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INTERVIEW

矢島舞依

2022.05.10UPDATE

2022年05月号掲載

矢島舞依

インタビュアー:杉江 由紀

華奢で可憐な立ち姿に反して、矢島舞依がひとたび歌い出せばそこには重く暗い闇がひたひたと広がり出すのだ。メタル・ディーヴァの名をも欲しいままにする彼女が、今このタイミングで発表するのはシンフォニック・メロスピ・ベスト・アルバム『METAMORPHOSE』。歌とギターをリレコーディングしたという既存曲たちに加え、書き下ろしの新曲も3曲取り揃えたうえで、いわゆるメロスピ曲だけを集約したという今作は、なんと矢島舞依いわく"狂気の沙汰な内容"であるとのこと。しかも、新曲のうち「Silver Bullet」は本人の初作曲によるものということで、ベストでありながらも今作では新たなる可能性もしっかり開かれたと言えそうだ。


自分でも予想していた以上に凶悪なアルバムになってしまいました(笑)


-3部作ミニ・アルバム『Hell on Earth』(2020年3月リリース)、『Heaven Knows』(2020年12月リリース)、『Heretical Soul』(2021年リリース)が完結したのは昨夏のことでしたが、このたびはシンフォニック・メロスピ・ベストと銘打ったフル・アルバム『METAMORPHOSE』が発表されることになりました。今この機にこのような作品を世に出そうと思われたきっかけについて、まずはお話をお聞かせください。

去年までに出した3部作もそうでしたし、これまでずっと矢島舞依としてのメタルを表現していくなかでは、ライヴの場においても音源制作の場においても、メロスピが重要な軸になってきたところはかなりありますし、私のライヴに足を運んでくれるファンの方々の中からも、メロスピが好きという意見はよくお聞きするんですね。今回の場合、最初はまずベスト・アルバムを出そうというところから話は始まったんですが、プランを練っていくうちに、"ここはメロスピに特化したベストにしたほうがコンセプトとしても面白いんじゃないか"と気持ちが固まっていくことになりました。

-メロスピというからには、美旋律と速いテンポが大前提であるのはもちろんだとは思いますけれど、それにプラスして、矢島さんがメロスピを追求していくにあたり留意されていることがあるとしたら、どのようなことになるのでしょうか。

メロスピと呼ばれている疾走感のある楽曲はたくさん世の中に存在していると思うんですけど、私が矢島舞依としてメタルをやっていくなかでずっと掘り下げてきたのは、ヴァンパイアをテーマにしたシンフォニックな"ヴァンパイアメタル"というものですね。そこの世界観をいかに自分らしく打ち出していくのか、というところは今回のアルバムの中でも当然こだわっていきました。そして、私の場合はソロ・ヴォーカリストですからバンドとは違って、キャッチーなメロディを前面に持ってくることで、歌をしっかりと聴いてもらいたいという姿勢での楽曲制作をしているので、ただ速くて激しいだけのものではない、メロスピのメロディの部分を聴いてくださる方々に、より楽しんでいただけるような音楽を作り出していきたいと常に心掛けています。その意味では、メタルがそこまで好きじゃないという方にも聴いていただけたら嬉しいなぁって意識も作っていたときには持っていたんですが、実際にミックスまで終わってみたら、自分でも予想していた以上に凶悪なアルバムになってしまいました(笑)。

-つまり、激ロック読者の方たちには最適な作品へと仕上がったわけですね。なお、今作はベストというだけあって、主に既存曲があれこれと取り揃えられた内容となっておりますが、今作に楽曲をエントリーしていく際の判断基準などは、どのように定められていたのでしょうか。

いわゆる既存のメロスピ曲は、ほぼほぼここに入ったことにはなりますね。ただ、中にはBPMで言えば180超えしているんだけど3拍子だからメロスピ感が薄いかな? っていうことで入れなかった曲や、聴けばメロスピ感はあるもののBPMが140くらいだとガチな曲たちと並べるのは難しいかな? という理由で収録しなかった曲とかはありました。だから、かなり厳選してあるのは間違いないです。しかも、わりと昔の曲にあたる「Masquerade」とか「造り笑顔と嘘偽りのカモフラージュ」、「BLOOD RESOLUTION」、「Black Swan Theory」、「必要悪サバト」は歌もギターも新しく録り直しているので、そのあたりもきっと聴き応えとしてはかなりあると思います。

-ずっとライヴで歌い続けてきた曲たちでもあるとは思うのですが、今回リレコーディングをしてみて何か矢島さんが感じられたことはありましたか?

