルでいろいろアクセント入れるとか、変化していきながらドラムが抜けて、ギターが抜けて、みんな抜けていって最後ストリングスとハープだけで終わるっていう。とにかくもう大げさなくらいドラマチックにしたくて。もう悲しみのどん底って感じにしたかったですね。

-最後の「One Last Time」はまたポップ・パンク寄りで。あの1曲目で始まって、最後にこの曲で終わるというのは想像できないですよ。

YU-TO:ハッハッハ(笑)。

-でもドラムのヒットの重い感じとかギターの歪みの質感はずっとメタルっぽさがあって。曲調としては統一感されてないですけど、質感的には違和感がないですね。

Kaz:1曲目はもうポップ・パンクっぽいことをやるので精いっぱいだったんですよ。ポップ・パンクってどういう感じなんだっけ、どんなスケール使うんだろう? とか。この2曲目では要領がわかってるから、自分らしさも出してこうって感じでやりました。だから間奏部分でストリングスも入ったり。

YU-TO:この曲面白かったね。最初送られてきたときもそうだし、Billyのヴォーカルが入ってからも、俺、そんなにしっくりこなかったんですよ。最終的な完成形でちょっとピアノ入れたよね?

Kaz:うん。

YU-TO:あれで初めてしっくりきたんですよ。間奏か何かのピアノを、最後のサビでハーフ・テンポになるところで入れてきたんだよね。それで"あぁ、なるほどこういうアレンジか"と思って。これは俺のエモ/ポップ・パンクの感度に触れてくるなと。最終的にミックスで音も結構良くなってるから、なかなかしっくりきました。これが最後の曲ってなったときに、なんだろう、"これがHaintだ馬鹿野郎"みたいな(笑)。1曲目あれで始まって散々やったのに最後にこれで"じゃあねっ!"って(笑)。そういうのができたのが面白かったですね。

-たしかにバンド形態ならできない作品ですよね。

YU-TO:そうですね。ふざけんなって言われるよね(笑)。

Kaz:今どきライヴでエフェクトを同期で流すのも普通ですけど、それともちょっと違いますもんね。本当にピアニストがいないとしらけるような感じの入り方なんで。そこを思う存分できたってのがすごく楽しかったですね。キーボード、ピアノ、ストリングスがすごく好きだし、昔からのルーツなんですけど、なかなかメタル・バンドだと出しにくいんで。

-最後に、今後Haintでやりたいことを教えてください。

Kaz:X JAPANが好きでYOSHIKI(Dr)さんの大ファンなんですけど、彼が最近出す曲、あんまりしっくりこないんですよ。

-正直ですね(笑)。

Kaz:文句言うからには自分が聴きたいX JAPANなりYOSHIKIさんの曲なりってのもやりたいなとは思います。以上です。

YU-TO:えぇ(笑)!?

Kaz:「Silent Jealousy」(X JAPAN)とかを2023年にアップデートした感じのイメージはあるんで。そういうのがやりたいなという。

YU-TO:俺はさっきも言ったようなオーディションもそうだし、自分が憧れてきた人たちに歌ってもらえる機会もあるんじゃないかと思ってますね。例えば復活したPANTERAのPhil(Anselmo/Vo)とか、SLAYERのTom Araya(Ba/Vo)とか、もし何かが繋がって1曲だけ歌ってくれるとかあったら......。

Kaz:ヤバいな。

YU-TO:ちょっとヤバいじゃん。自分の憧れた人とバンドやるってのはもうほぼ不可能だけど、何か1曲コラボで歌ってもらうとかって、もしかしたら可能性としては開けるのかな、それがやれたらすごくね? っていう。どういう曲が生まれるんだろうって思うでしょ。そうやって何かバンドとは違う形で日本のメタル・シーンに貢献するとか。それが俺たちにしかできないことなのかな? っていうのは見えてきてますかね。バンドマンじゃない、オタクで制作好きのやつらの星みたいな感じ(笑)。"こういうやり方もあるんだぜ"みたいなことを提示できたらいいですよね。