INTERVIEW
メトロノーム
2021.12.21UPDATE
2022年01月号掲載
Member:シャラク(Vo) フクスケ(Gt) リウ(Ba)
Interviewer:杉江 由紀
今回の新曲を作ったことで"またアルバムを作りたいな"という気持ちにはなりました
-そして、ライヴ盤を制作するとなると、ミックスの加減をどのようにまとめていくかというのも大切なところだったのではないかと思うのですが、今回その点において留意されたことがありましたら教えてください。
リウ:ミックスに立ち会ったのは僕だったんですけど、まず感じたのは今回の配信ライヴは無観客だったわけじゃないですか。そうなると、エアーで録る音(※場内にマイクを立てて録っている生音)そのものが必要ないので、お客さんたちの歓声の要素が一切ない状態でのミックスをするしかないんですよ。しかも、うちの場合はベースもギターもアンプは使ってなくて、ライヴでもラインから音を出しているので、ライヴ感を出すっていうのが意外と難しかったです(苦笑)。これまでもライヴ音源はいくつか出してますけど、今までのとはまったく勝手が違いましたね。
-となると、ライヴ感を出しやすい素材としては、生ドラムの音がずいぶんと重要になっていったのではないですか?
リウ:ええ、そうですね。これまでのライヴ音源だとドラムは、ノイズを排除する意味で使っていないようなタムの音はできるだけカットしてたんですけど、今回は臨場感を醸し出すために、普段だったらカットする音もあえて多く入れていくようにしました。今回サポート・ドラムをやってくださったのがCASCADEのHIROSHIさんなんですけど、こちらからも"音源通りではなく、好きにアレンジしちゃってください"ってお願いをしてましたし、実際にかなり大胆で派手なプレイをしてくださっているので、そこの聴き応えを充分に生かすかたちでのミックスになってます。
-そういえば、メトロノームの場合はその時々のライヴによってサポート・ドラムの方が変わられますよね。そのこと自体がライヴ・パフォーマンスに何かしら影響を与えることはあったりするものですか?
フクスケ:人が変わると、そこは見てなくても音でわかりますね。出す音も違うんですけど、そもそも発している気配からして人によって違いますから。でも、それがイヤだとかは全然ないし仮に毎回サポートの方が変わったとしても僕は別に大丈夫です。
-シャラクさんはいかがですか?
シャラク:ドラマーの方によって、アレンジは結構変わりますからね。僕はいつも耳にクリックを貰っているんですが、日によって"クリックとの真剣勝負!"みたいになるときはあります(笑)。この間サポートしてくださったHIROSHIさんは好きにやってくれている感じが好きで、歌っていてとても楽しいです。
リウ:基本的にサポートはいつもすごく上手い方々にお願いしているので、僕らとしては安心してやれていますね。
-なるほど。それから、この"5th狂逸インパクト"というアルバム・タイトルについての解説も、ここでお願いできますと幸いです。
フクスケ:これは当初メジャー・デビュー5周年のライヴ・タイトルとして、"5th狂逸インパクト"という言葉を考えたんですけど、意味合いとしては狂逸っていう部分に秀逸に近いニュアンスを持たせた感じですかね。そして、近年は結構ちゃんとした曲を作ることも多いものの、メトロノームって自分の中では何年経っても変わらないところがあるような気がしていて、それは言葉としては悪いですけど狂ったような部分だったり、極端な部分だったり、いろいろな面でインパクトを持っている部分だったりするんです。メトロノームにはその感覚をこれからも持っていくバンドであってほしいなという想いを、ここでは"狂逸インパクト"という言葉で表しました。まぁ、もしこれが他の人のライヴ音源も入るアルバムだったら、また別のタイトルを付けることになったんでしょうね。でも、結果的に10月24日のライヴのみで完結するライヴ・ベストになったので、そのまま"5th狂逸インパクト"として出すことになったわけです。
-わかりました。なお、今回の『5th狂逸インパクト』ではCD2のほうで2曲の新曲を聴くこともできますので、ここからはそちらについてうかがってまいりたいと思います。まずはリウさんの作詞作曲による「華胥之夢」についてですが、なんでもこちらはサブリード曲になっているのだとか。
リウ:「華胥之夢」は今年に入ってから作り出した曲で、そのあと『5th狂逸インパクト』に新曲を入れることが決まってから、アレンジを詰めていったものになります。最初のうちはアレンジ案がふたつあって、ひとつはアタマ打ちのビートで普通にロック・バンドっぽい感じ、もうひとつはそれをハーフタイムで今風にお洒落っぽくしたものだったんですが、今回の新曲は、普通にシングルを出す感じとまた違うかたちでのリリースになるということもあり、思い切って後者のより冒険したほうで進めていくことにしました。対比として、ライヴ盤は激しめの曲がわりと多いからこういうふうにしたほうが映えるかな? って考えたところもありましたね。
-「華胥之夢」のプレイ面でリウさんが重視されたのはどんなところでしたか?