昔の曲は、良くも悪くも勢いだけで歌ってレコーディングしたものもあったんですよ。その点、今は前と比べればヴォーカリストとしての表現の引き出しが増やせていると思うので、そこを必要に応じて使いながら歌うことはできたなという手応えがありました。前よりは、少し大人になって成長したところを歌に生かせたんじゃないかと思いますね。

-そうした既存曲たちとは別に今作には「Metamorphose」、「INJUSTICE」、「Silver Bullet」という3曲の新曲も収録されております。中でも、アルバムのタイトル・チューンでもある「Metamorphose」はリード曲としての役割も持っているようですが、この曲が今作の中で台頭していくことになった経緯とはどのようなものでしたか。

まず、アルバムの最後に入っている「Silver Bullet」は自分が初めて作曲したものなので、それをいきなりリード曲にするのはないかなというのがあったんですね(笑)。逆に言うと、それ以外の2曲はどちらがリードになっても良かったというか、ギリギリまでどちらにするか競っていた感じだったんですが、最終的には歌詞をはめて歌ったときにのびしろを感じた点で、今回は「Metamorphose」をリード曲にすることにしました。MVを作ったときの雰囲気や、アルバムのタイトルにしたときのイメージの広がりというところまで含めて、この「Metamorphose」は強い存在感を持った曲になったと思います。

-そんな「Metamorphose」は、今作の冒頭を飾る曲でもあります。しょっぱなからいい意味での威圧感と貫録が音像として溢れ出てくるところが素敵ですし、とてもドラマチックな雰囲気が濃厚に漂う曲になっておりますけれど、歌詞の内容については何をテーマに仕上げていくことになられたのでしょう。

「Metamorphose」は転調が激しい曲で、最初にくるサビは途中で転調してますし、最後のサビも1番目のサビで転調したところから、さらに後半で転調していくような構成になっているんですけど、曲がこれだけ凝っているんだったら、詞のテーマに関しても思い切って振り切ったモノにしたいなと思って。そこで中二病がハマらないかと思いついて書いてみようかな?と思ったんですよ(笑)。

-中二病ですか......ちなみに、矢島さんはリアルタイムでのその当時に、自らのことを中二病だと自覚されたご経験はありますか?

ありますね。むしろ、自分の中にはそういうものってたぶん未だにずっとあるような気がしてます。そもそも、矢島舞依として表現してきたヴァンパイアの世界が、"そういうふうに"捉えられる部分もなきにしもあらずだと思いますし。だから、私としては中二病を面白おかしく茶化すのではなく、ここで真剣に描いてみることをしたかったんです。

-なるほど、そういうことでしたか。

非現実的で日常とは違う感覚を持ったダークなものとか、ファンタジックなものとか、自分にとっての大切な推しだったり、それらと多感な中二病の人間が出会ってしまった、ハマってしまったらどう変わっていくのかということだったりを、この「Metamorphose」では描いているんですよ。歌詞に出てくる"闇患い"とか"黒きシンデレラ"といった言葉なんかも、まさに中二病に陥っている状態を表したものになります。それと同時に、この変わっていくとか変態するという意味を持つ"Metamorphose"って言葉は、今回のアルバムにおける"過去の既存曲たちがベストとして新たに生まれ変わる"という主旨とも、自分の中ですごくきれいに繋がったんです。

-今思うと、2000年代半ばあたりからインターネット界隈発で世間に定着していった中二病という言葉は、ともすれば"いつまで中二病みたいなことを言ってるの!?"と誰かを揶揄するような場面で使われることもあるものですが、その一方で、中二病と呼ばれるくらいに多感な感性を持つからこそ生まれる発想などもあるわけで、この言葉の取り扱いはその時々や場面によってもきっとまちまちなのでしょうね。

少なくとも、私自身は"人間って根本の部分はそう変わらないんじゃないかな"と思いますよ。その頃に好きだったアニメとか、音楽とかって、やっぱり今でも好きですし。大人になった今でも、それは自分の根っこに確かに息づいてるものだと感じてます。つまり、私はこれからもずっと患ったままなんでしょうね(笑)。

-一方、実はリード・チューンの候補曲だったという「INJUSTICE」についても、ここでお話をうかがいたいのですが、矢島さんからすると、この曲の持つ魅力はどのようなものだと受け止めていらっしゃったのでしょう。

ストレートさ、ですね。「Metamorphose」が凝ったタイプの曲になっているのとはある意味で正反対というか、正統派で素直でまっすぐな熱いものをこの「INJUSTICE」からは率直に感じました。それだけに、この曲では歌詞も歌い方も、曲の持っているその方向性にそのまま沿っていくようにしていったんです。

-なお、この歌詞では矢島さんだからこそのヴァンパイア・ストーリーが紡がれていくのと並行するかたちで、"この壊れた世界"、"誰も邪魔できない未知へいこう"といったフレーズが出てきます。これらは、コロナ禍をはじめとした昨今の社会状況とも微妙にシンクロしているようにも感じられます。

そこは、私としても今のこの世の中を生きていて感じることはやっぱりいろいろありますし、この状況の中で新しい曲を生み出していくとなった場合、表現者としてはリアリティの部分をまったく切り離すのは難しいことでもあるような気がします。

-フィクションとノンフィクションが複雑に交錯しているわけですね。

私自身も現実の中で生きていますし、私の音楽を聴いてくださる方たちも現実の中を生きているわけですけど、私が表現のためのモチーフにしているヴァンパイアというのは人の心の闇を象徴した存在なんですよ。ファンタジックな世界はとても大好きですが、自分の作品に関しては単なる夢物語というわけでなくて、そこにリアリティのあるメッセージ性や、同じ時代を生きている受け手の人たちの心にまで響くようなものを届けたいって思っているんです。