リウ:この曲はベースだけじゃなくシンセも自分で弾いていて、一番上で鳴っているリードのシンセはなぜかシャッフルでハネてるんですよ(笑)。そことサンプリングのリズムの間を縫うようにベースを弾いている感じなので、感覚的にはキッチリした曲というよりは、意図して大ざっぱに作ったパーツを上手く組み合わせることで構成した、今までにあんまりなかったタイプの曲になってるんじゃないかと思います。これは自分なりの洋楽的なアプローチをイメージしたものでもありますね。
フクスケ:間を縫うどころか、僕のギターなんて完全に感覚で弾いてますけどね(笑)。なんとか音が曲にハマってくれたので良かったです。
-では、そんなフクスケさんが作詞作曲をされている「汚レテ汚レタ時刻ニ」については、どのようなヴィジョンのもと作られた楽曲だったのでしょう。
フクスケ:自分としては『5th狂逸インパクト』に入れるために作ったというよりは、それ以前にメトロノームとして新曲を作ったり出したりすること自体が久しぶりだったので、まずはフクスケっぽいところが出た曲にしたいなと思って作り出したところがありました。
リウ:この曲は原曲からベース・アレンジを結構していて、合間にスラップを入れたりしながらいろいろやれたのが楽しかったですね。ベース・ソロのところはデモに入っていたフレーズを半分使ったうえで、もう半分は自分で自由に弾いていきました。
-弦楽器隊の見せ場は非常に多いですよね。
フクスケ:自分がソロを弾いたところは、あの人の気持ちになってました。ほら、誰でしたっけ? あの......。
シャラク:Paul McCartney?
フクスケ:じゃなくて、別の......。そうだ、NIRVANAの人。Kurt Cobain(Vo/Gt)だ! あの人になりきって"できれば左で弾きたい"と思いながら弾いてます(笑)。
-シャラクさんとしては、このトーンが異なる「華胥之夢」と「汚レテ汚レタ時刻ニ」を、それぞれどのように歌い分けていくことになられました?
シャラク:まず、今回はレコーディングの仕方自体がこれまでとは違ったんですよね。今まではひとりでスタジオに入って、貰ったデモの通りに歌っていくっていうやり方をしていたんですけど、今回の2曲はスタジオにみんなに来てもらって、あらかじめ"この曲のここはこんな雰囲気で"みたいな話をしたり、現場でアドバイスを貰ったりしながらレコーディングをする、ってやり方を久しぶりにしたんですよ。
-久しぶりにその方法でレコーディングをしてみた感触はいかがでした?
シャラク:もう何年も人がいるところで歌録りをすることはなかったので、なんか恥ずかしかったです(苦笑)。でも、いつも以上にそれぞれの作曲者の意図を綿密に汲んだ歌を歌うことはできたんじゃないかなと思いますね。そういえば、フクスケには"今の最高だね! よし、その調子であともう2回!!"って言われたりしました(笑)。
-それにしても、ライヴ盤に入っている新曲だからよりそう感じるのだとは思うのですけれど、聴き手としては「華胥之夢」と「汚レテ汚レタ時刻ニ」についても、いずれは生で聴ける場が欲しいところです。12月26日にCLUB CITTA'にて開催される久々の有観客ライヴ"REAL TOP METRONOME ver.メーDAY X'mas 2021" で、それを望むことは可能ですか?
フクスケ:やりますよ、もちろん! この日はツイキャスでの配信も同時にするので、みなさんのお好きな方法で楽しんでください。
-いやはや、久々の有観客ライヴとは胸熱ですねぇ。
フクスケ:個人的な感覚でいうと、配信とか全然アリなんですよ。周りではよく"配信だとライヴやった気がしねー"みたいな意見も聞いたりしますけど、フクスケ的には配信だろうと常にライヴでは"やったった!"感満載なんで(笑)。とはいえ、久しぶりの有観客というところは楽しみたいです。
リウ:配信ライヴにはその良さがあるし、有観客にはその良さがあるし、それぞれの良さってあるしね。僕はすでにサポートで他のアーティストさんの有観客ライヴを何本かやってますけど、やっとメトロノームでできるのでほんと楽しみです。
シャラク:でもなんか......約2年ぶりってすごいことだなと。だって、僕は誕生日が8月なんですよ。そうなると、最後に生でライヴを観た人が今度のライヴに来てくれるとしたら、前回から僕はふたつも歳をとってることになるわけじゃないですか。そこを考えると......ウワーっ! っていう気持ちになってしまいます(笑)。たぶん、2年の歳を重ねたなりの衰え方をしているんじゃないでしょうか?
フクスケ:衰えっていう意味で言ったら、身体がなまりきってるのは間違いないね。単発のライヴは大丈夫だけど、前みたいにツアーで過酷な移動をしながら日々ライヴをするとか、あの生活に戻れる自信は今のところ全然ない(笑)。
-そこはぜひなんとかしてくださいませ(笑)。来年は24周年ですしね。次なる30周年に向けて、メトロノームご一行様にはますます頑張っていただかないと!
フクスケ:たしかに、今回の新曲を作ったことで"またアルバムを作りたいな"という気持ちにはなりましたし、それがもし完成して状況さえ問題なければツアーにも行きたいですからね。まだ世の中がどうなるかはわかんないですけど、そうなったらツアーに耐えられる体力を取り戻さないとなー(笑)。